Web3.0

コインチェックが創り出す未来を見据えたデジタル経済圏 │ 天羽健介インタビュー

2023/05/29Iolite 編集部
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コインチェックが創り出す未来を見据えたデジタル経済圏 │ 天羽健介インタビュー

コミュニティ構築はこれからのWeb3.0ビジネスに不可欠

暗号資産交換業者の一員としてビジネス構造を伝えていくことが重要

——天羽さんは、2023年の暗号資産及びWeb3.0領域の現状をどのようにみており、今後どのような動きになっていくと考えていますか?

天羽健介(以下、天羽):私はWeb3.0を「暗号資産やNFTなどトークンホルダーコミュニティを巻き込んだ共創」と捉えています。

NFTのユーティリティとしてコミュニティへのアクセス権が主流になってきており、コミュニティを創っていくことが不可避であることに感度の高い人は気付き始めていますが、コミュニティ運営の知見はまだ確立されていません。先に飛び込んで知見をためることが重要です。

NIKEやスターバックスがNFTを使ったWeb3.0コミュニティ形成を始めたように、2023年はマーケティング観点で多くの大手企業がNFTを使ったメンバーシッププログラムを市場に投入してくるでしょう。

また、著名人のファンクラブも、ファンクラブ2.0として、既存のサブスク型ファンクラブからNFTを使ったファンクラブに徐々に移行・融合していくと思われます。これに紐付いて、おそらく著名人のライブやイベント等のチケットもNFTになっていくはずです。

ブロックチェーンの特徴の1つであるトレーサビリティ(追跡可能性)はエンターテインメント業界固有の課題解決の一助となるのではないでしょうか。Web3.0とAIも交差し合流していくと思 われます。AI周辺で知的財産権の侵害に関する線引きの論点が整理されれば、事業者の活用が促進され大きく普及が進むでしょう。

Web3.0とAIの合流地点がメタバースです。人は、職場や家族、友人や恋人などそれぞれのコミュニティでみせる自分自身、人格は少しずつ異なるものです。現実世界、メタバースを問わず、マルチバースでマルチ人格を操る時代が訪れるでしょう。

現実世界とメタバースの違いの1つに、外見から解放されることがあります。外見から解放された時に、自分は何者なのか、何がしたいのかをこれまで以上に考える機会が訪れるのは必定だと思います。

——今後、コインチェックとしてはどのようなポイントを重要視して事業を進めていくのか。また現在進めているNFT・メタバース事業ではどういったところに注力していくのかお聞かせください。

天羽:コインチェックは暗号資産取引所事業をコアに、NFT事業、メタバース事業の3つの事業を展開しています。

日本初のIEOも、暗号資産取引所初のNFT取引所も、マルチバースにわたってコミュニティを運営するメタバース事業も、これまでコインチェックが実現してきた事業はすべて一次情報を収集して飛び込み、もがきながら解像度をあげ、軌道修正しながら創ってきたものです。

スマートコントラクトを使った領域のトレンドはDeFiやNFTから、DIDやGameFiなどに移っていくと思われ、私たちも追いかけています。重要なことは、近視眼的になりすぎず、少し先のWeb3.0時代を見据えてトークンエコノミーの骨組みを創り、Web3.0エコシステムを形成することだと考えています。

この市場はとてつもなく速いスピードで進行するので、思うより早く流れが来るとみています。

Web3.0エコシステムを創る第一歩とし て、2023年5月に独自NFT「OASIS COMM UNITY PASS NFT」を発行します。独自NFTの発行はこれまで取引所プラットフォーマーとしてやってきた私たちの事業の延長線上にはないもので、トークンホルダーを巻き込んだコミュニティビジネスであるWeb3.0ビジネスに取り組むことの意思表示です。

意思決定に十分な材料がないビジネスだからこそ、Web3.0領域での「戦い方」を伝えていくのも自らが担う重要な役割。

——日本がWeb3.0領域で世界をリードする上で必要なこと、また天羽さんだからこそ業界の発展に寄与できると考えるポイントをお聞かせください。

天羽:国内においては、2023年3月24日に暗号資産交換業者を対象として発表された事務ガイドラインの改正で、暗号資産とNFTの境目をこれまでよりも明瞭にしたことが大きなポイントになったとみています。

今回の改正では、グローバル動向や既存のルールを大局的に捉えて、あえてリスクをとって個数や数量が明示されました。この改正で事業者の参入促進は進むと思われますし、事業者の参入が増えれば利用者にとって良質な商品サービスの選択肢が増え、良いスパイラルを生みます。

自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチームが4月6日に公開したweb3ホワイトペーパーも必読です。縛るためのルールではなく、日本が世界で戦うための環境整備がなされようとしており、本気で国策として産業を育成しようとしていると感じます。

民間事業者として伝えていくべきこともたくさんあると思っています。私はこの数年間、新規通貨の取り扱いやIEO、NFT、メタバースなど複数の事業を社内で立ち上げてきました。Web3.0領域の市場はおしなべて変化のスピードが速い。

需要があることが十分に確認できてから参入するのでは遅く、先んじて準備をして構えておかないと波に乗ることができない。来たと思ったら次の瞬間には通り過ぎているイメージです。とはいえ、意思決定に十分な材料があ るかというとそれはない。

たとえば、コインチェックがNFT取引所事業への参入を決定した時、世界のNFT市場規模は300億円でした。そのたった1年後には5兆円となり100倍以上に。意思決定時に今から100倍以上になりますと説明しても誰も信じられないのも無理はありません。

では、どうすればいいのか。Web3.0界隈の市場が「そういう戦い方をしないと勝てない」という構造であることを意思決定者に理解をしてもらうように努めたり、決定ルールを必要に応じて見直す必要があります。それを伝 えていくのも私にできることで、私の役割だと思っています。


Profile

◉天羽 健介
大学卒業後、商社を経て2007年株式会社リクルート入社。複数の新規事業開発を経験後、2018年コインチェック株式会社入社。主に新規事業開発や暗号資産の新規取扱、業界団体などとの渉外を担当する部門を統括。2020年より執行役員として日本の暗号資産交換業者初のNFTマーケットプレイスや日本初のIEOなどの新規事業を創出。2022年6月に常務執行役員に就任。当社におけるWeb3領域の事業責任者としてNFT事業、メタバース事業などをリードする。2023年4月より常務執行役員NFT・メタバース事業本部長。日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)NFT部会長。著書に『NFTの教科書』(朝日新聞出版)、『ノンファンジブルミー』(同)


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