日本において暗号資産にはどうしても詐欺や怪しいものという負のイメージが付きまとう。だが、これはおかしいのではないだろうか。暗号資産に限らずとも、世の中に詐欺の話は転がっている。むしろ件数でいえば暗号資産以外の詐欺の方がいまだに多い。
人は昔から騙され続けているのである。人間はなぜ騙されるのか、騙されにくい人たちは、普段何を考えているのか。今号では、人が他人をどのように信用に足る人物と認知するのかについて書かれた本をチョイスしてみた。
1.全員“カモ”―「ズルい人」がはびこるこの世界で、まっとうな思考を身につける方法
人間は絶対騙されるという覚悟を決めよ
【Review】
読み進める前に、本書の冒頭で紹介されている「見えないゴリラ実験」という言葉でYouTubeを検索して、動画をみてみてほしい。何が映るかの詳細はここでは省くがおそらく、かなりの割合の人が、自分の認知について疑問を持つことになるだろう。
出だしから、人間ははっきりとそれを否定する証拠がない限り、自分が見聞きしたものを本当だと思い込むというバイアスを抱えて生きており、詐欺師はそこにつけ込んでくるという悲しい事実が次々と並べられる。だが、安心してほしい。
本書は、つけ込まれやすい人間の認知の歪みを解説したのちに、その隙を埋めるための手法を教えてくれる。本書を読み改めて感じたことは「自分は騙されない」と過信をしないことに尽きるなということであった。
オススメ▶︎自分は絶対に騙されないと自信がある人こそ読め!
2.悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す
世の中を悪くするのは私たちなのかもしれない
【Review】
粉飾決算や、脱税などで報道が出た企業の内情を詳しく調べてみると、どうしてそんな杜撰な手段でばれなかったのかとあっけにとられることが多い。こうした悪事は、気付きながらも黙っている第三者が居ないと成立しない。
いじめも、いじめをみてみぬふりをするクラスメイトがいるからなくならないのだ。本書はいつまでたっても不正がなくならない原因が「傍観者」の心理にもあることを証明する一冊。
近年、忖度という言葉が定着してしまい、日本は同調圧力が強い国だという批判がXを中心に吹き荒れたが、本書を読むと、同調圧力は世界中にある課題であることがみえてくる。組織を保つために同調圧力に屈するのではなく、正義を掲げ「道徳的反逆者」になるようにしたい。
オススメ▶︎自分の意見を通せず周りに流されてしまう人にオススメ
3.わが投資術 市場は誰に微笑むか
投資に絶対の正解はないあなた独自の信念を築け
【Review】
常識や定石は大事だが、絶対の正解のない投資の世界では足を引っ張ることもある。本書の著者である清原達郎氏は、2005年に長者番付1位にもなり、投資の神様と呼ばれた方。本書は第一線を退いた清原氏の、これまでの投資に対する考え方をまとめた本だ。
一般的な投資本のような定石ではない清原氏の持論が展開されるが、実体験だからこそ、凡百の本よりも圧倒的な説得力を持つ。清原氏の根幹には、常に「常識を疑う」気持ちがある。
大勢が良いと認めたものを唯々諾々と信じるのではなく、疑い、自分で四季報などから情報を洗い出す。時々失敗もしながらも、自己を確立していく過程からは、投資術投資も私生活も、思いや哲学をしかと持つ大切さを教えられた。
オススメ▶︎教えられたことをやるだけでは成果があがらなくなってきた人
4.テクノ・リバタリアン 世界を変える唯一の思想
世界を動かしている人の認知を覗き見る
【Review】
自分のなかの常識がまったく通用しない人が世の中に存在する。超大手IT企業のトップには、特にそのようなタイプの人が多いように思う。
本書は、ITを使って世界経済を動かす人々が共通してリバタリアニズム(自由原理主義)的なイデオロギーを掲げていることを喝破し、彼らが開発する技術がイデオロギーの実現に連なっていることを解説する一冊だ。
彼らの思想や認知は、本書の読者にとってはなじみ深い暗号資産やブロックチェーンにも息づいているし、一見真逆にみえる社会監視や軍事といった分野にも手を伸ばす。
シリコンバレーの成功者を、歴史や技術的な側面から語る本は多いが、その思想信条から解説する本は珍しい。天才が世界をどのように認知しているのかのぞいてみよう。
オススメ▶︎IT技術者たちが今の社会をどう認知しているか知りたい人
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