──米国におけるビットコインの戦略的備蓄やデジタル資産のストックについて、率直なご意見をお聞かせください。
チャールズ・ホスキンソン(以下、ホスキンソン):一言でいえば、カオスな状況ですね。トランプ氏とは彼が大統領に就任する前、2024年10月のSALTカンファレンスで、政権移行チームの一員とあいました。その際に、彼が当選した場合、米国の暗号資産政策はどうなるのか、と聞いたところ、“クリプト・ツァー(暗号資産担当官)”を任命し、専門チームを立ち上げる予定だと説明されました。
実際その後、トランプ氏は「Bitcoin 2024」(DaveBailey主催)のカンファレンスに登壇し、『暗号資産への課税撤廃』『ロス・ウルブリヒト氏への恩赦』など、極めて踏み込んだ発言を相次いで行いました。『国家による暗号資産の備蓄』というアイデアも、この時点から浮上していたのです。
それから数ヵ月が経ち、今では本当に“クリプト・ツァー”が任命され、上下両院の合同ワーキンググループも設置されました。連邦政府という数兆ドル規模・数百万人規模の巨大機構を、本当に動かそうとしているのです。
なかでも、最も注目されているのは「米国政府が暗号資産を公式に保有する」という公約です。現実的には、大統領には連邦政府に対してBTCやADA、XRPを購入せよ、と命じる法的権限はありません。実際にできるのは、すでに保有している暗号資産を売却するなと指示することくらいです。
政府が暗号資産を手に入れるのは、多くの場合、民事没収(Civil Asset Forfeiture)によるものです。つまり、法執行機関が違法行為に関与した者から資産を押収する形で取得し、それを通常は市場で売却してきました。
しかし今回の大統領令では、その資産を“売らずに保有する”ことで、いわば“備蓄フェーズ”への第一歩を踏み出した形です。さらに、共和党のシンシア・ルミス上院議員が推進する法案には、米国政府が最大100万BTCを購入するという計画も含まれています。
もちろん、実際にその法案が委員会を通過し、成立するかは不透明です。とはいえ、現在の政権は暗号資産に対して極めて前向きな姿勢を示しているのは事実です。
実際、CoinbaseやKrakenそしてRippleに対するSECの訴訟が次々と取り下げられているのは、その象徴的な動きだと思います。さらには、バイデン政権下で敷かれた規制を巻き戻すようなルール改正も、水面下で進んでいます。それらが実際に法制化されるかどうかは、今後100~200日以内に明らかになるでしょう。
