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「NEXT SNS」大手企業がこぞって目指すスーパーアプリ化の未来

2023/05/29Iolite 編集部
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「NEXT SNS」大手企業がこぞって目指すスーパーアプリ化の未来

Web3.0のマスアダプションは洗練されたスーパーアプリの先にあるのかもしれない

WeChatから始まったスーパーアプリ化の流れは大きなトレンドとなった。AIに注目が集まる今、スーパーアプリはダークホースだ。Web3.0のマスアダプションは洗練されたスーパーアプリの先にあるのかもしれない。

スーパーアプリ化を表明していないアプリにも
可能性を秘めた存在が多々

以前より、Web3.0領域に内包されるNFTやメタバース、暗号資産においてどのように「マスアダプショ ン」を達成するかどうかが課題とされていた。

米国の社会学者Everett M. Rogers氏が提唱した普及モデルが指す、イノベーターやアーリーアダプターから、いかにしてアーリーマジョリティへのキャズムを越えるか。2023年という節目に入り、その様相が一層強まっている。

Dappraderの調査によると、2021年から2022年の間に世界のNFT取引高は251億ドルから247億ドルへと減少した。一見するとNFTは、コロナ禍以降の世界的な金融緩和で投資マネーが溢れたことによって咲いた徒花のようにもみえるが、取引量が大幅に増加したこともわかっている。

2021年に5,860万回であったNFTの取引量は、2022年に1億100万回と増加しているのだ。この数字からは、今までの投機的な目線でのNFTの購入から、実際に利活用され始め、ユーティリ ティ性を価値基準としてNFTが求められるフェーズになりつつあることを暗に示している。

また規制に関連して、日本と海外では大きなギャップがみられつつある。代表的な例としては、米国における「NBA Top Shot」の有価証券問題があげられる。

NBA Top Shotは、100万人以上のユーザーが利用しているトレーディングカードのデジタルプラットフォーム。SECは同NFTを有価証券であるとみなしたが、日本ではそのような事案は出てきていない。

これは、日本が世界に先駆けて暗号資産規制を強化した証左であるともいえる。裏を返せば日本国内において、ガイドラインを守ったNFTの活用はグレーなものではなく認められたものであるということだ。

これら次世代のテクノロジーが実生活に根付いていく過程で、切っても切れない存在がウォレット。カストディアルであるかそうでないかはさておき、次の時代の勝者はウォレット市場を制した者ともいわれ、基本的なKYCを利用開始時にすでに完了させているアプリケーションにウォレットが連携することで、SNSまたはアプリケーションの利用者数≒独自ウォレットの保有者という構図が生まれる。

Web2.0時代、SNSで事業を拡大した強者は、次のビジネスチャンスがここにあるとみて動きを詰めている状況だ。つまり、2023年は多機能型のNEXT SNS(スーパーアプリ化)が出現する可能性が極めて高い年であるといえるだろう。

本特集では、既存のSNSがスーパーアプリ化を目指す理由を、スーパーアプリが生まれた歴史や未来予測から紐解き、それを踏まえたアプリケーションの今後の展開や有益な活用方法を提示する。

群雄割拠の多機能型アプリケーションの領域

SNSのスーパーアプリ化の流れは、中国のTencent(テンセント)社が提供する「WeChat」が始まりとされている。2011年1月、「WeChat」リリース時は、メッセンジャーとしての機能を主とするアプリケーションだった。

その後2013年8月にQR・バーコード決済サービス「WeChat Pay」を開始。2020年3月には「健康ID」と呼ばれる機能を実装し、新型コロナウイルスの流行に伴い、交通機関を利用するユーザーの健康状況のチェックに用いられたほか、感染者を特定できた場合には過去に感染者と 接触した者へ警告する機能が備わっており、さまざまなところで活用された実績もある。

下図には、すでにスーパーアプリ化を進めるサービスとスーパーアプリ化を目指す事業を掲載。一度は目にしたことがある企業が名を連ねており、今後スーパーアプリ化に向けて市場競争が激化することも予想される。

国外では、2022年にゲームチャットアプリとして知られるDiscord(ディスコード)が、新規ユーザー獲得に向けプラットフォーム内でのミニゲーム提供やYouTubeのシェア視聴アプリの提供を始め、月間アクティブユー ザー数が1億5,000万人にまで達した。

Discordは複数のBotを活用してコミュニティを構築できる点、「role(ロール)」という機能を活用してコミュニティ内の役割分担を明確にし、より円滑な組織運営を実現できる点など、Web3.0関連のプロジェクトにマッチした機能があるところもアクティブユーザーを伸ばした要因である。

決済機能等を導入し本格的にスーパーアプリとしての展開を進めると、シェアを加速度的に広げる可能性を秘めている。

国内に目を向けると、2013年にフリマアプリとしてサービスを開始したメルカリも注目の存在だ。2019年2月には、メルカリの完全子会社であるメルペイが非接触決済サービ スを開始し、2023年3月に完全子会社であるメルコインがメルカリ内の売上金や残高、ポイント等でビットコインを1円から購入できる仕組みを提供している。

サービスリリース後、わずか2週間で10万口座開設を達成。国内の暗号資産取引口座数は約640万口座、直 近1年間の月間口座開設数は6万口座とされるなか、メルコインが達成した2週間で10万口座開設という実績は、基本的なKYCが完了しているアプリケーションからの新規ウォレット開設が、いかに相性の良いものであるかを証明している。

Twitterがスーパーアプリ化を目指す

先にあげたアプリ「WeChat」について、スペースX、テスラ、X Corp.(旧:Twitter)のCEOを務めているイーロン・マスク氏は「WeChatは、銀行、ライドシェア、ビデオチャット、タクシーの呼び出し、医療関連といった機能がついた中国のアプリで、Twitter、PayPal、その他いろいろなものを1つにまとめた。本当にすばらしいアプリで、中国以外ではこのようなものはない」と絶賛している。

昨年10月、Twitterの買収が成立する3週間前には、「Twitterを買うことは、X、すなわち万能アプリ『everything app X』を作るための加速装置だ」とツイート。

そしてTwitterを買収後、規制当局に金融サービス関連のライセンスを申請。申請書類のなかには決済サービスに関する内容が盛り込まれていた。マスク氏のいう万能アプリは、いわずもがなスーパーアプリのことだ。

彼はTwitterの従業員ミーティングにおいて、「ユーザー数10億人の目標を達成するには、WeChatやTikTokのようになる必要がある」と述べ、ある時には「あらゆる機能を搭載したアプリはWeChatを参考にすることもあるだろう」とも口にしている。

これらの発言からも、WeChatが搭載するチャット、決済、ライドシェアのほか、音楽が聴けて、ゲームができるなどの機能も将来的に実装される可能性がある。

事実、マスク氏は2022年11月にTwitterSpacesでの広告クライアントの会合で、決済市場に参入する計画を詳しく説明。同社の製品管理ディレクターであるEsther Crawford氏が、現在支払い機能のインフラ整備に取り組んでおり、Twitterのユーザー同士が送金しあったり、残高をアカウントと紐付けた銀行口座に移せるようにしたりといった計画を進めていると表明した。

マスク氏は決済大手の現PayPalにおける初期サービス、「X.com」を共同設立し、決済・金融サービスについては豊富な経験と知見を持っている。さらに、過去には同氏がCEOを務めるテスラにて、ビットコイン決済を導入する意向を示したこともあり、暗号資産に関する関心度が高いこともうかがえる。

「SNS×ウォレット」をマスク氏はどのように実現するのか注目が集まる。

Twitterである必要性があるのか

一方で、Twitterのスーパーアプリ化については必要性に疑問符が付く部分もあり、一度今後の展開について予測して考察してみたい。

当然のことながら、Twitterを運営するXCorp.のみがスーパーアプリ化を目指しているわけではない。既存のスーパーアプリもシェア拡大を狙う動きが予想され、市場競争は激化することだろう。

決済、権利付きNFTの活用、売買・譲渡のほか、さまざまなサービス展開の過程で行われるインセンティブ付きのマーケティングをいかに活用していくのかについて、ユーザーから考えたい。

ここでは、Twitterとメルカリを例にあげる。この2つをあげるのは、考察する上で馴染みのあるアプリケーションの方が想像しやすいという意図での選択だ。

まずはTwitterについて。Twitterの検索欄で「$BTC」と検索すると、対米ドルでのビットコインのチャートと共に「View on eToro」というボタンが表示される。「eToro」は暗号資産、株式、コモディティなど複数の資産に対応した取引プラットフォームだ。

Twitterのユーザーにリアルタイムの価格を提供し、eToroのプラットフォームを活用して投資することも可能。これにより、Twitterは今後もeToroと連携して暗号資産決済を実現していくと考えるのが本筋だが、Twitter上でウォレットの中身を確認できたところで、暗号資産決済周りのインフラとしてeToroのものを利用するのであれば、Twitterを利用しなければいけない理由にはならない。

ここで考えられるのが、独自ウォレットの開発。流れとしては、ウォレット開発を進めながら決済関連のライセンス取得と預金口座の連携を材料に基本的なKYCを完了させておき、暗号資産決済機能のリリースは自社ウォレット開発が完了するまで、eToroと連携してサービス提供を行う。

自社ウォレット完成後にTwitterと連携すれば、決済機能及び預金口座開設時に済ませたKYC登録を活用する形で、ユーザーは簡単にTwitterの独自ウォレットを持つことができるだろう。

事実上の物々交換が達成され、貨幣までもがコモディティになる日は近い

対してメルカリはどうだろうか。先にもあげたメルカリ内の売上金や残高、ポイント等でビットコインを1円から購入できる仕組みは事実上、現金不要の物々交換を実現していく可能性が極めて高い。

メルコインのコーポレートサイトには「価値交換を実現するブロックチェーンの技術に取り組むことで、NFT(Non-fungible token)等、これまでのモノ・お金に限らず、サービスやデジタルコンテンツなどのあらゆる価値を誰もが簡単に交換できるあたらしい取引の形を創出する」と明記されていることからわかるように、貨幣でさえもコモディティと成り得る革新的なスーパーアプリ化だ。

ここまであげたアプリケーション以外にも、我々の想像の斜め上を行くイノベーションは起こるだろう。最後に、スーパーアプリ市場の競争激化によって行われるであろうインセンティブ付きのマーケティングをユーザーとして活用する方法を提示して結びとする。

展開を表明しているだけに止まるアプリが多いからこそ考えられる可能性に時間を分散投資せよ

▶POINT.1
暗号資産決済時の還元

現在多くのユーザー数を抱えるアプリケーションがウォレットを開発、または容易に活用できるような提携をした場合に、特定のウォレットを介して決済を行うことにより、権利付きNFTの優待が受けられるといったインセンティブを提案することは考えられる。

日本における現状の法規制では現実的ではないが、場合によっては暗号資産のキャッシュバックもあり得る。暗号資産決済をすればするほど、還元率が増えるような仕組みだ。

この際に注意すべきは、確定申告を提出する際の税務処理が非常に面倒になる可能性があること。つまるところ、暗号資産決済が活用できることはユーザーにとって選択肢が増えるため、ある種利便性が向上する反面、日常的に行われる少額決済の場合、日本国内の税制度に準拠する税務処理が足枷となる可能性がある。

定期的でかつ変動しない固定費などの支出には活用して恩恵を受けることができるかもしれない。

▶POINT.2
流動的なコミュニティ形成

Web3.0関連プロジェクトでは、しばしば「Dework」というサービスが活用されている。プロジェクト管理機能を搭載したサービスだがほかと一線を画すのは、MetaMaskなどのイーサリアムウォレットでの認証ができ、タスク完了時はトークンで報酬を支払える。

このWeb3.0 ネイティブな機能は、DAO形成とも相性が良い。仮にDiscordやTwitterがイーサリアムウォレットの認証を受け入れた場合、今まで以上に流動的にコミュニティ形成ができる。ロール付与をうまく活用することで、アプリケーション内の問題行動を監視するバリデータのような存在も現れ、SNSは自走するようになるかもしれない。

今後起こりうるWeb3.0領域での SNS発展に向けて、まずはDeworkというツールに触れてDAOの一端を担う経験をしてみることが近い将来役立つかもしれない。

▶POINT.3
ビッグデータを活用したあたらしいマーケティング

SNSに始まるアプリケーションと今後活発になるウォレット開発は、あたらしいマーケティング戦略において重要な要素となるだろう。

興味があるものや購入したものに対してユーザー側がアクションをするSNSは、リアルタイムで消費者の本音を映し出している。これに加えて、ウォレットのデータを活用するマーケティングが活発に行われるようになるだろう。

マーケティング用語に「ウォレット・シェア」という言葉がある。マーケット全体や顧客の財布事情を想定し、そのなかで自社の商品・サービスが占める割合がどれくらいあるのかを指す言葉だ。

今まではさまざまなデータをもとに、予測する域に過ぎなかったが暗号資産対応のウォレットがSNSの本人認証が完了したアカウントと紐付けば、個人情報保護の課題は多く残るもののお財布の中身が完全に可視化されることになる。

これによって企業は、より精度の高いマーケティングを実施することができるようになると予想される。具体的にいえば、実際に保有している権利付きNFTに関連した広告が予算に合わせて流れることもあれば、ウォレット内に直接プロモーションをかけることもできるかもしれない。

ここまで精度の高いビッグデータを活用できれば、企業は広告出稿をする際にABテストをする手間も以前よりは少なくなるだろう。

企業はかけたい予算やターゲットをスーパーアプリに提示して、スーパーアプリはお財布事情を加味したビックデータから、広告のクリエイティブを生成AIが作成して想像もできない成果を無駄なく上げる。まるで選べるカタログギフトのように。




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