サマリ
1.ブロックチェーンが「記録の制約」を壊し、貨幣は“省略の道具”から再設計フェーズへ
これまで貨幣は、取引の詳細を省略して合意形成を高速化するための仕組みだった。しかしブロックチェーンにより、低コストで正確な台帳を残しながら価値移動を高速化できるようになり、2026年は「お金が再誕する」転換点に入った。
2.“未来のお金”は一枚岩ではなく、CBDC・預金トークン・ステーブルコインは役割分担で使い分けが進む
発行主体と設計思想が異なる3種は、国内インフラ(CBDC)、安全性と企業用途(預金トークン)、国境を越える自由度とWeb3.0親和性(ステーブルコイン)という形で向き不向きが分かれる。制度整備の進展とともに「目的別の最適解」として共存していく。
3.価値移動の進化は「稼ぎ方・労働・価値尺度」まで書き換える
ステーキングやレンディング、DeFi、RWAなどは“雇用や金融機関を介さず、プロトコルに参加して報酬を得る”というあたらしい稼ぎ方を提示する。さらにAIウォレット/AIレイバーが進めば、運用や契約が自律化し、将来的には貨幣中心の物差しが揺らぎ、物語・感情・信用といった個人ベースの価値(例:ミームコインや「一物多価」)が前面に出る社会が展望される。
価値を移動する手段としておよそ6,000年間社会に君臨した貨幣。その最大の発明は、証券のような記名式ではなく無記名で譲渡可能としたことだろう。本来取引台帳は、詳細でなければならない。
しかし、おおざっぱな売買記録を貨幣の数で把握するシステムに換骨奪胎したからこそ、貨幣は誰もが使用できるようになり、取引規模も拡大した。だが「ブロックチェーン」の登場で、コストをかけることなくすべての記録を正確に保管した取引台帳を残すことが可能となった。それならば、妥協の産物で誕生した貨幣はその形を変えていくべきではないだろうか。
お金は再誕する 世界は価値移動の新フェーズへ
AからBに価値を移動させる、すなわち売買契約の本質について考えたことはあるだろうか。Aが持っている商品をBに譲る場合、Bが貨幣をAにわたすことで契約が成立する。
ところで、なぜ契約において貨幣をわたさなければならないのだろう。それは貨幣が価値の尺度として、「なんとなくの社会的合意」を得ているからである。Aが10,000円の価値があるとみなした商品は、Bにとっては12,000円の価値があるかもしれない。だが貨幣を介在させると、本来交渉を重ねて価格を決める時間を省き、一定の合意に至ることができる。
このことからわかるように、貨幣は世の中に存在する物の正確な価値を計測しているわけではない。時給1,500円の仕事では、懸命に働いた人も手を抜いた人も等しく1,500円と評価される。また、正当に得た10,000円も盗まれた10,000円も、店では10,000円として使用可能だ。貨幣は合意形成の過程を省略することで、取引速度を高めるツールとして優れていた。
ところが、ブロックチェーンとスマートコントラクトは、貨幣が省略してきた情報まで記録しながら、より速い価値移動を実現しようとしている。それは人類が未だ経験したことのない手段だ。その先にどのような未来が生まれるのか。2026年、お金は“再誕”のフェーズに突入した。
日本の消費額におけるキャッシュレス決算比率
出所:経済産業省経産省は2025年までを目標に国内のキャッシュレス決済比率を40%にしようとしていた。すでに40%超の取引がキャッシュレスに移行している。
日本の1円硬貨製造枚数
出所:造幣局1円硬貨の製造枚数は1990年の28億枚をピークに減少し続け今は100万枚(100万円)程度しか作られていない。貨幣需要は減少している。