サマリ
1.ステーブルコインが「抜け道」となった結果、ブラジルは外為・税制で本格規制へ
ブラジルではインフレや送金需要を背景にUSDTを中心としたステーブルコイン利用が急拡大し、2025年前半の暗号資産取引の約3分の2を占めた。一方で、関税回避や裏送金などの不正が横行し、年間300億ドル超の税収損失が生じていると政府は推計。これを受け、暗号資産取引を外国為替取引として扱い、IOF(金融取引税)の課税対象に組み込む方針へ転換した。
2.2026年2月施行の新規制で、越境取引・事業者に厳格な枠組みを導入
新制度では、ステーブルコインを含む暗号資産の購入・送金・交換を外為取引と位置づけ、送金上限(1回10万ドル相当)や認可事業者以外との取引制限を導入。事業者には新ライセンス(SPSAV)取得、AML/CFT体制、高額な自己資本要件が求められ、海外事業者にも現地法人設立を義務化。利益課税は一律17.5%に統一され、CARFに基づく国際的な情報共有も強化される。
3.規制強化と同時に「国家戦略」としてのデジタル資産活用も模索
IOF適用で越境用途の暗号資産は抑制される一方、規制明確化により市場の透明性と信頼性は向上し、長期投資家や機関投資家の参入が見込まれる。中央銀行はCBDC「Drex」の試験を中断し、民間主導のトークン化・ステーブルコインに軸足を移行。さらに、国家準備金の一部にビットコインを組み入れる構想も検討されており、ブラジルは規制強化とデジタル資産戦略を同時に進める「モデルケース」になりつつある。
ステーブルコインの普及が加速
中南米地域では長引くインフレや政情不安などの要因から価値保全手段として米ドル建てステーブルコインの普及が進んでいる。
この地域では低コストかつ迅速に利用できる国際送金の手段としても暗号資産の需要が高い。
なかでもブラジルでは、2024~25年に金融取引税(以下、IOF)の税率が引き上げられたことでステーブルコインの利用が拡大しており、中南米地域最大の年間取引額を記録している。
ブラジルにおける暗号資産取引額は2025年前半に2,270億レアル(約6.6兆円)に達し、このうち3分の2は米ドル連動型ステーブルコイン「USDT」の取引によるものだった。
さらにブラジル中央銀行(以下、BCB)は「クロスボーダー取引量の約90%をステーブルコインが占めている」と指摘。
連邦警察の関係者によると、機械や部材の輸入の際に代金の20%のみを申告し、残額をUSDTで支払うことで関税を回避する事例もみられたという。
こうしたステーブルコインを利用した「裏送金」により、ブラジル政府は年間300億ドル(約4.6兆円)以上の税収が失われていると推計している。
