サマリ
1. DAT戦略ブームに陰り──株価は市況依存で急落
2025年上半期に増加したDAT企業は、BTC価格上昇期待で株価が急騰したが、直近の暗号資産下落局面ではその脆弱性が露呈。代表例のメタプラネットは株価がピーク比79%下落、mNAVは0.91倍へと低下し、保有BTC以下の評価となった。
2. 市況と規制の変化に強く影響される「綱渡り」戦略
DAT戦略は暗号資産価格に依存しすぎる構造ゆえ、市況悪化によって企業価値が急落。さらに、JPXの監査義務化検討や、暗号資産の金商法移行など規制強化が進む見通しで、戦略の見直しを迫られている。
3. BTC担保ローンや自社株買いも「焼け石に水」になる可能性
メタプラネットは最大5億ドルのBTC担保融資枠を確保し、自社株買いを進める計画だが、BTC価格下落局面では効果が限定的。価格がさらに下落した場合、追加担保(マージンコール)や資金繰り悪化のリスクも高まる。
現状では市況や規制動向を加味し見直しが迫られるフェーズに突入
ビットコイン相場 10月の振り返りと今後の相場展望
近年、成功事例などを踏まえて世界的にビットコインなどの暗号資産をバランスシートに組み込む「デジタル資産トレジャリー(Digital Asset Tr easur y、以下DAT)企業」が増加している。2025年に入るとその流れは一段と加速し、DAT戦略は企業価値向上の手法として強い関心を集めた。しかし、直近では暗号資産価格が軟調に推移していることにより、改めてそのリスクが浮き彫りとなりつつある。
2025年上半期、DAT戦略の採用を発表した上場企業の株価は大幅に上昇した。これは先述した成功事例──米国のStrategyや日本のメタプラネットなどにみられた株価上昇の再来を狙い、個人投資家などが殺到したことによる現象だった。
また、2025年は前年の半減期やトランプ大統領の就任等によりビットコインの価格上昇に対する期待が膨らんでいたことも大きい。まさに、既存事業が伸び悩み財務基盤の弱い企業にとって、DAT戦略は起死回生を狙う選択肢として位置付けられた。
暗号資産が持つ将来性や特性を活かして企業価値の上昇を狙うことがDAT戦略の本質ではあるが、その一方で、これはリスクとリターンの絶妙なバランスの上に成り立つ「綱渡り」ともいえる戦略だ。特に価格下落局面においてどのような戦略を展開するかが重要となるなか、記事執筆時点ではビットコインを始めとする暗号資産において冴えない状況が続き、多くのDAT企業は状況に応じた戦略の再構築を迫られつつある。
直近の価格動向からは、DAT企業が直面する厳しい現実が浮かび上がる。代表的なDAT企業であるメタプラネットの株価は、6月中旬のピークから記事執筆時点を比較して約79%下落。企業の株式市場での全体の価値と、その企業が保有するビットコインの価値を指標化した「mNAV」が10月に初めて1.0倍を切り、記事執筆時点でも0.91倍にまで低下している。
つまり、メタプラネット社の戦略や将来性を踏まえ、投資家らは同社が保有するビットコインの価値よりも、同社の株の価値を低く評価していることを意味する。ほかの国内上場DAT企業についても株価動向は軟調で、海外では上場維持のために保有する暗号資産を売却した例もある。
暗号資産はボラティリティが高いため、一時的に大きな含み益を有することがあるが、同時に大きな損失を抱えるリスクも孕んでいる。
つまり自社の戦略に関係なく、ほかの金融商品と比較して市況に大きく左右されやすいこうした特徴に加え、11月に入ってからは東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)が、DAT企業に対する監査の義務化を始めとするルール厳格化を検討しているという報道もあった。これも投資家心理を弱気にさせている要因といえる。
日本においては暗号資産の規制の枠組みを金商法へと移行させることが議論されており、2026年以降にはDAT企業に限らず、暗号資産業界そのものに再び大転換が訪れる可能性が高まっている。そのため、DAT戦略の先行きの不透明感が増せば、ますます今後の方針転換を余儀なくされることが想定される。
BTCを担保にした借入施策の行方
メタプラネットは10月末、自社株買いとあわせて、保有するビットコインを担保とした最大5億ドルの融資枠契約を締結したと発表した。今後、ビットコインの購入に加えて自社株買いも進めていくことになるが、暗号資産市場の動向次第では再び株価が下落することが考えられる。そのため、自社株買いは“焼け石に水”となる可能性も捨てきれず、本質的な改善にはつながらないことを考慮する必要があるかもしれない。