──チェイナリシスが日本市場に参入した背景や、日本法人を設立した狙いを改めて教えてください。
内田雅彦(以下、内田):2014年頃、日本は世界で最も暗号資産が活況を呈していた国でした。そんななかで、不幸にもマウントゴックスの不正流出事件がありました。
事件の際にチェイナリシスの共同創業者が捜査に協力したことが、チェイナリシスという企業が生まれるきっかけになっています。共同創業者は「チェイナリシスは日本生まれなんです」と冗談まじりによくいいますが、それだけ日本とは馴染みが深い会社です。
マウントゴックス事件での成功をもとにして、弊社は開発した調査ソリューションを世界各国の官公庁や法執行機関、暗号資産関連企業、大手金融機関に提供してきました。その後現在に至るまで、多くの人々が暗号資産の投資や取引を合法的にできるようにするための多くの製品を展開してきました。
そして、日本がWeb3.0を国家戦略として打ち出していくのに呼応して、我が国に根差した法人を作り、日本語でサービスを提供することで、より安全な取引ができる環境作りをご支援するために、2020年に日本法人を設立して現在に至っています。
──毎年チェイナリシスから公開されるレポートの公開前ではありますが、 2024年の暗号資産関連犯罪の動向というのはどのような特徴がありましたか?
内田:先日、2024年に不正な活動に利用された暗号資産アドレスへの送金動向が発表されました。昨年1年間で、すでに判明しているだけで409億米ドルが不正なアドレスへ流入したとみられており、記録的な年となりました。
従来の不正な活動は、サイバー犯罪にかかわるものが中心でしたが、昨今は国家安全保障から消費者被害に至るまでその領域を広げてきていますし、法定通貨による不正活動収益を洗浄するためにオンチェーンに資金移動させる行為もみられます。
一方、ここで重要なのは、2024年にあった暗号資産全体の取引量のうち、不正な活動に使われた暗号資産アドレスが受け取った金額はわずか0.14%だったという点です。
成長を続ける暗号資産取引の内、ごく一部だけが犯罪に使われているというのが実情であり、「暗号資産は悪用されやすい」と一概に決めつけるべきではない、ということを強調しておきたいですね。
──公開されているレポートのなかには「不正なアドレス」という表記がいくつか出てきます。チェイナリシスでは、どのような基準で「不正なアドレス」と識別されているのでしょうか。