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暗号資産取引に必要な税金の知識を学ぶ!基礎知識や今からでも使えるテクニックを解説 —— カオーリア会計事務所代表・藤本剛平

2024/11/28Iolite 編集部
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暗号資産取引に必要な税金の知識を学ぶ!基礎知識や今からでも使えるテクニックを解説 —— カオーリア会計事務所代表・藤本剛平

暗号資産の税金の基本を知る

現在、ビットコインを始めとした暗号資産価格が高騰し、市場は賑わっている。市場が好況となればそれだけ利益が生まれ、一旦利益を確定したいという考えも出てくるはず。しかし注意してほしい。暗号資産の取引で得た利益は課税対象となり、場合によっては確定申告を行う必要も生じる。

今後も暗号資産を取引する上で、税金に関する知識を蓄えておくことは極めて重要だ。そこで今回、暗号資産領域の税務に詳しい藤本剛平さんに、暗号資産取引によって生じた利益をどのように計算すべきか、また損益計算をする上での資産管理や具体的な方法について話をうかがった。

──個人の暗号資産取引によって発生した利益について、どのように税金がかかってくるのかまず基本を教えてください。

藤本:まず暗号資産の取引で発生した利益は、雑所得という所得区分に分離されます。所得区分は10種類あり、それぞれに応じて税金の計算方法が変わるのですが、そのなかでも雑所得は優遇措置がほとんどない、最もシンプルな所得区分なんですね。

例外として、宝くじのような形で暗号資産を手にしたのであれば一時所得、事業として暗号資産取引をして利益が出たのであれば事業所得に該当しますが、原則8〜9割くらいの人は雑所得に該当すると思っていただいてよいかと思います。

——ほかの所得には優遇があるのに、暗号資産取引で発生した利益は雑所得だから優遇がないというのはなんともいえない気分になりますね。また多くの人は暗号資産に関する税金で「55%」という数字にもアレルギーを持っているかと思います。

藤本:暗号資産の利益は常にその55%が課税されると認識している方が多くみられますが、これは大きな誤解です。まずこの55%は超過累進税率における最大の所得税率である45%と、一律10%の住民税を足した数字となります。

また、雑所得だから55%というわけではなくて、給与所得をたくさん得た場合でも住民税とあわせて55%が課税されます。つまり、暗号資産だけが冷遇されているわけではなく、多額の利益が出た場合には一部の例外を除き税金が課されるというのが基本的なルールということです。

▶所得税の税率:国税庁より引用

暗号資産取引を行うユーザーが陥りがちなミスとは?

──なるほど。では、暗号資産取引を行うユーザーが陥りがちな税金周りの知識不足について教えてください。

藤本:よくあるのが、暗号資産同士の交換でも損益が発生するということですね。ただそれ以前に、暗号資産取引を通じて発生した利益が課税対象となり、損益計算が必要であること自体を知らない人が圧倒的に多いのではないかなと感じています。

損益を計算する際には暗号資産取引所から取引履歴を取得する必要があります。しかし、ある国内取引所の方によると、取引を行った全体ユーザーのうち、わずか1割程度しか取引履歴をダウンロードしなかったようです。儲からなかった人も多いことを踏まえてもこの割合は低すぎます。

──損益計算の必要性を知らない可能性があるユーザーが9割もいるかもしれないというのは非常に驚きですね……。実際、税金をしっかり支払わないとこんなことになるといった事例はありますか?

藤本:私のお客様の事例ではありませんが、暗号資産取引で2017年にかなりの利益が出たものの、翌2018年に暴落したことで納税資金がなくなった方がいらっしゃいました。その方には暗号資産の価値が下落したタイミングで税務調査が入ったそうで、本来申告しなければいけなかった税金を支払うことができなかったそうです。

──その後、税金の支払いはどうなったのでしょうか?

藤本:結局ほかの人に立て替えてもらったそうですが、代わりにその人の会社で働き続けることになったそうです。辛くても辞めるに辞められないという意味では大きな自由を失ってますよね。この話を聞いた当時は税理士ではありませんでしたが、未だに私のなかでは税金の恐怖の一端を示すエピソードとして胸に刻まれています。

──そもそもですが、いくら多額の利益が出たからといって、個人のもとにそんな早く税務調査が入るものなんですね。

藤本:国税の方は、利益の大小にかかわらず結構把握している印象です。ブロックチェーンのトランザクションもしっかりと追っていますし、どこか執念を感じますね。

ネット上では税務署を「軽くみる派」と「重くみる派」がそれぞれ散見されますが、「軽くみる派」はまだ暗号資産にあまり慣れていない税務調査をみているからだと思うんです。ただ、専門部隊などがきた場合にはとにかく理詰めでしっかり調べられますので、デタラメを話したり適当な受け答えをしてもまったく通用しませんよ。

※住民税の申告は必要

▶︎確定申告の必要性の判断フロー:カオーリア会計事務所セミナー資料より引用

暗号資産の損益計算をする上でオススメの方法

──故意的なものは別として、意図せずそうした事態に陥らないように気を付けるべきポイント、またはテクニックなどはありますか?

藤本:気を付けるべきポイントでいえば、どんな人でも確定申告をする心構えを持つことと、取引に関する記録はこまめに取っておくことでしょう。

またテクニックではないですが、必ずやってもらいたいことがあります。それは「12月31日時点で保有している暗号資産のスクリーンショットを保管しておくこと」です。

──それはなぜでしょうか?

藤本:取引回数が数えられるほどの方であればまだいいですが、頻繁に取引を行う場合には損益計算ソフトを使う方もいるかと思います。ですが、取引履歴が不足しているなどによりその損益計算が必ずしも正しいという保証はありません。

そこで、スクリーンショットをしっかり残しておくとその損益計算結果の正しさを確認・証明する大きな助けになるんです。

──証拠を残しておくというのは何事においても大切ですからね。ちなみに、損益を計算する上で税理士の目線からオススメの方法はありますか?

藤本:オススメというか、よほど少量の取引でない限り損益計算ソフトの利用は避けられないかと思います。もしくは、毎年行うことが前提の方法ですが、年末のタイミングで1度「すべて」の暗号資産を法定通貨に変えておくことですね。

年末に法定通貨に変えて、入金した金額との差額を利益及び損失とするといいでしょう。ちなみに、暗号資産を取引した後ずっと保有したまま含み益だけが発生していても、個人の場合は売却等をしない限りその含み益が課税対象となることはありませんので、そこは覚えておくべきポイントです。

あとは、あまりにもマイナーな暗号資産、あるいはマイナーなブロックチェーン上で発行された暗号資産については取り扱いに気を付けた方がいいと思います

──マイナーなブロックチェーンを利用する際には取り扱いを気にする必要があるとのことですが、なぜでしょうか?

藤本:損益計算ソフトが対応していない場合があるからです。海外製のものでマイナーなブロックチェーンに対応しているものもありますが、そのチェーンの解析能力が低い場合があります。

「◯◯◯チェーンに対応」とうたう損益計算ソフトでも「トークンの入手金がどのような目的・属性で行われているもの」もあれば、「トークンの入手金を管理するだけのもの」もあり、その解析レベルが異なります。

後者の場合、損益計算時に納税者はその取引がなんだったかを思い出す作業が大量に発生し、かなりの負担が生じます。

──マイナーな暗号資産の取引回数が非常に多い場合、その取引で得た利益をしっかりと計算することも煩雑になっていくということですね。

藤本:暗号資産の税金計算については「ちょうどよい」レベルのやり方が存在しません。ただ、損益計算を少し楽にするコツとして、保有する暗号資産を年末時点だけでいいので2、3種類、多くても10種類程度におさえておくことで損益計算結果のズレの原因が把握しやすくなります。

▶暗号資産・NFT の所得計算と損益計算方法:カオーリア会計事務所セミナー資料より引用

改訂された法人の暗号資産税制

──とても勉強になりました。ここからは現在議論されている暗号資産の税制改正周りについて教えてください。まずは関心ごととして、2年連続で見直しが行われている法人に対する暗号資産の課税について内容を解説していただきたいです。

藤本:この制度の主旨は、これまで企業が保有する暗号資産については含み益も課税対象(期末時価評価課税)となっていたけれども、条件を満たせば含み益を課税対象からはずすというものです。その条件を大まかにいうと、外部からみて明らかにそのトークンを企業が「自由に動かせない状態」であることを証明することです。その際、特定の暗号資産のみが対象となるということはなく、基本的には自社以外で売買価額が公表されているなどの条件を満たしたトークンであればほとんど適用することができます。そのなかには自社発行のものも含まれます。

「自由に動かせない状態」についてですが、大きくわけて2つの方法で証明することが可能です。1つ目は、そのトークンを動かせなくするプログラムなどを用いて、本当にそれが動かせないようになっていることを証明する。2つ目は、暗号資産取引所に預け、それをJVCEA(一般社団法人日本暗号資産等取引業協会)に報告すること。この2パターンのうちどちらかが基本となります。

まずは20%の申告分離課税から導入? 今後の暗号資産税制改正を予測

──法人を対象としたものについては改正された実績がありますが、やはり個人を対象とした税制改正に注目が集まります。すでにJVCEAなどを中心に個人の暗号資産取引等によって生じた利益を20%の申告分離課税や3年間の損失繰越控除の対象とするよう要望していますが、実現に向けどれほどのハードルがあるものなのでしょうか?

藤本:暗号資産の税制改正については、実現の可能性が高いものとそうではないものにわけられると考えています。

税制の根っことなるルールに近いものであればあるほど、税制改正の難易度は高くなります。たとえば、国民や業界団体が所得税そのものをなくせといっても実現は極めて厳しいですよね。それと同じで、暗号資産に関する税金もその根本に近い部分に触れるようなものは実現の可能性が現段階では見通せないということです。

──そうなると一気に要望をすべてというわけではなく、まずは実現の可能性が高そうなものから着手するということですね。具体的にはどのようなところから改正が行われると考えていますか?

藤本:まず申告分離課税については、「比較的」実現できる可能性が高いと考えています。というのも、過去に金融取引で総合課税から20%の申告分離課税の対象に変わったものがあります。それは為替FXです。

為替FXには国内FXと海外FXの2種類があります。申告分離課税と3年間の損失繰越控除の対象となっているのは国内FXのみで、海外FXについては累進課税が適用されます。やっていること自体は一緒なのになぜ国内と海外とで切りわけるかというと、まずはレバレッジの高さの違いがあげられます。

当然、レバレッジが高ければ高いほど破産者も増えるでしょうから、国としてもトラブルは未然に防ぎたいものと思われます。もう1つは、海外FXだとどれだけ利益が出たのか国が把握できないということです。ここが特に国内FXと海外FXにおける優遇の差が出たポイントだと私は考えています。

同様に、暗号資産についても20%の申告分離課税を導入する代わりに、どれだけ利益が出たのか国が把握しやすいように環境を整備することなどが交換条件として求められるのではないかと個人的に考えていますね。

──利害の一致が求められるということですね。たとえばですが、国内で完結している取引については申告分離課税の対象とするけども、海外での取引についてはこれまで通り雑所得の扱いにするということもあり得ない話ではないという見解ですね。

藤本:あくまでも私個人の予測に過ぎませんが、過去を振り返ればそうなる可能性も考えられますよね。現状の問題点として、まず国民の多くが暗号資産で得た利益をしっかりと申告していない・できないこと、そして国にとっても税務調査が非常に大変であることがあげられます。

こうしたことを踏まえると、分離課税専用口座のようなものを設け、国税が常に監視することができる口座内の取引しか申告分離課税の対象にしない、などといった措置も考えられます。

──仮にそうなった時には、Web3.0のよさが少々霞んでしまいますね。ちなみに、暗号資産同士の交換については非課税にして、あくまでも法定通貨にした時にのみ課税対象とするよう要望も出ています。こちらについてはどのような見解をお持ちですか?

藤本:こちらについては先ほどお話しした税法の土台に近いものなので、申告分離課税よりも実現困難だと思います。ここに手を付けると税法の基本概念を覆すことになるので、国内外問わず暗号資産以外の領域に与える影響も非常に大きくなります。

そのため、まずは国と業界の利害、対応が一致した形で申告分離課税の対象とする方が先になるでしょう。また、税制改正は政治的な動きにも左右されるため、時期についてはまったく読めません。

──最後に、啓蒙という意味で読者に伝えたいことがあればお願いします。

藤本:まずは、暗号資産による取引で発生した利益は課税対象となりますので、しっかり申告する心構えをしておきましょう。

もちろん申告に向けたハードルが高いのは承知しています。私自身もこうした課題に向け、現在ブロックチェーンのトランザクションを直接吸い上げて解析でき、仕訳出力にも対応した損益計算ソフトを開発中です。

データの解析精度も現時点で非常に高いため、一般の方がチェックする時の負担も軽減できるのではないかと考えています。対応するブロックチェーンの種類は年内にも40を超える予定です。年内にベータ版の利用者を募集する予定なので、ぜひ私のXをご確認ください!

暗号資産の損益計算ポイント

  1. どんな人でも確定申告をする心構えを持ち、取引に関する記録はこまめに取っておく。特に「12月31日時点で保有している暗号資産のスクリーンショット」は必ず保管しておこう。
  2. 損益計算ソフトが対応していない場合があるため、あまりにもマイナーな暗号資産、あるいはマイナーなブロックチェーン上で発行された暗号資産については取り扱いに気を付けるべし。
  3. 損益計算を少しでも楽にするコツとして、保有する暗号資産を年末時点だけでも2、3種類、多くても10種類程度に抑えておくこと。

Profile

◉藤本剛平(Kouhei Fujimoto)

カオーリア会計事務所代表

税理士。(公財)大阪産業局主催Web3特化型アクセラレーション「SUITCH」の特別メンター。暗号資産・NFT専門税理士として個人から大企業まで様々な税務・損益計算の対応実績を有する。税理士向け専門誌「税務弘報」にて特別対談記事、税務記事を多数掲載。

「Accord Tax Review」にて税法論文を執筆。近畿税理士会主催税理士向けセミナー、bitbank、Zaif主催のVIP顧客向け税金セミナーの講師としても活躍中。暗号資産・NFT損益計算サービス「Cryptorch」開発協力。著書(共著)「事例でわかる!NFT・暗号資産の税務」(中央経済社)

事例でわかる!NFT・暗号資産の税務(第2版)

所得税、法人税、相続税等、各税法の暗号資産に関する特別の定めを詳解。確定申告実務を見据えて、具体的な取引事例で損益計算の仕方も解説。Web3.0の税金がわかる定番書。利益が出たけれども実は税金のことがよくわかっていない、という人は必読。

https:/x.com/suika3111

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