──日本のWeb3.0領域の状況について、お二人はどのように感じていますか?
塩崎彰久(以下、塩崎):正直、とても成長したなと感じますね。たとえるなら、大学生から社会人への変化といったところでしょうか。
僕たちは2021年に初当選した同期ですが、最初に取り組んだプロジェクトがWeb3.0でした。当選後、翌年に平井さん(平井卓也衆議院議員)が突然「NFTプロジェクトチームを作るぞ!」と言い出して、霞ヶ関も当時「NFTってなんだ?」といった感じからスタートしたことを今でも覚えています(笑)。
あの当時はブロックチェーンの活用方法の理解から始まり、そこから論点を洗い出して整理して、国会議員のなかでもWeb3.0という言葉が普通に使われるようになって。その後は税制改正にも着手するようになり、自民党のデジタル社会推進本部と金融調査会でも取り扱うようになって、ついにはWeb3.0が国家戦略にもなりました。本当にこの4年で違うステージに来たなと感じます。
川崎ひでと(以下、川崎):特に政策として取り組んだのが大きかったよね。国家戦略に位置付けたことで、これまで「Web3.0って触れても大丈夫かな?」と疑心暗鬼になっていたプレイヤーが、自信を持って取り組めるようになった。これによって若い人を中心に機運が高まったなとものすごく実感します。
塩崎:その間、僕たちもさまざまな政策分野に携わり、僕でいえば厚生労働大臣政務官、川崎さんは総務大臣政務官を現在務めている。そうしたなかでもWeb3.0の分野に対する思い入れは強いです。普通だとベテランの大物議員たちがひしめきあっていて、1回生議員だと入る余地がないんですが、Web3.0は誰もやっていない完全なブルーオーシャンだったんですよね。それが今では業界が成長し、かかわる議員も増えて、世の中の興味関心も高まっている。感慨深いですね。
──日本のWeb3.0の状況を「大学生から社会人くらいの変化」と表現されていましたが、社会人のどのようなレベルにまで成長したと思いますか?
塩崎:一言でいえば、企業の課長補佐くらいでしょうか?
現在、暗号資産を資金決済法から金融商品取引法に移していくという、業界にとって非常に大きく、そしてステップアップにつながる動きがあります。これまでは若い方を中心に、あたらしいもの好きが集まって、リスクはありつつも楽しんでいるという世界が広がっていました。
そこから今度はあたらしいアセットクラスとして、透明性や投資家保護を図り、そして分離課税を認めていこうという形になっています。ですから、社会人になりこれからのキャリアをしっかりと考えていくレベルとして、課長補佐くらいかなと。ただ、もちろんまだまだ成長の余地はあります。
川崎:私たちが取り組み始めた当時は、DAOやWeb3.0関連事業を始めようとしても、信用がなくて銀行口座を開設することすらできなかった。でもこの数年で事業内容にWeb3.0と書いても銀行口座は開設できるし、出資も受けられる。Web3.0が世の中に認められる存在になったんだということを踏まえると、未成年から大人へ成長したといっても過言ではないのかなと感じます。未成年だと銀行口座は開設できないですからね。
塩崎:たしかに。Web3.0だけじゃ信頼されないから、「ほかのビジネスもしっかりやっています」といって、やっと銀行口座が開設できたんだよね。それがようやく独り立ちした感じだね。
