野村ホールディングス、大和証券、SBIホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループなどの金融セクターについての動向を探ろう。
同領域のブロックチェーン及び暗号資産への関心は高く、実証実験などを積極的に行っている。日本の金融政策が大きく変わり金利が引き上げられると、銀行銘柄が有利なのは明らかなこと。国が推し進める「貯蓄から投資」や2024年から始まる新NISAは、証券銘柄にとって追い風だ。
●SBIホールディングス(8473) カテゴリ:金融 「SBINFT Market」の運営や「SHIMENAWA」を提供 ブロックチェーンやNFTなどの関連キーワードを押さえるWeb3.0事業を積極的に展開している
SBIホールディングスは積極的にWeb3.0関連事業に参画している。2016年に米Ripple社へ出資したほか、同社のブロックチェーン技術を活用した送金・決済インフラサービスの提供を行うマネータップ社を2019年に設立している。 同年10月にSBIグループ主導でセキュリティトークン分野の健全な発展を目指す「日本STO協会」を設立したほか、2021年に次世代金融やデジタル金融を調査研究するシンクタンクとしてSBI金融経済研究所を設立。その後、2022年4月にデジタルスペースの発展に寄与する業界横断の総合経済団体として「日本デジタル空間経済連盟」を設立するなどプラットフォーム事業も行っている。
ほかにも、暗号資産取引所「SBI VCトレード」及びNFTマーケットプレイス「SBINFT Market」の運営や、ブロックチェーン基盤・Corda(コルダ)を活用したトレーサビリティ・サービス「SHIMENAWA」の提供等も手がける。2022年にはスマートコントラクト言語「Daml」を開発する米Digital Asset社に出資し、今後は合弁事業会社の設立を目指すとしている。
▶▶︎今後の見通し 日本の成長戦略としてWeb3.0が明記されたことから、Web3.0関連銘柄の最右翼になる可能性あり
●マネックスグループ(8698) カテゴリ:金融 コインチェックの動向がさらなる株価上昇のカギに 懸念材料となっている株式取引手数料の無料化の動きに対して、暗号資産事業を本格化している
主要ネット証券の一角であるマネックスグループは2018年に当時国内シェアNo.1を誇る暗号資産取引所であったコインチェックを36億円で買収して暗号資産事業に参入している。買収した当時、コインチェックは暗号資産の大規模な不正流出を起こした影響に加え、ちょうど暗号資産バブルが弾けるタイミングであったこと、さらにはシステム開発費や人件費などのコストがかさみ業績は悪化していた。 しかし、2020年末以降、暗号資産市場の活況でコインチェックでの取引が増え、トレーディング収益が膨らんだこともあり、マネックスグループの業績にも好影響がみられるようになった。
一方、マネックスグループにおいて収益の柱となっているのは株式売買による取引手数料だが、現在、米証券会社において株式のオンライン売買手数料を無料化する動きが加速しており、これが日本にも波及する懸念が高まっている。 そのため、国内でも売買手数料の無料化が進む動きが強まることも考えられ、同社の将来性を考えた際の懸念材料となっている。マネックスグループではその対応策として暗号資産事業を収益の柱とする方針を打ち出しており、実際にコインチェックを米ナスダックで株式上場させる計画を進めている。
▶▶︎今後の見通し コインチェックのナスダック上場が実現すれば、株価に大きな影響がみられる
●野村ホールディングス(8604) カテゴリ:金融 Web3.0学習アプリ「Web3ポケット キャンパス」を開発・提供 海外に暗号資産関連を設立するほか、ビジネスパーソン向けに学習アプリを開発するなど、積極的にWeb3.0事業を推進
野村ホールディングスは2020年に海外でデジタル資産関連企業らと暗号資産カストディサービス「Komainu」を立ち上げるなど、証券会社のなかでは比較的早い段階でWeb3.0事業に参入した。 また、2022年5月にも暗号資産取引やNFT、DeFi事業等を手がける新会社の設立を発表。スイスで「レーザーデジタルホールディングス(Laser Digital Holdings AG)」を立ち上げた。この新会社では野村ホールディングスの機関投資家向けビジネスにおけるノウハウとグローバルな顧客基盤をベースに、デジタル資産の領域で顧客にあらたな価値を提供していくと説明している。 その後も機関投資家向けDeFiプラットフォーム「インフィニティ・エクスチェンジ(Infinity Exchange)」に対して戦略的投資を行うなど、動きを強めている。
このほか、2023年5月にはスマートフォン向けWeb3.0学習アプリ「Web3ポケットキャンパス」の開発に着手。8月に提供を開始した。このように現在野村ホールディングスでは積極的にWeb3.0事業を推進している。
▶▶︎今後の見通し 比較的早い段階でWeb3.0領域に参入していたため、今後のさらなる事業拡大に期待
●大和証券グループ本社(8601) カテゴリ:金融 子会社のFintertechを通じて「暗号資産担保ローン」を運営 国内で初めて暗号資産の担保ローンを提供するなど、Web3.0領域での動き加速
大和証券は傘下のFintertechを通じて2020年4月に暗号資産を担保として法定通貨を融資する「デジタルアセット担保ローン」の提供を開始。2023年8月には暗号資産レンディングサービスも発表するなど、動きを加速させている。 また、2022年2月にはケネディクス、SMBC日興証券らと協業して、三菱UFJ 信託銀行が提供するデジタルアセット全般の発行・管理基盤「Progmat(プログマ)」を活用したデジタル証券、セキュリティトークン(ST)を事業化。これまで累計で約226億円を引受けるなど国内最大シェアの引受証券会社となっている。 また、直近では暗号資産の自動損益計算サービス「クリプタクト」を運営している「パフィン(pafin)」との間で、Web3.0関連ビジネスにおける事業推進に向けた業務提携の検討を開始したと発表。パフィンの第三者割当増資を引き受けた。両者はそれぞれのノウハウを融合させてWeb3.0領域における事業の共同開発等を進める方針を掲げており、今後の動向に注目が集まる。
▶▶︎今後の見通し ST国内最大シェアの引受証券会社という実績に加えて、積極的なWeb3.0事業への参入など見通しは明るいか
●三菱UFJフィナンシャルグループ(8306) カテゴリ:金融 「Progmat」を活用しステーブルコインなど発行予定 法改正など時流に乗りWeb3.0領域での存在感を急激に強めている
三菱UFJフィナンシャルグループは2022年より次世代デジタル資産プラットフォーム「Progmat」の開発・提供を進めている。2024年には、みずほファイナンシャルグループを始めとしたメガバンクグループやNTTデータらとProgmatを活用したステーブルコインの発行を予定しており、動向には国内外から大きな注目が集まる。 あわせて、約6年前から模索していた「暗号資産信託サービス」の検討も開始。暗号資産ウォレット事業等を手がけるGincoらと協業し、Web3.0領域での事業拡大に向け動きを加速させる見込みだ。また、三菱UFJ銀行は2023年5月にメタバース事業を手がける「TBT Labグループ」と資本業務提携を締結した。 この業務提携でTBT Labが構想するメタバース経済圏の創出に向けた取り組みを加速させるとし、必要となる認証や決済、データなどの金融プラットフォーム機能の開発を進めていくとしている。こうした動きからも、現在Web3.0領域において三菱UFJフィナンシャルグループは重要な存在になりつつある。
▶▶︎今後の見通し Web3.0領域への積極投資やメタバース分野への進出など、Web3.0事業の成長次第では株価が上昇する可能性も
●三井住友フィナンシャルグループ(8316) カテゴリ:金融 三井住友銀行より総額約9億円を資金調達 三井住友フィナンシャルグループの長期目標は独自トークンビジネスの開発と将来的な事業化
三井住友フィナンシャルグループは2022年7月にブロックチェーンゲーム等を手がけるWeb3.0スタートアップ・ハッシュポート(HashPort)とNFT事業で連携していくことを発表。その後、同年12月にはハッシュポート及び同社の連結子会社であるハッシュバンク(HashBank)、ハッシュパレット(HashPalette)との間でソウルバウンド・トークン(SBT)領域における業務提携に関して基本合意した。 ハッシュポートは2023年1月にUTEC4号投資事業有限責任組合と三井住友銀行より総額約9億円の資金調達を実施している。三井住友フィナンシャルグループはハッシュポートと共にWeb3.0への参入を目指す企業への支援と日本発大型IPを活用したWeb3.0プロダクトの開発強化などを加速させていく方針だ。 また、三井住友フィナンシャルグループはメタバース分野にも積極的に参入。2023年3月にはTBT Labグループとの間でオープンメタバース空間内でのゲームコマースにおける新規事業開発の推進を目標とした業務提携を結んでいる。将来的な事業化を視野に実証実験などに取り組んでいく予定だ。
▶▶︎今後の見通し 加速化していくWeb3.0事業の今後の見通しは明るいが、積極参入しているメタバース分野はやや様子見か
関連記事 ・JAL、ANA、JR東日本の陸・空運関連、そして日テレ、テレ朝といった大手メディアのWeb3.0領域進出を占う
・ソフトバンクやGMOなど、情報・通信サービス企業8社の新規事業の行方は——