金融領域に訪れている「三重点」 ── Fireblocksが見据える次世代金融のスタンダードとは? マイケル・シャウロフ インタビュー

2026/05/29 10:00 (2026/05/29 12:29 更新)
Iolite 編集部
文:Noriaki Yagi
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金融領域に訪れている「三重点」 ── Fireblocksが見据える次世代金融のスタンダードとは? マイケル・シャウロフ インタビュー

オンチェーン化をもたらした“2つの出来事”

サマリ

1.金融のオンチェーン化

米国の規制変化や大手参入により、金融オペレーションのオンチェーン化が現実化しました。伝統的金融と暗号資産プレイヤーが共存する「三重点」の時代を迎え、リアルタイムで安全に稼働する次世代インフラの需要が急速に高まっています。

2.インフラの高速化と標準化

新技術「MPC-BAM」の導入で高速な署名処理を実現。ステーブルコインなどの大衆普及に向けては、徹底した安全性の確保だけでなく、直感的な使い勝手の向上や、決済・規制対応におけるシステム運用の「標準化」が最大の課題であると述べています。

3.暗号資産から「金融」への統合

将来的に「暗号資産業界」という枠組みは消滅し、既存の「金融」へ統合されると予測。特に日本市場は、高い経済規模や規制の見直しを背景にデジタル資産が成功する要素が揃っており、今後の展開において極めて大きなポテンシャルがあると期待を寄せています。


──2026年現在、不動産や金(ゴールド)、債券などのデジタル証券化は実証実験を終え、本番環境での運用フェーズに突入しています。Fireblocksは、この「本番化」の大きな流れのなかで、どのようなことに注力しているのでしょうか?

マイケル・シャウロフ(以下、シャウロフ):私は現在の状況を「三重点(トリプルポイント)」と表現しています。これは科学用語で、特定の温度と圧力のもとにおいて、水が液体(水)、気体(水蒸気)、固体(氷)という3つの状態で同時に共存するポイントを指します。今の金融業界で起きているのは、まさにこれに似た状況です。

現在目の当たりにしているのは、金融商品や金融オペレーション、さらに主流の金融サービスまでもがオンチェーン上で実行できるという構想が、2つの出来事を経て現実のものになったという状況です。

1つ目は、昨年の米国における規制の変化です。そして2つ目は、Stripeのようなアグレッシブな既存の大手企業がこの領域に参入し、決済やステーブルコインの機能を提供し始めたことです。

これらが引き金となり、いくつかの大きな動きが起きました。まず、取引所やネオバンク、トレーディングファームといった暗号資産ネイティブなプレイヤーが一斉にこの領域へ雪崩れ込んできました。

彼らは、もはやビットコインやイーサリアムなどの取引にとどまらず、今やHyperliquid上で原油のコントラクトさえも取引できることに気づいたのです。彼らはすでに独自のインフラを持っていたため、こうしたあらたなフローにいち早く参入し始めました。

そして次に、銀行や決済企業などの伝統的金融機関が、自らこの領域に飛び込み、自社の持つケイパビリティをそこに注ぎ込む必要があると気づいたのです。

Fireblocksはこうした変化を可能にし、インフラを提供する、まさにその中心に位置してきました。あらゆる資産クラスに対して、高い処理能力でトランザクションを実行できる総合的なウォレット機能を提供しています。

単にビットコインを購入して、コールドストレージに5年間寝かせておくような話ではありません。決済や資本市場のユースケースにおいて、いかにしてリアルタイムに機能するインフラを構築するのか──これこそが、創業初日から私たちが最も得意とし、主軸としてきたことなのです。

さらに私たちは事業を拡大し、誰もがあらゆる種類の資産をトークン化できる「Tokenization Engine」を持つに至りました。ステーブルコイン、トークン化預金、トークン化証券、そしてコモディティなどです。私たちの製品が安全かつコンプライアンスに則った形で機能するからこそ、ユーザーはごくわずかな労力でこうしたプロジェクトを実現できるのです。

そして最後にもう1つ重要なのが、これらすべての異なる資産クラスにまたがる「ネットワーク効果」をサポートできるという点です。これまで私たちは、暗号資産向けに設計された「Fireblocks Network」を通じて市場を牽引してきました。

そして昨年には、ステーブルコインのトランザクション向けに設計された、決済用のネットワークをローンチしました。さらに現在は、トークン化された証券やその他資産の流通を促進するためのRWAトークン向けネットワークの開発に取り組んでいます。

──2025年7月のインタビューで言及されていた従来の100倍の効率を持つ新アルゴリズム「MPC-BAM」がローンチされてから半年以上が経過しました。実際に本番環境で運用を開始して以降、クライアントのトランザクション処理にどのようなブレイクスルーをもたらしましたか?また、市場での普及状況についても教えてください。

シャウロフ:MPC-BAMは3月にベータ版から一般提供へと移行しましたが、すでに非常に高い導入率を記録しています。1週間前の時点(取材時)で、Fireblocks上のトランザクションの20%が、すでにMPC-BAMを使用している状態でした。導入から1ヵ月も経たないうちに、極めて急速に普及が進んでいるのです。

私たちの顧客も、この結果に大変満足されています。というのも、あらゆるセキュリティの基本機能の恩恵を享受したまま、1秒未満という非常に短い時間での署名を実現できているからです。これにより、ユーザーは自社のインフラリソースを大幅におさえつつ、システムを拡張させることが可能になります。

すでに、トップクラスのリテール向けフィンテック企業や、エンターテインメント企業などでの導入も始まっています。

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