──欧米と日本におけるオンチェーン化の壁や差について、岩瀬さん自身はどう感じていらっしゃいますか?
岩瀬:欧米と日本を単純に比較するより、まずプレイヤーごとに「オンチェーン化」の目的が異なると捉える必要があります。発行体であれば資産の流通範囲や流動性の拡大、銀行であれば決済効率や既存顧客との関係維持、インフラ事業者であればあらたな収益機会が目的になります。
欧米では、商品や顧客を先に定義し、そこから必要なインフラを逆算する案件が増えています。一方、日本では技術検証やPoCの蓄積が多く、次の段階として収益モデル、規制対応、運用責任までを一体で定義することが重要です。
重要なのは、特定のチェーンを使うこと自体を目的にしないことです。出発点は、「オンチェーン化によって何の課題を解決したいのか」です。たとえば、資産の流通を広げたいのか、24時間365日の決済を実現したいのか、顧客体験を改善したいのか、より広いエコシステムと接続したいのか。その目的が明確になれば、それにあわせて適切な技術スタックを設計できます。だからこそ、アーキテクチャが固まった後ではなく、構想の初期段階から、事業、規制、技術をつなぎ、本番稼働まで見据えた実装案に落とし込む支援をしたいと考えています。
──明確な答えがない問いですが、「オンチェーン化は一体誰のためのもの」だと思いますか?
岩瀬:難しい問いですが、私は、既存の金融インフラを担う金融機関や企業と、その先にいる次の世代の利用者の両方のためだと考えています。金融機関、決済事業者、フィンテック、事業会社にとって、オンチェーン化はあたらしい技術を導入すること自体が目的ではありません。決済、資産発行、流通、ユーザー体験を、よりプログラム可能で、相互接続しやすく、24時間365日動く基盤へ更新するための手段です。これは新興企業だけでなく、長年にわたって信頼を築いてきた既存の金融機関が、自社の事業をよりデジタルで開かれた金融システムへ接続していく上でも重要です。
一方で、将来の利用者はブロックチェーンを意識しないかもしれません。自然に資産を保有・移転し、即時にサービスを利用でき、日常のデジタル体験のなかに金融が組み込まれていることを当然のように期待するはずです。RobinhoodやRevolutの成長も、金融が日常のデジタル体験へ統合されていく流れの一例だと思います。
パーミッションドネットワーク、現実資産のトークン化、AIエージェントによる取引など、その時々で注目されるテーマは変わります。しかし本質は、金融機関や企業が信頼して使え、利用者が自然にアクセスできる金融インフラを作ることだと考えています。
──日本展開を踏まえた今後の活動予定や注力していくポイントについて教えてください。
岩瀬:金融機関、ペイメントサービスプロバイダー、暗号資産交換業者、システムインテグレーター、開発者など、エコシステムにかかわる幅広い方々との対話をさらに増やしていきたいと考えています。
注力するポイントは、金融機関や事業会社の方々と「何をオンチェーン化するのか」を具体化し、その上で既存のレイヤー2を活用するのか、新規チェーンを構築するのか、カストディやウォレット、プライバシー、コンプライアンス、運用をどう設計するのかまで、一緒に考えていくことです。
Optimismの活用に限らず、ビジネスケースがまだ固まっていない段階や、プライベートとパブリックのどちらが適切かわからない段階でも構いません。オンチェーン化の構想段階から、ぜひ気軽にお声がけください。日本で本番稼働するユースケースを増やすことが、私の役割です。
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Profile

◉岩瀬 純太郎(Juntaro Iwase)
OP Labs 日本・東南アジア担当マネージングディレクター
Meta(旧Facebook)などを経て、シンガポールで12年間勤務。2022年からWeb3.0領域でコンシューマー向けユースケースやエコシステム成長に携わり、2026年にOP Labsへ参画。金融機関・事業会社のオンチェーン実装を支援。