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生成AIはどのように使われているのか

2024/12/04Iolite 編集部
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生成AIはどのように使われているのか

国内で生成AIサービスの利用人数は約2,000万人

生成AIサービスの拡大がとどまらない。株式会社ICT総研の調査によると、2024年末には、生成AIサービスを利用している人数は1,924万人に達する見込みとされている。

NVIDIAを筆頭にGPU関連企業の株価の伸びはとどまるところを知らず、今やIT業界=生成AI関連事業といっても過言ではない勢いだ。

もっとも、生成AIで盛り上がるGPUと、それらを読み取り利用するパソコンのために用いられているCPUとは、まったく異なる設計思想のため、今後両者はまったく異なる業種として進歩していく可能性も指摘されている。では、実際に日本人はどのような生成AIサービスを利用しているのだろう。

これまたICT総研の同調査内に、1年以内に生成AIサービスを利用したユーザー1,243人に対するWebアンケートの結果が含まれている。それによると、やはり断トツの利用率を誇るのはOpenAIのChatGPT。実に、生成AIサービス利用者の18.3%が利用している。

次いで、MicrosoftのCopilotが8.9%、GoogleのGeminiが5.4%と続く。この上位3サービスを除くと、途端に利用率は3%以下にさがり、上位サービスによる独占が進み始めているように思う。

ChatGPTは先行サービスと知名度によるスタートダッシュ効果だと思われるが、2位と3位のサービスに関しては、既存のofficeアプリやAndroidスマートフォンに自動搭載されていることによって、気が付いたら使うようになっていたというパターンだろう。新進気鋭の生成AIサービスでも、大手プラットフォーマーが強いという事実は、夢がないように思われる。

一方で、実は明るい兆しもある。同調査では各サービスのユーザー満足度も、調査していたのだが、実に4人に3人が満足と答えているサービスは、AdobeのAdobe Fireflyだったのだ。このサービスはデザイナーなどクリエイターが愛用している画像加工や動画加工に特化した生成AIだ。

前述の利用者調査では全体の1.2%の人しか使っていなかった。しかし、そのUIのすばらしさによりこの高い満足度を獲得している。サービスの質をあげれば超巨大資本にも対抗できるということだろう。

国内で展開するサービスはアプリケーション展開が中心

MicrosoftのCopilotは、資金援助をしたOpenAIの技術をもって開発されている。生成AIの技術はこのように、API連携※1することでさまざまなオリジナルのサービスとしてアプリに組み込むことができる。

日本国内で展開されている生成AI関連のサービスは、独自の大規模LLM開発が遅れているため、こうしたアプリケーション開発の方が盛り上がっている印象だ。また、株式会社デジライズのように、生成AIをどのように業務で使いこなすかをアドバイスするメンターのような事業も目立つ。

前頁と逆行するような話だが、業務として生成AIを利用している方は順調に増加しているが、個人で生成AIを利用している人間の比率は10%に満たないという調査が今年の7月総務省から発表されている。

米国では46.3%、中国に至っては56.3%がプライベートでも生成AIサービスを利用しているなか、先進国とは思えないほど低い数値だ。理由として、「使い方がわからない」をあげた人が4割を超えて最多だった。AIメンターやAIコンサルが日本企業で求められるわけであろう。

「生活に必要ない」という理由でAIに触れていない人も多く、こちらの割合は日本が世界最多となっている。総務省は日本企業の傾向として「議事録作成などの社内向け業務から慎重に導入を進めている」と分析しており、イノベーションに置いていかれないよう安全・安心なルール整備を急ピッチで進めている。

一方で人数が少なく人的資本も足りていないベンチャー企業は、このタイミングをチャンスと捉え、積極的なAI導入を進めている。日本のAI開発企業の上位5社をみてみると「Appier Group」「PKSHA Technology」「ブレインパッド」と2000年以降に起業した新興企業が並んでいる。

2027年にはAI関連の市場規模は、日本国内だけで1兆円を超えると予想されている。これからの時代についていくためには、個人利用の段階である程度AIへの理解を高めておく必要があるだろう。

※1:外部のアプリケーションやシステムを、データ連携させることによって機能の拡張を図ること

生成AIのユースケース

Communication

生成AIが登場した時に誰もが驚いたのが、その自然な会話能力だった。それまでのチャットボットが、杓子定規な回答しか行えなかったのに対して、まるで人間のようにこちらの意図を汲み取った回答を返してくれるシステムは、さまざまな可能性を感じさせてくれた。

  • 対話支援(DIALOGUE SUPPORT)近年、企業が頭を悩ましているのが、新入社員への電話対応指導などのコミュニケーション研修だ。電話連絡が一般的でなくなった若者はどうしても電話での会話に苦手意識を持ちがちだ。そこで会話の支援を、リアルタイムで生成AIに行ってもらう取り組みが始まっている。
  • チャットボット(CHAT BOT)企業HPの問い合わせ窓などで、頻繁に目にするチャットボット。これまでは与えられたプログラムの流れに則っての分岐誘導しかできなかったため、個々の顧客の細かな要望へは対応しきれない場面もあったが、生成AIを用いることで、かなり細かな要望を聞き出し適切な窓口へつなぐことが可能となってきている。
  • 音声データの議事録化(RECORDING AUDIO DATA)頻繁に行われる会議において、会話内容の録音を行っている方は多いだろうが、そこから録音データを聞いて議事録をまとめ直すというところまではかなりの労力を費やす。音声データを取り込むだけでリアルタイム議事録を作成し、会議のまとめまで行う生成AIが登場した。

Analyze

エクセルに大量に打ち込んだ数値から視覚的に把握しやすいグラフを作り、できあがったグラフを読み解いて分析を実施する。だが、データアナライズを繰り返しているとどうしても個人の経験や、思い込みからあたらしい視点が得られにくくなる。生成AIを用いれば、分析にあらたな風を呼び込めるかもしれない。

  • インフラ整備(INFRASTRUCTURE)水道管やガス管など、人間の目にみえないところにあるインフラは、劣化具合の確認が難しい。AIに敷設時期や天候などを入力し、経年劣化具合を分析してもらうことで、限られた予算で効率的にインフラの更新作業を行うことができる。人口が減る日本の課題解決手段として注目される。
  • 業務改善提案(BUSINESS)人員を十分に配置して、熱意をもってプロジェクトにあたってもらっているのに、一向に売り上げに結びつかないと悩む経営者は多い。このような場合、関係者の目線や感覚だけでは気付かないようなところで、ボトルネックが発生していることが多く、原因究明AIの分析を頼る企業が増えてきている。
  • 医療分野(MEDICAL)診断結果や症状を入力するだけで、人間よりも知識量の多い医療用AIが細かな診断を下してくれるシステムが開発されている。また、医療事業者は日夜診療報酬明細書の作成などの事務作業に追われている。こうした、事務作業をAIが肩代わりできれば、医療従事者の負担を大きく削減できる。
  • 需要予測(DEMAND)シーズンごとに売り上げが伸長するアイテムの存在は、さまざまな業界が経験で把握しているが、本当にそのアイテムが売れる原因を事細かに理解できる人はそれほどいない。だがAIならばそれらの本当の原因の解析から、人間が見落としている要因による、あらたな需要を予測し導き出すことが可能となると考えられている。

Creative

生成AI最大の特徴は、あたらしいものを創作するAIであるということだ。人間はアイデアを提示し、創作の実作業はAIが行うという働き方はこれから一般化していくだろう。

  • 動画生成(VIDEO)近年の生成AI関連の話題で、特に発展目まぐるしいのが、動画の生成分野であろう。どういう場面がみたいというプロンプトに対して、まるで実写のような、あるいは手書きのアニメーションのような形で、すぐに動画を作成してくれる。そのまま商用として出すのはまだまだ難しいかもしれないが、映画制作の際の仮の絵作りなどには、現状でも十分に使用することができるレベルになってきている。今後の発展が楽しみな分野である。
  • 文章生成(TEXT)海外では、Amazonの小説売上ランキングに、生成AIが作成した本が入ってくることも珍しくなくなってきた。生成AIは世界中の物語のパターンから学習をしているため、人間が面白いと感じる、あたらしい物語を作ることに適している。ビジネスの現場では、定型のメールの作成などに関しては、AIに全部任せてしまうようになるだろう。
  • イラスト生成(ILLUSTRATION)初期に一般公開された生成AIを使ったイラスト生成では、認識の齟齬により、かなり頓珍漢なイラストを仕上げてくることもあった。しかし、現在はもはや商用利用しても問題がないレベルでのイラスト制作が可能となっている。テイストも、写実的からカートゥーン調まで自在に描くことができる。それぞれの生成AIによる得意な絵柄も誕生してきており、現在Microsoftは、Officeにイラスト生成機能を搭載している。
  • 旅行プラン(TRAVEL PLAN)商用化として実際にサービスが始まっているのが、AIによる旅行プラン作成代行だ。行きたいスポットやおおよその時間を入力するだけで、宿泊先の提案から、そのほか周辺の観光スポットを効率よく巡るタイムスケジュールまで細かく組んでくれるのだ。生成AIの特性上、情報の少ないマイナーなスポットなどの提案は苦手という弱点も今はある。

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