完全無人の店が教えてくれた“人に寄り添うデジタル化”とは

サマリ

1. 人手不足が自動車販売業を直撃──N.M.S.が選んだのは「無人販売」という解決策

少子化と人材不足が深刻化する中、自動車販売・整備業でも廃業が増加。ニッポンメンテナンスシステム（N.M.S.）は業界課題に対し、**無人でも車を販売できる仕組み「Mujikuru」**を開発。整備工場や小規模商店でも販売を可能にし、地域の経済活性化を狙う。

2. 完全無人ではなく“人が介入するポイント”を設計──AIと対面の最適な分担

Mujikuruでは、ロボットが店内案内・車の説明を担当し、タブレットには対話型AI「エマちゃん」を搭載。見積もり段階からは人間が対応するハイブリッド型とし、契約時の不安や疑問を解消。無人ゆえの防犯課題も、カメラ設置と運用設計でリスクを最小化している。

3. 無人販売の成功条件は“地域に受け入れられる空気づくり”

無人販売の課題は技術よりも「人の心理」。N.M.S.はミニ四駆教室や絵画コンテストなど、地域住民が自然に足を運ぶイベントを開催し、店舗を“いつもの場所”として認知してもらう取り組みを展開。顧客データを活用したアプリ開発も進め、運用・点検まで一体で支えるモデルを構築している。

スーパーやコンビニで無人化したレジスターをみることが多くなった。少子化が進む日本においてこの流れはもはや止めることはできない。

しかし、コンビニ店員の業務をみればわかるように、接客業の範囲は細かく多岐にわたる。はたして完全無人化店舗は実現するのだろうか。

コロナ禍を境に、無人レジスターは急速に普及した。最syと初は使い方がわからないと苦情が相次いでいた印象だが、気が付けば高齢者も気にすることなく、むしろ有人レジより優先して使われているようだ。

人間のようにロボットが店番をしているSF作品に古くから触れていた身としては、ついに時代が追い付いたと感慨深い。

都心では完全無人のコンビニや餃子販売店などをみかけるようにもなってきた。だが、無人販売店での窃盗という事件報道は跡を絶たない。

それなのに、なんと「自動車」という超高額商品の無人販売事業を始めた企業があらわれたのだ。なぜそのようなリスキーな選択に至ったのか。日本初の無人自動車販売店を開業した、ニッポンメンテナンスシステム株式会社（以下、N.M.S.）に取材を申し込んだ。

「自動車の無人販売を決断したのは、やはり人手不足が主な理由です。自動車産業にもこの問題は大きくのしかかってきており、実際に人手の問題で廃業するケースが増えています」

取材に対応してくださったのはN.M.S.の伊藤さんと、無人店舗があるN.M.S.東北支店の責任者渡邊さん。

伊藤さんによると、たとえば整備工場の廃業理由の5～6割が人手不足や後継者不足で廃業に追い込まれているそうだ。整備員をあらたに雇うにはそれだけコストが必要だが、整備は新車が売れなければ発生しない仕事だ。

それならば、整備工場が新車の販売から整備まで手掛けられれば、収益源を拡大し、人材獲得にコストをかけられる。

これら業界全体の課題に対して業態問わず簡単に自動車販売ができる仕組みを目指したN.M.S.は、無人販売システムの開発に着目した。

サービスが始まったのは2023年9月のこと。現在は宮城県の直営店でトライアルの段階だ。