サマリ
1.既存車両に“後付け”する低コスト自動運転というあらたなアプローチ
自動運転車をあらたに開発するのではなく、既存の車両にシステムを後付けすることで、低価格かつ現実的な自動運転の実装を目指している。これにより導入ハードルをさげ、自治体などでの実用化・収益化の可能性を広げている。
2.AIに依存しない仕組みで“低速モビリティ”に特化
衛星データと地図情報を活用し、AIによるリアルタイム判断に頼らない構造を採用している。高速走行は難しいものの、低コストで安定した運用が可能となり、交通弱者の移動手段として実用性の高いソリューションとなっている。
3.技術ではなく“移動課題の解決”が本質
本取り組みの本質は自動運転技術そのものではなく、地方の交通不足や高齢者の移動課題を解決する点にある。地域住民との協力を前提に、現実的な課題解決を優先することで、持続可能なモビリティの形を提示している。
未来の自動車の筆頭とされる自動運転車。日本では、度合いに応じてレベル1~5の段階が設定されている。現在、国内で販売されている自動運転車はレベル2。高速道路などで一部手放し運転は可能だが、完全自動運転までは遠い。
SFドラマ『ナイトライダー』に登場した自律型自動車「ナイト2000」は、自ら考え、時に自ら走り出すスーパーカーだ。搭載されたAI「K.I.T.T.」は、もともとスーパーコンピュータに実装されていたが、ナイト2000に移植され、このスーパーカーを動かすことになったという設定である。すでに車を所有している人にとって、“ナイト2000”のように愛車へ後付けできる自動運転システムは魅力的だ。
「弊社は創業78年。もともとはバス向けラジオなどを扱い、カーオーディオやカーナビの販売を主力とする商社でした」
今回話をうかがったのは、東海クラリオン株式会社の代表取締役の安部源太郎氏。同社は、後付け自動運転システムを開発している。同社が事業転換を目指した背景には、事業環境の変化があったという。
「若者の車離れやスマートフォンの普及により、カーナビ需要がどんどん落ちていきました。そこに2011年の震災です。私はちょうどその頃に社長に就任しましたが、このまま縮小傾向の業界のみをみていても厳しいと判断し、自社企画製品を海外製造する業態転換を図りました。トラック向けの事故防止検知カメラも、弊社が企画した製品です」
開発に自信を付けてきたある日、タイの大学発ベンチャー企業からドライブレコーダーを借りたいという連絡が入った。そのベンチャー企業は、衛星から道路状況を監視し、自動運転技術に活用するというアイデアを持っていた。面白いと感じた安部氏は、申し出を受けそのまま提携。内閣府の実証実験に応募した。その自動運転技術最大の特長は、後乗せで自動運転化できることだった。
「大々的に発表したのは2022年6月です。どうやってPRしようかと考えた結果、公共交通機関が減少している地方自治体に向け『低価格の自動運転を作っています』と展示会に出品しました。するといくつか問い合わせをいただき、2023年からは実証実験という形で町中を走らせられるようになりました」
現在、実証実験は北は茨城から南は沖縄まで、全国13ヵ所で実施されている。実証実験に使用している車はゴルフカートをベースに、システムを後乗せして作成。イベント会場や、観光地、交通量の少ない島しょ部などで、交通弱者を助ける手段としてトラブルなく走行できるかデータを集めた。