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NFT History and Today——歴史から学ぶNFTの現在地 監修:仮想NISHI

2023/05/29Iolite 編集部
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NFT History and Today——歴史から学ぶNFTの現在地 監修:仮想NISHI

世に浸透しつつある今だからこそNFTの歴史と現在地をおさらい

NFTが世界的なブームとなるきっかけとなった2021年。デジタル上のアートやキャラクターなどが高額で取引され、瞬く間に注目される存在となった。同年には、「ユーキャン新語・流行語大賞」で「NFT」がノミネートされていることから、日本でも個人だけでなく多くの企業などが興味を示した。

そもそもNFTとは「非代替性トークン」とも称されるもので、その名の通りほかのものとは代替の効かないトークンを指す。

法定通貨やビットコインなどの暗号資産は、いつ発行されたものであろうと流通しているものの代替が可能であるため、その類ではない。しかし、NFTは1つとして固有のIDを持つことがなく、その1つ1つの代替ができないため、非代替性トークンと称される。

このNFTにおいてブームを作り出した作品としては、特徴的なドット絵の「CryptoPunks」や、ユニークなファッション等に加え、どこか気怠げな表情を浮かべる猿が描かれた「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」などがあげられ、いずれも今では数億円もの価値を有する作品もある。

しかし、最も人々に衝撃を与えたのはデジタルアーティスト・Beeple氏の作品だろう。

世界的オークションハウ スの「クリスティーズ」で行われたアートオークションで、同氏の作品「Everydays:the First 5000 Days」は約75億円(当時レート)もの価格で落札。この衝撃はWeb3.0領域のみならず、多方面に響きわたった。そして今もなお、この価格を上回る落札額や二次流通市場等での取引は確認されていない。

NFTのブームにあわせて、NFT特化の取引市場も大きく成長した。その代表格としては、OpenSeaがあげられる。NFTブームにあわせて登場したと思う人も少なくないだろうが、実は2017年よりサービスを開始している。着実に準備を進めていった結果、NFTの注目度が高まるにつれて頭角をあらわしていった形だ。

当初は上記であげたNFTなど、いわゆる「アート系」に分類されるものが多く取引されたが、時が経つにつれユーザーが注目するカテゴリーにも変化がみられるようになった。

1つは「GameFi」の存在だ。ブロックチェーンを活用したブロックチェーンゲームでは、ゲームを通じてNFTやゲーム内トークンを獲得し、それを取引することで実際に対価を得ることができるとして、NFTブーム以前よりプレイされていたタイトルもある。

NFT ブーム後には特に「Axie Infinity」が人気を集めた。Axie Infinityでは「スカラーシップ制度」というものを設け、ゲームのプレイに必要なNFTをオーナーとしてほかのユーザーに貸し出すことで、ゲーム内トークンを得ることを可能にした。このシステムが好評を得て、特に東南アジアを中心に多くのユーザーがプレイした。

2022年半ばには、歩くことで対価を得ることができる「STEPN」が世界的に流行した。「歩く」というシンプルかつ複雑な操作を必要としないゲーム性は、GameFiへの参入障壁を大きく下げたものといえるだろう。

アート、そしてゲームなどの面で注目を集めるNFTだが、2022年に入るとその勢いに陰りがみえる時期もあった。背景には世界経済のインフレ動向や、あらゆる事件等により冷え込んだ暗号資産の市況などがあげられる。特に暗号資産取引所FTXが破綻した前後には、NFTの取引量も停滞した。

また、取引されるNFTのカテゴリーにも変化がみられている。それまではアート系であったり高額なNFTに注目が集まっていたが、徐々に「そのNFTを持つことで何ができるのか?」というユーティリティ性に焦点が当てられるようになってきた。

特定のNFTを持つことで特別なイベントに参加できる、または定期的に特典を得ることができるといった 具合に、各NFTプロジェクトが工夫を凝らすことで、NFTに付加価値をつけたのだ。そのなかでも特にコミュニティの構築が重要となるのはWeb3.0、しいてはNFT領域ならではの特徴だろう。

今やNFTプロジェクトを運用する上でコミュニティの存在は無視できない。同じNFTを持っていることから生まれる仲間意識や共通の一体感というのは、コミュニティにとって大きなエネルギーになり得る。そのため、コミュニティの価値を高めることでNFTの付加価値も相乗的に高まりやすい。

もっと踏み込んでいえば、コミュニティの熱量がNFTの価値に直結するのだ。

コスト面でイーサリアムを凌駕する「ビットコインNFT」が人気

最近では、ビットコインのブロックチェーン上で発行される、通称「ビットコインNFT」が注目を集めている。「Ordinals」というプ ロジェクトでは、これまでに発行されたビットコインに固有の数字を割り振り、ブロックチェーン上で画像などのデータを紐付けることで発行される。

フルオンチェーンと呼ばれる、画像データ等がすべてブロックチェーン上に保存される方法でNFTを発行しようとすると、イーサリアムでは数十万円単位のコストがかかってしまうのに対し、ビットコインでは数千円で済む。フルオンチェーンで保存すればブロックチェーンが稼働する限りいつでもデータを参照できる。

それに加え、コスト面での優位性とこれまでナンセンスとの評価を受けていたビットコイン上でのNFT発行という話題性から、ビットコインNFTが注目を集めているともいえるだろう。

さらに、市場環境にも変化があらわれつつある。

NFTブーム以降、さまざまなNFTマーケットプレイスが出現するなかでも強さをみせてきたOpenSeaの対抗馬として、「Blur」が出現した。一時、OpenSeaの取引量を上回るなど、OpenSea一強の市場環境に変化をもたらそうとしている。

Blurはユーザーが支払うガス代を除く手数料がなく、さまざまな取引所のNFTをまとめて取引できるアグリゲーター機能等を有していることから、利用者数が急増した。

近頃ではNFT無期限レンディングサービスを発表し、特定のNFTを担保とすることで暗号資産を借り入れることができるといったユニークなサービスも提供する。

すでにOpenSeaもBlurに対抗すべく、上級者向けのサービスも公開している。ユーザーにとってはさまざまなマーケットプレイスがアクティブになることでNFTの流動性も上がり、利便性も向上する可能性が高まるため、競合が増えるという点はプラスに捉えることができるだろう。

コンテンツ大国である日本がゲームで世界のWeb3.0をリードする

一方で、日本に目を向けるとやや出遅れ間は否めない。さまざまな要素が考えられるが、最も大きな理由としてやはり規制による影響は大きいだろう。規制があることでユーザーの保護を強化できる一方、実質的に行動制限をかけてしまうことはいうまでもない。

それでも、FTXの破綻や2022年に発生したさまざまな事件を通じて、日本の優位性は高まりつつある。規制面で世界と比べ先行していたことや、税制面の規制緩和に向けた議論の加速等もあり、日本のWeb3.0業界には追い風が吹いている。当然、そのなかにはNFTも含まれており、実際に大手企業の参入なども相次いでいる。

重要視されているカテゴリーとして、ゲームの存在は欠かせない。世界的に人気のあるゲームやIPを数多く有するコンテンツ大国日本にとって、ゲームは世界でWeb3.0をリードする上で大きな武器となる。

2023年初頭からさまざまな国産ブロックチェーンゲームが登場しており、すでにスクウェア・エニックスやGREEなども参入を表明している。今夏からはさらに多くのゲームコンテンツがリリースされる予定で、このなかから大ヒットブロックチェーンゲームが登場することも期待される。

日本でウォレットが普及しない「3つ」の理由

しかし、日本でブロックチェーンゲームを浸透させる上では課題もある。特に参入障壁となっているのはウォレットの存在だろう。

ウォレットと一概にいってもさまざまな種類がある。インターネットに接続された状態のウォレットを指す「ホットウォレット」や、その対局にありインターネットに常時接続されていない「コールドウォレット」がある。

ウォレットの代表格としては、「MetaMask」や「Ledger」、日本でも馴染みが深いLINEの子会社が開発した「DOSI Wallet」、SBI傘下の暗号資産取引所SBI VCトレードが手がけた「SBI Web3ウォレット」などがあげられる。

国産のウォレットも登場するなかで、最もポピュラーなウォレットの1つであるMetaMaskにしても、日本はG20のなかで普及率が特に低いとされる。その要因として、「高い銀行口座普及率」「インセンティブの低さ」「DeFi等の規制外のコントラクトへの接続」などがある。

日本の銀行口座保有率は約97%ともいわれており、世界銀行が発表した世界全体の口座保有率76%と比べても非常に高い。つまり、日本は金融包摂への取り組みが進んでいることから、実生活で暗号資産に頼るケースが少ない。さらに、現状の個人に対する暗号資産税制がユーザーフレンドリーなものでない点に加え、暗号資産に対する日本人ならではのマイナスイメージも普及の妨げになっているかもしれない。

これが2つ目の理由にもつながる。暗号資産に積極的になる必要がなく、負のイメージも持ち合わせているとなると、何かしらのインセンティブがない限り動き出しは鈍くなる。ウォレットをダウンロードしたからといって大きな特典が付くケースも極めて稀であり、人によっては設定すらも煩雑かつ億劫に感じてしまうだろう。

自己責任という言葉が強く付きまとうDeFiなどでも同様のことがいえる。日本では原則として金融庁より暗号資産交換業者としてのライセンスを付与されたサービスを利用するよう推奨されており、言語の壁も有する海外サービスを利用するとなるとハードルは格段に高まる。

また、暗号資産を持つ理由が低いとなれば、特別な機会がない限り積極的に知識を得ようとすることもないだろう。

こうした背景も踏まえ、国内の関連事業者はウォレットの設定などを含むオンボーディングに加えて、UI/UXの改善も必要だと述べる。また、通常NFTを取引する際にはイーサリアム等の暗号資産を準備する必要があるが、そのためには事前に取引所で暗号資産を入手しなければならないなど、工数がかかる点もネックになっている。

その点、国内ではユーザーの利便性を解消すべく、日本円でのNFT購入を可能にするサービスも大手を中心に増えてきた。SBIWeb3ウォレットでは、暗号資産を自動で円転することにより、暗号資産取引やウォレットへの移動が不要。日本円だけで取引しているような、初心者にも優しい設計であるといえるだろう。

今や日常でも耳にする機会が増えたNFT。その歴史と今を直視しつつ、目的にあわせて学びながら触れていくことが大切だ。

▶︎ウォレットを普及させるためにはUI/UXの改善、そしてオンボーディングが必要不可欠。まずは初心者でも触れやすいサービスに加え、身近な体験を通じて親しみを持ってもらうことが普及への近道。


Profile

仮想NISHI
SBI VCトレード(クリプトアナリスト/新規事業戦略担当)/ SBIホールディングス デジタルスペース室副室長
ディーラー経験を活かし、オンチェーンデータを始め暗号資産市場を分析、Twitterでの情報発信のほか新聞・雑誌等で暗号資産市場の解説を行う。



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