━━Circleは悲願ともいえるIPOを実現しました。改めてこのIPOの意義と Circleにもたらす影響について教えてください。
榊原健太(以下、榊原):IPOの実現は、当社にとって非常に大きな節目であったと考えています。上場によって求められる透明性や頼性、そして長期的な責任をはたす姿勢を、改めて示すことができたのではないかと思います。
上場に伴い、より高いレベルでの透明性と説明責任が生じますが、それは規制当局、パートナー企業、そしてユーザーの皆様からの信頼を強化することにつながります。当社のビジネスは、そもそも頼性や透明性を重視しており、IPOはその理念と非常に親和性が高いと感じています。
さらに、今回のIPOは、ステーブルコイン事業者として米国で上場した初めての事例となりました。その意味でも我々の責任は大きいと受け止めています。ステーブルコインが今後、信頼される金融インフラとして普及していくためには、信頼性や透明性を備えた強固な組織であることが不可欠です。IPOは、その実現に向けた重要かつ不可なステップだったと考えています。
また、この上場はグローバルな意義を持つだけでなく、日本においても大きな意味を持つと感じています。
日本のパートナーや金融機関が求める水準の頼性や透明性、長期的な視点での安定性を示す上でも、このIPOは大きな価値があったと思います。
━━世界的にステーブルコインを取り巻く環境が変わりつつあります。今後のステーブルコインの未来について、考えをお聞かせください。
榊原:ステーブルコインの未来は非常に明るいと考えています。その理由はいくつかありますが、まず規制にもとづいた透明性の高いステーブルコインは、インターネット上で多様な価値の移転を支える重要な役割をはたすからです。
今はまだ、その基盤をえていくフェーズにあり、本当に始まったばかりだと感じています。これは1990年代のインターネットの発展と重ね合わせることができると思います。当時のインターネットはニッチな用途からスタートしましたが、やがて世界的なeコマースや生活インフラへと拡大していきました。
ステーブルコインも同様に、ニッチな領域から始まり、今まさにより大規模な社会的活用へと進む転換点に差しかかっているのではないかと考えています。
━━ステーブルコインの活用領域について、Circleが現在注目している領域を教えてください。
榊原:我々が最も注目しているのは、実際の金融分野における即効性のあるユースケースです。具体的には、グローバルな国際送金、大企業のトレジャリー運用をUSDCで管理する事例、さらには資本市場での活用です。
資本市場では透明性や効率性が重視されるため、決済(セトルメント)や取引の裏側においてステーブルコインが活用される可能性が高いとみています。
また、あたらしい領域としては「トークン化資産(Tokenized Assets)」との結び付きです。トークン化資産の裏付けとして、決済通貨としてのステーブルコインが大きな役割をはたすと考えています。これは世界的に大きな潮流となるでしょう。
日本市場に目を向けると、デジタルウォレットや2次元バーコード決済、スーパーアプリの進化に伴い、コマース分野における活用余地も広がっています。たとえばポイント経済とステーブルコインの親和性は非常に高く、ポイントからステーブルコイン、そして暗号資産へと発展する流れがみえてきています。そのため、日本にとっても大きなユースケースになると考えています。
