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暗号資産取引をする上で知って得する税金の仕組み|具体的な損益計算方法などを紹介

2024/12/05Iolite 編集部
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暗号資産取引をする上で知って得する税金の仕組み|具体的な損益計算方法などを紹介

暗号資産の税金に関する基本

個人が暗号資産の売買やマイニングで得た利益は、10種類ある所得区分のうち「雑所得」として扱われる。雑所得は総合課税の対象となり、給与所得や不動産所得など、ほかの所得とあわせた額によって税率が決まる。

よくある誤解だが、暗号資産によって生じた利益のうち55%相当が課税対象となるわけではない。また、55%という数字は超過累進税率における最大の所得税率45%と、住民税10%を合算した数字だ。税率が変わる所得金額は国税庁のホームページにて掲載されているため、最新の情報を都度確認していただきたい。

なお、雑所得は経費などを差し引いた所得が20万円を超えると確定申告を行う必要がある。そのため、たとえばビットコインを1BTCあたり100万円で購入し、120万円で売却した場合、差額の20万円は課税対象となり確定申告を行う必要が生じる。

これはあくまでもシンプルなパターンであり、実際には数回、数十回、または数百回以上の取引を行うことになるため、正確に把握するためにはこまめに取引履歴を記録・保管しておくべきだろう。また、個人については暗号資産による含み益は課税対象とならない。

仮にビットコインを1BTCあたり100万円で購入し、価格が130万円まで上がっていたとしても、売却さえしなければ課税対象とはならない。さらに、暗号資産のほかの取引で損失が出ており、損益を合算した際に20万円以上の利益が発生していないケースも確定申告の必要はなくなる。

例として、ビットコインの取引で30万円の利益が出たけれども、イーサリアムの売買によって15万円の損失が発生したとする。その場合は差額が15万円となるため、申告義務は生じない。

これらはあくまでも暗号資産に関する税金の基本となる。ここからはこうした状況を踏まえて現在議論されている内容を整理していく。

Point 1.暗号資産で得た利益は雑所得今後は申告分離課税の適用に期待

▶大和証券「税金の基礎知識(1)」より内容を抜粋し編集部にて作成

暗号資産を申告分離課税と損失繰越控除の対象に

現在の暗号資産税制はWeb3.0の普及に向けた大きな足かせとなっている。そこでJVCEA(日本暗号資産取引業協会)やJCBA(日本暗号資産ビジネス協会)などの業界団体は、暗号資産で生じた利益に対して20%の申告分離課税と3年間の損失繰越控除の適用を求めている。

申告分離課税の対象とすると、ほかの所得とは分離して申告を行うことができ、税率も一律20%となる。そのため、これまで以上に暗号資産に触れるハードルがさがり、国内における暗号資産取引の活性化にもつながることが期待されている。暗号資産は価格変動が激しく、急な値上がりにより大きな利益を得られることがある。その際、雑所得であれば支払う税金のことを考えてしまい売却に迷いが生じる可能性もあるが、20%の申告分離課税が適用されることで利益を最大化することが可能となる。

また、3年間の損失繰越控除を適用することで税負担が軽減される。特に暗号資産は大きな利益を得られる可能性もあれば、逆に目もあてられない損失を被ることもある。その際、現行の税制では仮にその年に大きな損失を生み、翌年に大きな利益を出したとしても課税対象となってしまう。

たとえば、ある年に暗号資産で100万円の損失が生じたものの、翌年に20万円の利益が発生した場合、この20万円とほかの所得を合算した所得が課税対象となる。これではまだ80万円の損失が埋めきれていない。

では、3年間の損失繰越控除を適用した場合にはどうなるだろうか。同じようにある年に暗号資産で100万円の損失が生じたものの、翌年に20万円の利益が発生したとしよう。損失繰越控除は損失を翌年以降に繰り越せることから、このケースでは損失を生んだ翌年に発生した利益が相殺され、課税対象額は0円となる。

こうした税制の改正は、長きにわたって業界から要望されている。このほかにもさまざまな要望が出されているが、何よりもこれらの改正が最優先事項となっており、実現した際には業界に大きなインパクトを与えることになる。

→ ”誰しもが確定申告をする心構えを持っておこう”

運用で暗号資産を取得したり物品購入での活用も課税対象に

暗号資産で利益が生まれる瞬間は何も取引に限った話ではない。具体的には、下記のような形で暗号資産を取得したり活用したとしても雑所得として確定申告が必要になる場合がある。

・暗号資産同士を交換した時・レンディングサービスを活用して利益を得た時・マイニングやステーキングで報酬を得た時・暗号資産で物品を購入した時

意外と知られていないが、暗号資産と暗号資産を交換した時も申告義務が生じる場合がある。たとえば100万円で購入した1BTCをすべて用いてイーサリアムを120万円分購入したとしよう。その際、税務処理上はビットコインを1度売却し、売却後に残った資金でイーサリアムを購入したことになる。

そのため、100万円で取得した1BTCで120万円分のイーサリアムを購入しようとすると、その差額20万円は利益とみなされ確定申告を行う必要がある。

Web3.0のよさは必ずしも法定通貨に依存することなくあらゆる価値交換をシームレスに行えるところにある。暗号資産でほかの暗号資産を交換することもまさにWeb3.0のよさではあるが、日本においては現状税制が大きな壁となっている。

また、暗号資産を預け入れて代わりに運用をしてもらうレンディングサービスやビットコインなどで行われるマイニング、またイーサリアムなどで採用されているステーキングで得た暗号資産も取得額が大きければ課税対象となる。

これらは取得した数量と、その時の暗号資産の時価を記録しておかないと後々になって損益計算が複雑になるため注意が必要だ。このほか、暗号資産で物品を購入した場合でも課税対象となる場合がある。

これは暗号資産同士を交換した時の要領と同じで、決済に使用する暗号資産が取得した時点と比べて値上がりしており、それにより得た資金で購入した物品との差額が20万円を超えれば課税対象となる。国内ではまだ暗号資産を決済手段として使用できる場面は少ないが、こうした税制の壁が改正されない限り普及する未来はみえないだろう。

→ ”こまめに取引履歴を記録・保管して損益計算に備えるべし”

Point 2.暗号資産取引や運用で得た利益の損益計算方法

暗号資産の損益計算をする上で役に立つ「損益計算ツール」

先述の通り、暗号資産は取引だけでなく、決済などで用いても課税対象となることがある。加えて、暗号資産は価格変動が激しく、取引時の時価計算も手間がかかる。そのため、取引回数が多くなれば多くなるほど、損益計算はさらに煩雑なものとなる。

そこで役に立つのが、損益計算ツールだ。暗号資産取引所から取得した取引履歴をアップロードしたり、API連携をすることで、煩雑な暗号資産の損益計算を自動で行ってくれる。近年、暗号資産取引を行うユーザーが増加していることもあり、暗号資産の損益計算に特化したツールが増えてきている。

また、DeFiや海外暗号資産取引所、暗号資産関連サービスにも対応しているため、暗号資産に触れる上で大きな手助けになるといえるだろう。サービスごとに異なるものの、20,000以上の暗号資産やさまざまなブロックチェーンにも対応している。

一方、注意点としては、マイナーな暗号資産やブロックチェーンに対応していない場合があることだ。暗号資産は日々世界中で発行されており、そのすべてを正確に把握するのは難しい。もし発行されたばかりの暗号資産を取引する場合は、自らの手で取引履歴を参照し損益計算をする必要がある。

また、必ずしも損益計算ツールが弾き出した数字が正しいという保証もないため、各取引所の取引履歴は必ずダウンロードしておこう。

→ ”暗号資産取引を非常に多く行う場合には使用することをオススメ”

Point 3.国内取引所にも対応しているオススメ損益計算ツール

①cryptact(クリプタクト)

②Gtax(ジータックス)

③CryptoLinC(クリプトリンク)

Column

暗号資産の損益計算を楽に行うコツの1つとして、取引する銘柄を絞ることがあげられる。取引回数が少なければ気にすることはないが、あまりにも多いと損益計算が非常に煩雑になる。そのため、慣れないうちは2〜5銘柄程度に留めておくといいだろう。

また、暗号資産取引所も特別な理由がない限り手広く使用しないことをオススメする。用途にあわせて取引所を選び、それぞれで保有する暗号資産も限定しておくと、資産管理も楽になるはずだ。

Point

自分のなかで「年末になったら1度すべての暗号資産を日本円にする」「○円の利益が出たら売却する」などルールを定めておくと損益の把握が楽になる。

今からでもできる暗号資産の税金対策

暗号資産は雑所得に該当するためあまり多くはないが、ここでは税金対策をいくつか紹介する。まず、暗号資産取引に関連する費用を経費として計上することで、課税対象となる所得を減少させることが可能だ。

具体的には、「取引手数料」「出金手数料」「会計ソフトの使用料金及び税務申告にかかった費用」「関連書籍の購入費やセミナーの参加費などいった情報収集費用」「取引に必要なインターネット接続等の通信費」「取引専用のパソコンやスマートフォンの購入費用」などがあげられる。

これらの費用をしっかりと記録し、確定申告時に経費として申告することで、課税所得を減らすことが可能だ。また、保有する暗号資産の含み損益を把握し、適切なタイミングで売買を行うことで、税負担を調整することもできる。

利益が出ている暗号資産と損失が出ている暗号資産を同じ年に売却し、損益を通算することで、課税所得を減少させることができる。なお、再三にはなるが暗号資産は損失繰越控除が適用されないため、売買のタイミングは気を付けるべきだ。

このほか、法人を通じて暗号資産取引を行う方法もある。個人での暗号資産取引は雑所得となり最大で55%の課税もあり得るが、法人化することで法人税率(原則23.2%)が適用され、税負担を軽減できる可能性がある。

法人化のメリットとしては、損益通算や損失の繰越控除が可能となり、経費計上の範囲も広がる。法人ではなく個人事業主として開業し、青色申告を行うことで、最大65万円の特別控除を受けることも可能だ。事業としての実態が求められるため、取引規模や継続性は開業前の要件となる。

最後に、暗号資産の利益は雑所得として総合課税の対象となるため、ほかの所得控除を活用することで、全体の課税所得を減少させることができる。寄付金額に応じて所得税や住民税の控除が受けられる「ふるさと納税」や掛金が全額所得控除の対象となるiDeCo(個人型確定拠出年金)などの制度を活用することで、暗号資産の利益に対する税負担を間接的に軽減することが可能だ。

→ ”税金関係で不安になったら迷わず税理士に相談しよう”

Point 4.暗号資産で得た利益を最大化するためにできる税金対策を紹介!

暗号資産の相続税は最大で110%にのぼる?

暗号資産を長きにわたり保有し、まとまった利益を得ている人が実は身内にいるかもしれない。しかし注意してほしい、もし軽い気持ちで相続したことで巨額の納税を行う必要が生じる可能性がある。

たとえばだが、被相続人が生前に1BTCを100万円で購入したとしよう。その後、1BTCが10億円の価値を付けたところで亡くなったとする。その際、6億円以上を相続したことから、55%の相続税が課せられる。

よっぽど資産を所有しており、相続税の支払いだけで済めばよいが、実際にはこれだけの大金を支払うことは難しい場合が多いだろう。そこで、相続した1BTCを売却して相続税の支払いにあてようと考えるかもしれないが、ここにも気を付けなければならないポイントがある。

暗号資産は雑所得に分類されるため、ほかの所得と合算し4,000万円を超える場合には住民税とあわせて最高税率の55%が適用される。つまり、このケースで相続した1BTCを売却した場合、さらに55%が課税対象となる。

相続税の55%と総所得にかかる55%を合算し、110%が課税対象となり、10億円相当のビットコインを相続したにもかかわらずむしろ1億円が不足するといった事態になるのだ。

そうなると泣く泣く相続を放棄せざるを得ない可能性もあるため、多額の暗号資産を保有する場合には事前に親族へ話をしておくとトラブルを避けることにつながるだろう。

→ ”親族が暗号資産を保有している場合には事前に情報を教えてもらう”

Point 5.保有する暗号資産の含み益が多い場合の相続や贈与は要注意!

Column

暗号資産に限らず、年間110万円を超える贈与がある場合、贈与税の課税対象となる。贈与税の税率は、受贈者と贈与者の関係性及び贈与額に応じて累進課税が適用される。

また、暗号資産を友人などに時価よりも低い価格で譲った際、状況によっては譲渡した側と譲渡を受けた側の双方にそれぞれ所得税と贈与税が課せられる場合もある。こうしたことを踏まえると、むやみやたらに暗号資産を人に譲渡ではなく、その後のことを考えて行動に移すべきだろう。

Point

低い価格で得た暗号資産を譲渡する時は特に注意が必要。個人では対応が難しいことも考えられるため、困ったら税理士に相談することをオススメする。


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