──「ネオ日置」はどのような背景・経緯、狙いから立ち上げられたのでしょうか?
重水憲朗(以下、重水):きっかけはコロナ禍で市外・県外に住む方から「日置市に行けない・帰れない」という声が多く寄せられたことです。こうした背景から、日置市が包括連携協定を結んでいる地元企業のLR株式会社と関係人口施策について協議し、インターネットによる交流で何かできないかと模索していました。その過程で「オンラインを通じて日置市を感じることはできないか」という声が多数寄せられ、メタバース上で“もうひとつの日置市”を作っていこうと戦略を立てたのが始まりです。
とはいえ、市で取り組むということは税金で費用を賄っていきますので、効果を検証できないと予算を確保することやプロジェクトとして行動に移すことは厳しいです。そこで私たちはクラウドファンディングを実施し、賛同してくださる方々と共にチャレンジを開始しました。
──現在も「ネオ日置」は市の税金を活用することなく運営しているのですか?
重水:市の税金という点ではその通りです。このプロジェクトは「もうひとつの日置を創造するプロジェクト⇒ネオ日置計画」として令和4年8月8日からスタートし、初年度にはクラウドファンディングで700万円、その翌年度には倍以上となる2,000万円ほどの支援をいただきました。ちょうど昨年度からは国のモデル事業として採択され、国から交付金をいただけるようになりました。ですので、現在は国のモデル事業による交付金と、クラウドファンディングにより集まったお金を活用して「ネオ日置」に関する取り組みを進めています。
──メタバースで空間作りを進めていくと決め、推し進めることができた背景にはどのような根拠があったのでしょうか?
重水:どれくらいの強度で推し進めるかという部分では、先ほどお話ししたクラウドファンディングの存在があります。これだけの支援が集まるということは、期待している人たちがいるということの証拠でもあります。
──「ネオ日置」の認知向上や利用者増に向けどのような取り組みを行なっているか教えてください。
重水:現在、日置市が運営するWebメディア「ひおきと」にて、ネオ日置関連のイベントやネオ日置内の名所などを紹介しています。また、毎月定例で放送している「ひおきとTV生放送」の定例コーナー「ネオ日置にいらっしゃーい」でもネオ日置から中継を行なっています。「ネオ日置」に興味関心がある団体などに積極的に使ってもらい、コラボする取り組みなども実施しています。
今後の取り組みとして現在構想していることとしては、日置市出身のTikTokerさんやアーティストの方々によるファンサービスイベントを「ネオ日置」で実施することです。すでにイベントに対応するための技術的な準備は終えており、現在は実施に向けた打ち合わせを重ねている段階です。こちらの進捗もぜひ楽しみにしていただきたいですね。
──「ネオ日置」、ひいてはメタバースの認知という点で現状の浸透具合はどうですか?
重水:「ネオ日置」はモバイル環境に対応し、スマートフォンでも簡単に入れるという気軽さを売りにしているのですが、やはり末端にまで浸透させることは難しく、結果的にある程度リテラシーのある方でないと足を踏み入れられていないというのが現状だと思います。また、ネットワーク環境によっては「ネオ日置」に入るまでのロード時間が長くなってしまうため面倒に感じる方もいるかもしれません。こうした状況を踏まえ、現在は少しでもメタバースなどに興味のある層の取り込みを狙っています。その上であらたに連携していくのが「まちのコイン」です。
▶メタバース上で“もうひとつの日置市”を作り上げるべく、取り組みが始まった「ネオ日置」。実在する日置市の名所などが展開される「ネオ日置」は、国のモデル事業として採択されるなど先進的な取り組みとして注目されている。