Bitget Walletのガス代周りの取り組みは、しばしば「ガス代が無料になる機能」としてひとくくりに語られる。しかし実際には、性質のまったく異なる2つの仕組みが併存している。この2つをわけて理解すると、他社ウォレットとの差がどこにあるのかがはっきりする。
仕組みA:ガス代0円枠 — ガス代そのものを事業者が負担する
1つ目は、ガス代というコスト自体をBitget Walletが肩代わりする仕組みだ。「Paymaster」と呼ばれる仕組みがプロトコルレベルで対象取引の手数料を吸収するため、ユーザーから見れば文字通り「ガス代が発生しない」。
2025年8月にArbitrum・Solana・TRONの3チェーンで提供を開始し、同年9月にBaseへ拡大。その後もPolygon、Morph、Seiへと対象を広げ、現在は7つのチェーンで継続して提供されている。
Bitget Wallet 公式資料(2026年7月時点)より引用。無料枠の内容は随時見直される。重要なのは、これが「支払い方法の工夫」ではなく「コストの肩代わり」である点だ。ユーザーが払うはずだった金額を、事業者が負担している。
仕組みB:GetGas — ネイティブトークンを持っていなくても取引できる
2つ目は、ガス代の「支払い手段」を代替する仕組みである。
仮にイーサリアム上で発行されているステーブルコインを取引しようとした際、通常であればガス代用にETHを別途用意する必要がある。「GetGas」はこの前提を外す。ETH・USDT・USDC・BGBをあらかじめGetGas残高に入れておけば、送金・スワップ・dApps利用時のガス代がそこから自動的に差し引かれる。
対応するのはEthereum、BNB Chain、Base、Arbitrum、Solana、TRON、Polygon、Optimism、Morph、Kaia、Sui、TON、Robinhoodの13チェーン。Solana、TRON、Sui、TONといった非EVM系を含んでいる点が、この仕組みの特徴といえる。
こちらはガス代が消えるわけではない。あくまで「支払い手段を用意する手間」がなくなる仕組みである。ただしユーザー体験としては、オンチェーン取引で最も頻度の高いつまずきである「ネイティブトークンの残高切れ」が解消される。トークンを準備する金銭的・時間的コストの削減につながっており、結果としてユーザーの利便性向上に寄与しているといえる。
他社の「ガスレス」と、どこが違うのか
ここが誤解されやすい点だが、ネイティブトークン残高が不足した際に自動でガスレス取引へ切り替える機能は、EVM系最大手ウォレットもソラナ系大手ウォレットも備えている。つまり仕組みB(GetGas)は「他社にもある機能」と同じ土俵にある。差は対応範囲だ。
各社公式ドキュメントの公表値をもとに作成(2026年7月時点)。「—」は公表情報が確認できなかったことを示す。「ガス代の払い方を変える」ことは、すでに業界の標準になりつつある。「ガス代そのものを事業者が負担する」ところまで踏み込んでいるウォレットは、まだ限られている。