サマリ
1.老化の逆転現象
世界中の海に生息するベニクラゲは、親個体が幼体に戻る老化の逆転現象を持つ特徴的な生物だ。観測では14回連続の若返りも確認されているが、若返りの過程で神経系がリセットされるため記憶は保持されない可能性が高いと指摘されている。
2.遺伝子共有と医療応用
かずさDNA研究所の解析により、ベニクラゲと人間は約50%の遺伝子を共有していることが判明した。現在は若返り遺伝子を人の細胞で発現させる段階にあり、将来的な皮膚や組織の再生など、医療分野への応用が期待されている。
3.研究資金の不足と展望
理論上の不老不死を解き明かす研究だが、現在は研究者と研究資金の不足が最大の課題だ。人に直接役立つ研究とみなされにくい現状だが、記憶のデジタル保存など他技術との融合や病気治療への貢献に向けて研究が続けられている。
東アジア全域に伝わる徐福伝説をご存知だろうか。紀元前3世紀頃、秦の始皇帝の命令で「不老不死」の霊薬を探してくるよう命じられた徐福は、アジア各地を巡ったとされており、日本国内にも徐福が訪れたという観光地はたくさんある。
不老不死は、紀元前から続く、人類究極の夢である。死なない存在への憧れや、実際に死ねなくなった時の恐怖などは、手塚治虫の「火の鳥」をあげるまでもなく、世界中に伝わっている。
医療技術がこれだけ発達し、再生医療やコールドスリープといった未来技術はリアリティを持って研究が進んでいる。ところが、不老不死といった話題となると、それはファンタジーと考えられているのか、あまり話を聞くことがない。そもそも、人体が老化するのは避けられない以上、どれだけ老化を遅らせたとしても最終的には、老化で辛くなるということなのだろうか。
さまざまな情報をリサーチしていたところ、衝撃的な生物の情報が引っ掛かった。なんと、成長しきると赤ちゃんにまで戻る生き物がいるというのだ。
いったいどういうことなのか。その特徴は人間の不老不死に応用可能なのか。その生き物「ベニクラゲ」を研究しているかずさDNA研究所へ取材を申し込んだ。
話をしていただいたのは、同研究所でベニクラゲの研究を行っている遺伝子構造解析グループグループ長の長谷川嘉則氏だ。
「ベニクラゲは、世界中の温暖な海に生息する、全長1cm程度の小型クラゲです。基本的な生活は一般的なクラゲと変わりませんが、お調べになった通り、若返ることができるというほかの生物にはない特徴を持っています」
長谷川氏によると、この若返りは、通常の生殖とはまったく異なり、親個体そのものが幼体へと戻る「老化の逆転現象」といえるそうだ。研究では14回連続若返った個体も観測されている。「もっとも、若返りの過程で成長した神経系がリセットされてしまうため、若返ったとして、記憶は保持されていない可能性が高いです」
ベニクラゲの研究を行っているのは、公益財団法人かずさDNA研究所。1994年に設立され、植・微生物・ヒトなど幅広い生物のゲノム解析を行っている。特に「大規模DNA解析技術」に強みを持ち、日本のバイオ研究を支える基盤的な役割を担っている。