今年、自らの判断でプロジェクトを立ち上げ、ホームページの制作を行うような自律型AIの発表が行われた。AGIに関しては、あと5~10年以内には実現する可能性が高いとみる専門家は多い。
データ処理や分析など、これまで長い時間をかけて専門の人材や、コンサルタントが行ってきた分野に関してはAGIで代行やサポートができるようになる可能性が高く、新サービスの開発や提供の速度も、劇的に早くなってくるだろう。
我々が幼い頃に読んでいたSF小説では、高度に発達したAIは、人間に代わり過酷な労働をさせられており、そのことに嫌気がさして人類に反乱を起こすものであった。しかし、現実のAIが普及してくると、むしろ、AIはホワイトワーカー側の仕事をする機会が増え、人間が地道な労働に従事している場面が目立つ。
先述のサム・アルトマン氏などは、人類が働かなくて済む社会が訪れることを夢みているが、実際に人間が働かなくて済む社会を実現するためには、AIの発展だけでは片手落ちだ。むしろAIの手足となり細かな労働に従事できるような、ロボット工学の一層の発展が必要となるだろう。
そのため、労働より先に進化したAIが活躍する場はむしろ介護やコミュニケーションの分野になると思われている。自宅にスマートスピーカーがある家庭は増えている。これにAGIが搭載されたらどうだろうか。
もしくは、ペット型ロボットにAGIを搭載し、常時会話ができるとどうか。孤独な高齢者の見守りなどに、力を発揮できそうではないか。
AGI完成後、すぐに業務の効率化などで利活用されるのは、ホワイトワーカーの職域からだろう。その高い言語処理能力を活かしてコミュニケーション分野での人助けに関しては、すぐにでも利活用できそうだ。そうこうしていくうちに、AGIは進化をしていき、ASIの域へとたどり着くだろう。
そうなると、人間をはるかに超えた知能で、自分たちの手足となるロボットの設計や、科学的な新発見、そして人類ではたどり着けなかった技術の進歩など、さまざまな変革が始まる。
もっとも、人間をはるかに超えるASIは、人間の倫理的な感覚からは許されないような結論を出す可能性がある。その時、課題解決のために倫理を無視するという判断をするのか、人間らしさを守るため、倫理を遵守するべきか。
この最終の決定権は人間が持ち続けるシステムは考える必要がある。今後のテクノロジーの進化を楽しみに見守りながら、社会の変化を注視していきたい。
AGI開発のトップランナー
▶Googleはすでに検索結果について、生成AIがまとめを自動で行うサービスを提供し始めた。
▶生成AIの進化が進んだ後どのように制御するのかが決められていないことから「PAUSE AI」運動も世界中で起こり始めている。
シンギュラリティとは?
AIが人間の知能を超える転換点、またはその転換点によって起こる変化を指す言葉。特異点とも翻訳される。AIが人間を超えることで、人間とAIの在り方が本質的に変化するタイミングのことだが、何が起こるかは専門家によっても意見がわかれる。
AIによる人間の支配をまじめに語る研究者もおり、こうしたAI忌避の風潮も汲み取っておくことは、AI開発の上で考慮しておく必要がある。
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