──2025年のWeb3.0領域の展望について、お考えをお聞かせください。
齊藤達哉(以下、齊藤):前提として、“Web3.0”という括りで考えない方がいいと思います。世界的な潮流として不可逆なのは、「AIエージェントによる生産性の最大化」と「金利上昇を踏まえた資金運用効率の最大化」です。結果として、金融のプログラマビリティ(クロスボーダー、24/365で、デジタルに動かせるか)の必要性が国内外で強く意識され、実現手段としての「RWA(現実世界資産)のトークン化」が加速します。
この動きとは逆ベクトル、つまりブロックチェーンの世界から金融の世界において、ビットコイン等の金融商品化(ETF)も進みますが、コアな方ほど“Web3.0”に括られることに抵抗があるかもしれません。日本においてはむしろ、“暗号資産の金融商品化”を契機とした規制・ライセンスの再定義の議論が年内に方向性が固まりますので、傍観者ではなく当事者として大いに注目すべきです。
──年初に発表した「デジタル証券(ST)マーケットアウトルック2025」ではST市場規模の大幅な拡大を予想し、あらたなトークンアセットへの期待感を示していました。改めて注目する領域を教えてください。
齊藤:トークン化対象のRWAとして、引き続き牽引役は不動産です。不動産STがREIT等と異なる商品性が根強い需要を喚起しているなか、2024年の国内不動産投資市場全体は4年ぶりに4兆円を突破し、今年も同ペースの予測です。販売チャネルである証券会社とその先の投資家の皆さんの成熟を背景に、“超大型不動産”のトークン化も期待されます。
加えて、一時的な停滞も招きつつ勝ち取った信託税制改正を背景に、対象RWA自体の拡張にも注目です。