
──現在のキャリアに至るまでの経緯を教えてください。
マイケル・シャウロフ(以下、シャウロフ):7歳の頃に父からプログラミングを教わったことが最初のきっかけです。出身はイスラエルで、18歳で徴兵され軍に入隊し、そこでもサイバーセキュリティの任務に就いたので、実質的にそこでキャリアがスタートしたといえます。
2011年にはモバイルデバイス向けのセキュリティ企業を共同創業し、後にCheck Pointという大手セキュリティ企業に売却しました。Check Pointは、ファイアウォールやVPNといったセキュリティ技術を世界で初めて開発した企業で、現在では時価総額240億ドルを超えるグローバル企業です。
その後、2017年に韓国の暗号資産取引所が北朝鮮のラザルスグループによってハッキングされた事件の調査に関与する機会がありました。私たちはその調査のなかで、重要な発見を2つ得ました。
1つは、機関投資家が暗号資産を移動・管理するためのセキュリティが著しく不十分であったことです。Ledger Nanoのようなコールドウォレットは存在していましたが、日常的に業務として機関レベルで運用できるセキュリティソリューションはなく、多くの企業が自前で非プロフェッショナルな仕組みを構築していました。その結果、ハッキングのリスクが高まっていました。
もう1つは、暗号資産の本質的な価値はその“レール”にあるということです。つまり、インターネットのスピード感で価値を移動でき、柔軟かつプログラマブルな設計が可能な技術そのものが重要だと確信しました。
私たちは、金融機関や事業者向けにスピード・スケール・安全性を兼ね備えたトランザクション処理のインフラを提供することに対して大きなチャンスがあると考えました。そうした経験を経て、2016年には暗号資産業界へとかかわることになります。