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AI × Web3.0が描く未来 それぞれが織りなすシナジーとは?

2024/12/03Iolite 編集部
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AI × Web3.0が描く未来 それぞれが織りなすシナジーとは?

中央管理者なしのWeb3.0と機械が自身で結論を生成するAIのシナジーとは?

人間を超える知能を持ったAIを手にしたその先の未来

Web3.0という単語にはさまざまなニュアンスが含まれるため一概に定義できないが、万人が現状納得できる最大公約数的な回答を出すとすれば「分散型のインターネット」だということだろうか。

中央管理者なしで情報のやり取りを行いたいという理念からブロックチェーンが開発され、その応用から現在のWeb3.0の盛り上がりが始まったことは記憶にあたらしい。管理者なしでブロックチェーンにおける情報取引を滞りなく行わせるために、考案されたのがスマートコントラクトだ。

特定の条件が満たされた場合に、全自動で処理が行われるこのシステムが開発されたことにより、中央管理者なしのWeb3.0の理念は現実感をもって受け入れられるようになった。だが、スマートコントラクトはプログラムであるため、明らかに不正な送金でも、条件さえ満たしてしまえば自動的に処理を行う。

イーサリアムの分裂騒動※1を思い出してもらえればわかるように、スマートコントラクトというシステムの穴は、ブロックチェーンそのものの不信へとつながってしまっている。そこで、スマートコントラクトにAIを搭載して、最終的な善悪の判断を含めて行ってもらうという実験が行われている。

不正な取引を監視するために、暗号資産取引所のなかにはわざわざスマートコントラクトの監査(Audit)を行うという本末転倒なことを行うところが多い。だが、中央管理者を嫌うWeb3.0の風土において、人力の監査はどうしても相性が悪い。

このようなクリプト愛好家の声を受け、たとえばスマートコントラクトの開発インフラであるBunzzは、AIベースの監査サービス「Bunzz Audit」の提供を始めている。

まだまだ、AIによる監査は課題が多いといわれているが、ここ数年のAIとWeb3.0領域の進歩の速さを鑑みると、AIによる監査が一般化するのはそう遠い未来ではないと思われる。

純粋に公正な運営にガバナンストークンは必要か

送金や決済処理は、厳密なルールのもと運営されるわけなのだから、本質的に人間がわざわざ結論を出す必要はない。なので、既存の金融システムのようにAIによる自動化は可能だろう。

と同時に、ブロックチェーンの取引の監査を行い、トラブルの対応やジャッジが下せるほどのAIが誕生した場合、もう1つの疑問が浮かび上がってくることが想定されている。「はたして、チェーン上のあらゆるプロジェクトのジャッジに人間は必要なのだろうか」ということだ。

現在、ブロックチェーン上ではさまざまなDAO※2が立ち上がり、プロジェクトの実現に向けて活発な議論が繰り広げられている。

だが、その議決権を手にするには、ガバナンストークン※3が必要であり、DAOでどれだけ盛んに議論しようとも、ガバナンストークンを多く保有する人物の意見でひっくり返される可能性は常にある。はたしてこれが、公平な議決といえるのだろうか。

それよりは、プロジェクトの立ち上げ後、生成AIがデータを収集。人間は、そのデータの収集やインプットの手伝いだけを行う。最終的に集まったデータの分析を生成AIが行い、最もプロジェクトの成功確率が高い手段を選択し、そのまま決定を下してしまう。

こうすることで、人間は一切介在せずに、AIだけでプロジェクトの運営と実行が可能となるのではないだろうか。もちろんこんなことは、現在の生成AIでは行えないが、皆さんは公正性についてどう思うだろう。

AI×ブロックチェーンの実例

AI×イールドファーミング

イールドファーミングとは、暗号資産をプラットフォームに預けブロックチェーンに流動性を提供する見返りとして、利息を獲得する行為のこと。暗号資産ユーザーが利用する頻度が増えてきた。この作業にAIを介在させることで、利率を確認しながら最大の投資費用対効果を得る投資を行うことができる。

AI×デザイン知財管理

生成AIは雑多な情報をもとに学習をし続けるため、時に生成した製品が知的財産権を侵害してしまうことが問題となる。そこで、生成AIで知的財産権のデータを一元管理しつつ、スマートコントラクトでNFT化することで、デザインのオリジナリティと価値を担保するサービスが始まっている。

AI×Play to Earn

ゲームを遊ぶことで、暗号資産を稼ぐことができるPlay to Earn。これをさらに発展させ、ゲームプレイ中に手にしたアイテムをNFT化するゲームが誕生している。このアイテムはAIにより独自の物語をつけられており、ブロックチェーン上に隠されている。もちろんNFTなので売買も可能だ。

AI×セキュリティ

生成AIはどこから何の情報を学習してきたかわからなくなる課題がある。そこで学習経路をブロックチェーンに記録して、AIトレーニングを監視し、意思決定の過程を追跡可能とする検証が始まっている。透明かつ改ざん不可能な学習過程を確認することでよりセキュアなAIの開発が可能となるはずだ。

※1:2016年、イーサリアムがハッキング被害にあい約65億円のトークンが盗まれた。イーサリアムの開発陣は盗まれたお金を凍結するために、システムに介入しロールバックを実施。これに反発した一部利用者がイーサクラシックへと枝分かれし分裂した。

※2:特定の所有者や管理者が存在せず、事業やプロジェクトを推進できる組織形態。意思決定はブロックチェーンを介した投票により実施され、決定後はシステムが自動的に実行する。

※3:DAOの意思決定に参加するための投票権が付いているトークンのこと。


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