第2回 貨幣史から学ぶ暗号資産 —— DAT戦略の罠

2026/01/30 10:00
Iolite 編集部
文:Shinichi Arima
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第2回 貨幣史から学ぶ暗号資産 —— DAT戦略の罠

株価上昇の裏に潜む脆さ DATと保有戦略の行方

サマリ

1. DAT戦略は株価を押し上げる一方で、「保有するだけ」の脆さを内包する

DAT(Digital Asset Treasury)企業は、暗号資産を財務に組み込むことで株価と企業価値を押し上げる構造を持つ。しかし、価格上昇を前提に暗号資産を「ただ保有し続ける」戦略は、相場環境が変わった瞬間に脆弱性を露呈する。歴史的にも、価値上昇を期待して資源を溜め込む行為は繰り返されてきたが、持続的成功に結びついた例は少ない。

2. スペイン帝国とスウェーデンの没落が示す「資源依存経済」の限界

ポトシ銀山に支えられたスペイン帝国や、銅を財務基盤に据えたスウェーデンはいずれも、資源そのものに価値があると誤認し、国内産業やあらたな付加価値創出を怠った結果、急速に衰退した。金属に価値が生まれるのは「集団幻想」か「新事業への転化」がある場合に限られ、資源依存はパラダイムシフトに極めて弱い構造である。

3. DAT企業に問われるのは「暗号資産をどう使うか」という実業戦略

ビットコインなどの暗号資産は確かに希少性を持つが、それを貯め込むだけでは国家や企業の持続的成長は保証されない。DAT企業を評価する際に重要なのは、保有する暗号資産を用いてどのような事業・価値創出を構想しているかという点である。歴史が示す通り、資源の仕手化や保有至上主義は必ず反動を招く。DAT戦略は「保有」ではなく「活用」と一体でなければならない。


今回の紙幣:『フェリペ3世 8マラベディ銅貨』

8-maravedí copper coin image1
サイズ:不定 素材:銅 発行国:スペイン帝国 発行期間:1598~1621年

暗号資産を財務資産に組み込み運用する戦略を企業のコア資産として採用するDAT(Digital Asset Treasury)企業が、暗号資産業界で話題となって久しい。

暗号資産の価格上昇を見込んで財務戦略に取り入れることで企業価値を高めるポテンシャルがあると注目され、実際にこれらの企業の株価は大きく上昇している。

財務戦略として有用と判断した一部のDAT企業は、暗号資産の追加購入を進める動きもみせている。

DAT企業のなかには、「暗号資産への投資が許されていない機関投資家に対し、自社株を購入してもらうことで、実質的に暗号資産への投資機会を提供しているのでは」と噂されるところもある。

株を購入してもらえれば暗号資産購入資金を確保でき、株価の上昇も期待できる。

さらに、購入した暗号資産の価格が上昇すれば企業の保有資産が膨らみ、株価は一段と上昇する。上昇相場が保たれれば、DAT企業の時価総額と株価が上昇するという構図だ。

しかし「ただ保有し続ける」という戦略が持続的にどのような結果を生むのか、疑念は常につきまとう。

人類が利息を発明したのはメソポタミア文明の頃とされるが、それ以降、利殖の試みは繰り返されてきた。当然、価値の上昇が見込める商材を保有し続ける戦略も歴史的に何度も試されてきた。

短期間で利益を狙う大規模売買──いわゆる“仕手”行為は現在でも嫌われる傾向にあるが、今回は16世紀ヨーロッパで起きた、とある資源独占騒動をもとに、DAT企業の問題点を分析したい。

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