サマリ
1.既存システムとの統合で決済の摩擦を取り除く
グローバルな決済指標は「既存システムとのシームレスな統合」へとシフト。世界規模で決済の摩擦を取り除き、あらゆる資産を安全かつ瞬時に扱える「ユニバーサル・インフラ」の構築こそが、次世代の経済圏を支えるカギとなる。
2.AIによる無意識の取引 自律型決済への変革
AIエージェントを通じて、決済は「人間の行うもの」から変わろうとしている。ユーザーの意図を汲む自律的な決済は、日常においてその行為を意識することなく、自然な形で溶け込んでいく。なお、今後の技術動向は注視する必要有り。
3.信頼を担保する実直さ 本質的価値への回帰
最新技術を「補完的パーツ」と捉え、既存の枠組みをより高次元へ昇華させる。その根底にあるのは、揺るぎない安全性を前提に「誰もがシンプルに使えること」という本質的な価値だ。実直に信頼を担保する姿勢が、次世代の決済基盤を支える。
ステーブルコインやAIの発展により激しさが増す決済業界内の競争。その上で忘れてはならない「決済の本質」とプレイヤーの変化とは?
世界220以上の国と地域を網羅し、1.9億を超える加盟店をつなぐMastercard。1966年にInterbank Card Association(ICA)として設立した同社の2025年における年間決済額は10.6兆ドル(約1,681兆円)規模に達し、発行カード枚数は37億枚(2026年3月31日現在)を超える。この数字が意味するのは、同社が単なる「クレジットカード会社」ではなく、全世界の経済活動を支える「グローバルな価値循環インフラ」そのものであるということだ。
同社が今、その巨大なネットワークの「先」に見据えているのは、既存の法定通貨という枠組みを軽々と超えた“ボーダレスな価値の循環”だ。前項で解説した「クリプト・パートナー・プログラム」は、その壮大なグローバル戦略における重要な一歩であり、既存金融とWeb3.0が不可分に融合する未来への布石といえる。
Mastercardの戦略の深層を探るべく、世界各国の市場を俯瞰する同社の視座を紐解いていくと、そこで描かれている未来図は、一時的なトレンドを追うものではないことがわかる。
それは、世界規模で決済の「摩擦」を極限まで取り除き、暗号資産やステーブルコインなどのデジタル資産を既存の金融システムとシームレスに統合することで、世界中の誰もがあらゆる資産を安全かつ瞬時に扱える「ユニバーサル・インフラ」への進化だ。
大手暗号資産関連企業が結集する「信頼」の拡張
Mastercardの担当者によれば、「クリプト・パートナー・プログラム」には、すでに100社を超える企業や機関が参加しているようだ。
近年、暗号資産やステーブルコイン等のデジタル資産は、従来の金融システムと並行して存在する段階からクロスボーダー送金やB2B決済、さらには複雑な決済処理などの実用面で活用が進む段階へと移行しつつある。この大きな転換点を捉え、暗号資産関連企業、決済事業者、金融機関といった、本来であれば異なるセクターに属するプレイヤーが、共通の土俵で対話・連携するための枠組みとして同プログラムは設計された。
参画企業の顔ぶれは、Circleなどのステーブルコイン発行体を始め、BinanceやBybitといった暗号資産取引所、セキュリティ企業のFireblocks等、そうそうたる面々が名を連ねる。各企業はMastercardのインフラを介して、資金配分の最適化や送金コストの低減といった実務的な可能性を日々検討している。「今後も技術や規制環境の動向を踏まえつつ、段階的な発展を図っていく考え」と担当者は語る。
ブロックチェーンの可能性を念頭に、既存の決済インフラとの接続や実務的な活用の在り方を検討し、あらゆる分野での実用化に向け、取り組みは着々と拡大していくものとみられる。