世界の暗号資産規制Vol 5「英国」

2026/05/29 10:00 (2026/05/29 12:47 更新)
Iolite 編集部
文:Chihiro Furukoshi
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世界の暗号資産規制Vol 5「英国」

既存金融に準じた規制体制の構築へ

サマリ

1.包括的な金融規制の導入

英国は2027年10月までに暗号資産を既存金融と同等に扱う規制を導入する。新規則で取引所の認可制や顧客資産の分別管理、AML/CFT体制の強化を義務付け、法的な空白を解消して市場の透明性と安全性を高める方針である。

2.政治献金の厳格な規制

暗号資産による政治献金の一時禁止や違反者への刑事罰導入といった厳格な対策が打ち出された。これは匿名性を悪用した外国勢力の介入リスクを排除することが目的であり、政治資金監視のモデルケースとして国際的にも注目されている。

3.銀行のサービス制限という課題

法整備が進む一方で、銀行が暗号資産関連の取引や決済を制限・拒否するデバンキングの動きが強まっている。取引所の多くが顧客トラブルの増加を報告しており、英国が目指す暗号資産ハブの構築において大きな障壁となっている。


英国は、暗号資産を従来の金融商品と同等に扱う規制体制の整備を進めており、2027年10月までに導入する方針を示した。これまで英国の暗号資産事業者はマネーロンダリング対策を満たせば活動可能だったものの、銀行や証券業に課される包括的な金融規制の対象ではなく、消費者保護や市場監視の観点で不十分との指摘があった。

特に暗号資産は匿名性が高く、国境を越えて迅速に移動するため、従来の枠組みでは不正資金や外国勢力介入の監視が困難だった。今後の規制転換により市場の透明性が高まるとともに、規制対応が不十分な事業者の淘汰が進む可能性が高い。

英国財務省は2025年12月に「金融サービス・市場法2000(暗号資産)規則2025」を議会に提出し、暗号資産関連事業を規制対象に組み込む方針を示している。暗号資産取引所の運営、自己勘定・代理取引、カストディ業務などが規制対象に含まれる見込みで、制度整備が進められている。

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「金融サービス・市場法2000(暗号資産)規則2025」強化の詳細

1.暗号資産の法的地位の明確化

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英米法※2では従来、財産概念は物理的に占有可能な有体物か、訴訟上保護される権利としての無体物に分類されてきた。本規則では、暗号資産に関連する一定範囲の資産をFSMA(金融サービス・市場法2000)上の指定投資として定義し、従来の金融商品と同一の法的枠組みに組み入れることを目的としている。

法的な空白地帯にあった暗号資産の法的位置づけが整理され、FCAによる一貫した管理の実現が期待される。さらに、ハッキング被害時の資産凍結や回収、取引所の破綻時における顧客資産の保全についても、迅速かつ確実な法的措置が可能となる。

※2 英米法(コモンロー):11世紀中頃、英国でノルマン王朝成立以降、国王の裁判所の判例法として発展し、米国に継受された法体系。現在では英国や米国、カナダ、豪州、インド等旧大英帝国領で採用されている。

2.取引所・カストディ業者の登録義務

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暗号資産の売買や保管等のサービスを提供する事業者に対し、FSMAにもとづく認可の取得が義務付けられる。英国では、無登録事業者の参入や内部統制の不備、顧客資産の不適切管理といった問題が顕在化してきたことを背景に、事業者規制の強化が求められてきた。

本規則は、暗号資産関連業務を規制対象活動として位置づけ、経営体制やガバナンス、リスク管理体制などをFCAが審査・監督する枠組みを整備するものである。これにより認可を受けた事業者は継続的な監督の対象となる。参入段階から不適格業者を排除し、規律ある市場環境の形成を促す。

3.顧客資産の分別管理と保護

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本規則では事業者に対し、顧客資産と自社資産の分別管理及び適切な保管体制の構築を求める。暗号資産分野では、事業者の破綻時に顧客資産が毀損するリスクが指摘されてきた。本規則により、資産の帰属や管理方法が明確化され、万一の場合にも顧客資産の返還が確実に行われる仕組みが整備される。

こうした動きは、EUのMi CA(Mar ketsin Crypto-Assets Regulation)においても、顧客資産の分別管理やカストディ業者の保管義務が明確化されている点と方向性を同じくし、利用者保護を中核として規制枠組みの整合性が確保される。

4.AML/CFT体制の強化

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マネーロンダリング及びテロ資金供与対策の強化も狙いの1つとみられる。英国では従来、「Money Laundering Regulations 2017」にもとづき暗号資産業者に対する登録制度が運用されてきたが、本規則により金融規制の枠組みに統合される。

これに伴い、顧客確認(KYC)や取引モニタリング、不審取引の報告義務が強化されるとともに、送金時の送受信者情報の付随(トラベルルール)への対応も求められる。これらの対応により、匿名性や越境性の高い暗号資産の追跡可能性が高まり、不正資金の移転経路の把握が可能となる。

5.情報開示・広告規制の整備

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暗号資産に関する広告や勧誘について、透明性と適正性の確保につながる可能性も高い。英国ではFSMAの枠組みにおいて暗号資産が金融プロモーション規制の対象に組み込まれており、広告はFCAの認可を受けた事業者による承認が必要とされる。

加えて、リスク警告の明示や誤認を招く表示の禁止、一定期間のクーリングオフの導入などが求められる。特に個人投資家に対しては、価格変動の大きさや元本割れの可能性について明確な注意喚起の表示が求められる。これにより、利用者の過度な投機的行動を抑制する効果が期待される。

6.監督・執行体制の強化

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規制の実効性を担保するための監督及び執行体制が強化される。英国では、FSMAの枠組みにもとづき、FCAが事業者に対する継続的なモニタリングや報告徴収、調査権限の行使等を通じて監督を行う。

また、違反事業者に対しては是正命令や業務制限、制裁金の賦課が行われるほか、無認可業者の公表や排除といった措置も講じられる。さらに重大な違反については刑事手続きへの移行も可能とされる。こうした厳格な監督体制は国際的な規制水準にも影響を及ぼし、グローバルな暗号資産市場における規制モデルの1つとして位置づけられる可能性がある。

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