2009年1月3日、サトシ・ナカモトによってビットコインの「ジェネシスブロック」がマイニングされ、暗号資産の歴史が幕を開けた。そして、2010年、フロリダのプログラマーが10,000BTCでピザ2枚を購入。
この取引は暗号資産実用化の第一歩となり、今でも暗号資産業界では、この取引が成立した記念すべき5月22日を「ビットコイン・ピザデー」として祝う事業者やコミュニティが存在する。
暗号資産は発展のなかで、数多くの試練も経験した。2014年、当時世界最大のビットコイン取引所だったマウントゴックスがハッキングされ、約85万BTC(当時約4億5,000万ドル相当)が消失。
その後も、2018年にコインチェックでの約5億3,400万ドル相当のNEMの盗難、そして2024年にはDMM Bitcoinで4,509.2BTC(約4億8,200万ドル相当)が不正に流出した。これらの事件は、暗号資産取引所のセキュリティに対する信頼を大きく揺るがした。
いずれの事件も、暗号資産を管理する“取引所”の管理体制を狙ったハッキングであり、暗号資産自体の脆弱性をついた事件ではなかった。2015年7月、ヴィタリック・ブテリン氏らが開発したイーサリアムが稼働を開始。
スマートコントラクト対応のプラットフォームとして、分散型アプリケーション(dApps)の基盤を提供した。さらに2022年にはProof of Stake(PoS)への移行を完了し、環境負荷を大幅に削減。暗号資産のエコシステムを次の段階へと進化させた。
イーサリアムの登場により、2017年にはICO(Initial Coin Offering)ブームが到来。誰もが簡単にトークンを発行し、資金調達が可能になり、暗号資産市場は急速に活況を呈した。しかし、詐欺的なプロジェクトや規制の不透明さが問題となり、規制強化とともに短期間でブームは収束した。
暗号資産の急速な成長に伴って明るみになる課題はほかにも存在した。2018年には、テザー(USDT)の準備金不足疑惑が議論の的に。2021年にはニューヨーク州司法長官との和解を通じて、発行分の一部が短期債務で構成されていることが明らかになり、ステーブルコインの信頼性が問われた。
そのような状況下でも、ブロックチェーンの技術と暗号資産の有用性は注目を浴び続ける。国家レベルでも暗号資産の活用は進み、2021年9月にはエルサルバドルがビットコインを法定通貨として採用。送金コストの削減や金融包摂の促進を目指し、国家プロジェクトとしてマイニング施設の整備を進めている。
2022年、アルゴリズム型ステーブルコイン・USTのペッグが崩壊し、関連するプロジェクトが連鎖的に破綻。俗にいう「Terra(LUNA)ショック」や世界で2位の規模を誇った暗号資産取引所FTXの破綻が市場に暗い影を落とすも、それでも暗号資産市場は再び成長の道を歩み続けている。
2024年1月、米国でビットコイン現物ETFが初めて承認され、機関投資家の参入が加速。これをきっかけに、ビットコインは同年12月に史上最高値となる10万ドルに到達した。この歴史的な節目は、暗号資産が世界の金融システムにおけるあらたな地位を確立する一歩となった。
短い歴史のなかで劇的な変化を遂げた暗号資産市場。その進化の軌跡は、技術革新と課題の克服、そして世界的な採用による可能性の広がりを示している。未来の金融の姿を映すこの物語は、これからもあらたな歴史を刻み続けるだろう。
ここからは、2025年に暗号資産業界がどのように発展を遂げ、どのような活用事例があらわれるのか、月ごとに想定されるトピックをまとめているので考察していきたい。