──伊藤さんは、MBTIと呼ばれる性格診断テストが若年層を中心に流行していることをご存知でしたか?
伊藤羊一(以下、伊藤):はい。最近の学生たちは自己紹介をするたびに、必ず4つのアルファベットをいうようになっているなと気付いていました。私自身も10年以上前に、MBTI診断を受けた記憶があります。どのような結果が出たのかはよく覚えていませんが、「ああ、よくあたっているなあ」と思ったことは記憶に残っています。もちろん、ステレオタイプ的に理解されるリスクはありますが、人を細かくタイプにわけていくので、確かに説得力はあるなと感じます。
──少し前は、動物占いがよくあたるということで流行っていましたね。若い人の間でこうした診断が流行する背景には、何か理由があるのでしょうか。
伊藤:初対面の人と会話をする際、自分の個性や特性を1から言葉で説明するのは、実はなかなか大変です。若いうちはまだ、自分のことをうまく説明できるだけのトークスキルを身に付けていない場合も多く、それでいてあらたな出会いの場は多い。だからこそ、自分を言葉で語るのは面倒に感じるんですよね。共通の話題がみつからない時でも、こうした性格診断を使えば、コミュニケーションの導入コストを大きくさげることができます。だから、流行る理由はよくわかります。
私自身も若い頃、ストレングス・ファインダーという自己診断テストを受けたことがあります。チームのメンバーに自分の特徴を説明するのに役立ち、コミュニケーションがしやすくなったことを覚えています。
──なるほど。ちなみに、最近は採用活動でMBTIを導入しようとしている企業もあるようです。採用にMBTIのような自己診断テストを使うことについて、どうお考えですか。
伊藤:学歴と同じで、採用の効率化=コストカットを狙っているのだと思います。「このタイプの人ならうちの仕事に向いているだろう」と、特定の傾向を持つ人を集めるためのツールとして使われるのでしょうが、正直いって“ダサい”なと思います。人事担当者が「私は人を見抜く目がありません」といっているようなものではないですか。
私が以前所属していたLINEヤフー株式会社では、すでに求職者の学歴をみない方針になっていますよ。
自分と他人の違いを認識するのは大事。だが、人間はそんなにタイプにはおさまらない。
