サマリ
1. キャリアは「駆け上がる」よりも「長く楽しむ」ものへ
申真衣氏は、出産と書籍『LIFE SHIFT』との出会いをきっかけに、短距離走型のキャリアから、学び直しを前提とした長期的・多段階のキャリア観へと転換した。昇進スピードの速い外資系金融での成功を否定するのではなく、80歳まで働く人生を見据え、「変化を取り入れながら続けられるキャリア」の方が豊かだと判断し、起業という選択に至っている。
2. 学び続ける姿勢が、分野横断のしなやかさを生む
金融、起業、エンタメ、モデル、社外取締役とキャリアは多岐にわたるが、その根底にあるのは「好奇心」と「学びへの柔軟性」である。一貫性よりも振り幅を重視し、自分で仕事をつくることで可能性を広げてきた。GENDAの成長過程でも、人や組織との関わりから学び続ける姿勢を重視しており、固定化しない思考こそが変化の時代を生き抜く力になっている。
3. 正解のない時代の意思決定軸は「ワクワク」と「成長」
大切にしている判断基準は、合理性だけでなく「ワクワクするか」「成長できそうか」という感覚的な軸である。10年単位で自分がどうありたいかを言語化し、年収などの定量目標よりも、学び続けている状態そのものを重視する価値観へとシフトしている。急がず、学びを重ねる人ほど遠くへ行ける——その姿勢が、キャリア全体を貫いている。

──外資系金融から起業へと大きく舵を切られましたが、当時どのような心境の変化があったのでしょうか?
申 真衣(以下、申):私は2018年に起業したのですが、その少し前の2016年に長女を出産しました。産休中に読んだ『LIFE SHIFT』という本が、すごく大きな影響を与えてくれたんです。
人生100年時代になると、それまでの「学ぶ・働く・引退する」という3ステージではなく、学び直しを含めたマルチステージの人生になる、という内容でした。
寿命が延びていること自体は理解していましたが、「100年」と突きつけられたことで、考え方が変わりました。
外資系金融は昇進のスピードが早く、40代半ばで引退する人も多い業界です。でも、80歳くらいまで働きたいと考えると、駆け上がるキャリアよりも、長く楽しめるキャリアの方が人生として豊かなんじゃないか、と私は思うようになりました。金融の仕事も、ゴールドマン・サックスという会社も大好きでした。ただ、大きな変化を自分のキャリアに入れた方が、より長く楽しめると思ったことがきっかけです。
──金融業界で働かれている時も激務だったと思いますが、読書の時間は意識的に取られていたのでしょうか?
申:読書は子どもの頃から好きで、特別に「時間を作ろう」と意識していたというより、自然と生活のなかにありました。仕事から自分をオフにするための時間、という感覚に近いです。
『LIFE SHIFT』を読んだのは産休中でしたが、子供が寝た後にお茶を入れて、本を読む時間が、自分を落ち着かせる大切な習慣になっていました。
──金融工学のキャリアを経てGENDAを創業されましたが、金融とエンタメに一貫性を感じる部分はありますか?
申:正直にいうと、そこまで強い一貫性があるとは思っていません。ゴールドマン・サックスに11年勤めた後、キャリアを大きく変えようと考えた時、最初は転職も選択肢にありました。ただ、転職だとどうしてもこれまでのキャリアに沿った仕事になりがちです。もし大きく振り幅を持たせるなら、誰かが作った仕事を選ぶより、自分で仕事を作った方がいい。そう考えたことが、起業につながりました。
──反対に、明確に違うと感じた点はありますか?
申:金融は基本的に在庫を持たなックスはBtoBで、お客様との距離が近く、丁寧に話を聞きながら商品を作っていく。一方、エンタメはBtoCの要素が強く、「これが当たるはずだ」と読みに近い判断をする場面も多く、在庫リスクも取ります。金融とエンタメの違いというより、BtoBとBtoCの違いとして強く感じました。