NFTやメタバースなど、Web3.0と距離が近いゲーム業界。スクウェア・エニックスやコナミ、バンダイナムコホールディングスといった業界大手からグリー、ネクソン、gumiなどが上場銘柄に名を連ねている。
個社の状況をみると、スクウェア・エニックスは業績悪化を理由に8月は年初来安値を記録。片やコナミは年初来高値を更新した。
ゲーム会社の場合、新作のヒットや既存ゲームからの安定収益が業績のカギとなり、2024年の株価動向はほかのセクターに比べると読みづらい。
ただし、各社のWeb3.0関連ビジネスが注目されると、投資マネーが流入するかもしれない。
●スクウェア・エニックス(9684)
カテゴリ:ゲーム
Elixir Gamesとの提携や『SYMBIOGENESIS』をリリース
ブロックチェーンゲームへの参入で不確実性からの脱却を目指すスクウェア・エニックス
2023年3月期の売上高・営業利益ともに減収減益で着地したスクウェア・エニックスは2024年3月期の重点施策に「ブロックチェーンゲーム開発の加速」をあげている。
2022年1月にブロックチェーンゲームをポートフォリオに組み込むことが「大きな戦略的テーマ」とすでに表明していたが、今期の決算の結果をもって改めて方向性を示した形だ。今期の結果は「ファイナルファンタジー」など、主力タイトルにおける拡張パッケージの発売がないことも大きな要因と考えられている。
Web3.0事業においては2023年3月に初のNFTコレクティブルアートプロジェクトとして「SYMBIOGENESIS」の公式サイトを公開。翌月にはブロックチェーンゲームを手がけるElixir Gamesと提携することを発表し、注力していく姿勢をうかがわせた。
将来的には自社トークン発行も見据えて事業展開を本格化させる。新規IP構築路線は踏襲するものの、開発したタイトルのヒット要因に業績が振り回される「不確実性」からの脱却を目指す模様だ。
▶▶︎今後の見通し
ブロックチェーンゲーム開発の加速化は、再び成長軌道に乗ることができるかどうかの分水嶺に
●コナミグループ(9766)
カテゴリ:ゲーム
総売上1,800万円のデジタルアートNFTを世界同時販売
過去最高の売上高を更新したコナミは、現在ブロックチェーンを活用した独自の流通基盤を開発中
今期の経営成績はゲーミング&システム事業がコロナ禍からの回復に加え、円安の影響を受けたことで増収となり、売上高は過去最高を更新した。コナミは2022年よりNFT事業を本格化しており、ゲームコンテンツを中心としたデジタルアートの世界同時販売を始めている。
同年1月に同社初の試みとして「悪魔城ドラキュラ」シリーズのNFTをOpenSeaにおいてオークション形式で販売。全14種のNFTアイテムの総売上は1,800万円ほどとなった。また直近では、新プロジェクトとして「PROJECT ZIRCON」のリリースを発表。
ブロックチェーンを活用した独自の流通基盤を構築し、ゲームにおいてデジタルアイテム化されたNFTをプレーヤー同士で取引できるサービスを開始する予定だ。このサービスを展開するために、システム構築ならびにサービス開発などの人材を幅広く募集している。
ゲーム大手からWeb3.0業界に対する注目度が高まっていることに加え、ゲーム領域にブロックチェーンを活用する動きが活発化してきたことから、コナミの動向にも注目が集まる。
▶▶︎今後の見通し
現在開発中のブロックチェーンを活用した独自サービスのリリース日に注目
●バンダイナムコホールディングス(7832)
カテゴリ:ゲーム
投資規模年間10億円のファンドを設立
アミューズメント分野が好調なバンダイナムコはメタバース分野でも好調を維持できるか
バンダイナムコは2025年3月までの中期計画における重点戦略としてメタバースをあげ、独自のメタバース構築などに向けて、150億円を投資する計画も公表している。同社の抱える豊富なIPコンテンツを活用して、デジタルな世界と物理的な商品を融合したプラットフォームを目指す。
また、2022年4月にスタートアップ投資ファンド「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」を設立。投資規模は年間10億円で、すでにブロックチェーンゲーム開発企業のGangbustersに出資を行っている。
同ファンドではバンダイナムコがこれまで培ってきたIP戦略やノウハウ、スタートアップ企業の強みを掛け合わせ、IPメタバースの構築及びあらたなエンターテインメントの創出を目指していく方向性だ。
さらに、ゲーム特化型ブロックチェーン・Oasysに初期バリデータとして参加することも発表している。今後Oasysを活用した新作タイトルを続々手がけることに期待がかかる。
▶▶︎今後の見通し
アミューズメント分野が好調で今後は投資したファンドの実績次第で、さらなる上積みも期待できるか
●グリー(3632)
カテゴリ:ゲーム
メタバース「REALITY」が北米中心に利用者拡大中
「REALITY」の海外売上がわずか半年で2倍に急成長するなど、巨額投資しているメタバース分野で存在感を放つ
グリーは2021年以来巨額投資しているメタバース分野で相次いで新会社を設立。個人ユーザー向けメタバース提供などを行う「REALITY」、法人向けメタバース空間構築やXR・NFTコンテンツ開発を担う「REALITY XR cloud」、VTuber事務所の「REALITY Studios」、ブロックチェーンゲームの開発などを行う「BLRD」の4社体制によって、多角的にグローバル展開を目指している。
BLRDは2022年10月に高速ブロックチェーン・アバランチ(AVAX)を手がける米Ava Labsと戦略的パートナーシップ締結。Ava Labsのブロックチェーン上でゲーム事業展開を進めている。また、メタバース「REALITY」の利用者が北米中心に拡大しており、海外売上はわずか半年で2倍に急成長した。
2023年6月にはブロックチェーン・Suiの開発元であるMysten Labsと戦略的パートナーシップを締結したと発表。Suiのバリデーションを開始すると同時に、日本発のIPを活用したWeb3.0ゲームの展開に向けた取り組みを進めていくとしている。グリーのWeb3.0事業は今後も加速していくとみられる。
▶▶︎今後の見通し
巨額投資しているメタバース分野で実績をあげてきているグリーは今後も上昇傾向にあると予想
●ネクソン(3659)
カテゴリ:ゲーム
人気ゲーム「メイプルストーリー」のブロックチェーンゲーム版をリリースへ
あらたに開発される「メイプルストーリー・ユニバース」で、ゲームの経済圏を拡充する方針のネクソン
2021年に1億ドル相当のビットコインを購入するなど、Web3.0領域に関心を寄せる姿勢を強めていた大手ゲーム開発企業のネクソンは、2023年3月にポリゴン(MATIC)のブロックチェーンを開発するPolygon Labsとパートナーシップを締結した。
これは同社の人気ゲーム「メイプルストーリー」のブロックチェーンゲーム版を開発するために、ポリゴンの技術を採用したためだ。また、直近ではゲームのインフラストラクチャプロバイダーとしてチェーンリンク(LINK)を選択したことも発表している。
あらたなプロジェクトとして立ち上げられた「メイプルストーリー・ユニバース」ではNFTとして発行されるアイテムを収集できるようにするなどして、ゲームの経済圏を拡充する方針。ネクソンは技術の利点と長期的なライブサービス能力を組み合わせることで、ゲーム利用者とともにIPを発展させていくNFT中心のエコシステム構築を目指すとしている。
▶▶︎今後の見通し
人気ゲームのブロックチェーン版リリースで今後も堅調に上昇していくと予想
●gumi(3903)
カテゴリ:ゲーム
「Web3 Startups」を創設して学生支援
新プロジェクトを続々発表し、Web3.0領域において存在感を示している
gumiは2022年6月にブロックチェーンゲームの開発・配信を行う子会社としてgCGを設立。開発・運用からトークン発行までワンストップで展開するための体制を整備している。
また、gumiはSBI及びスクウェア・エニックスと資本業務提携を発表。メタバースやブロックチェーンゲーム開発などを強化する方針を打ち出している。
さらに、2022年にはWeb3.0領域で起業を目指す学生向けの支援制度として「Web3 Startups」を創設しており、同年10月には一期生も決定した。2023年に入りCROOZ Blockchain Labと新作ブロックチェーンゲーム「エルゴスム」を共同開発しているほか、自社タイトルとしても「ファントム オブ キル-オルタナティブ・イミテーション-」を2023年内にローンチする予定だとアナウンスしている。
さらにチューリンガムやTOKYO BEAST FZCOと完全オリジナルWeb3.0 IPプロジェクト「TOKYO BEAST(トーキョービースト)」の開発運営における共同事業契約を締結したことを発表。gumiがデベロッパーを担当し、2024年に全世界に向けてリリースするとアナウンスした。
▶▶︎今後の見通し
XR事業やブロックチェーン事業が軌道に乗ると、今後さらなる成長が見込めると予想
●コロプラ(3668)
カテゴリ:ゲーム
「Brilliantcrypto」へ総額25億円の増資
最盛期と比較して大きく落ち込んだ業績の打開策としてブロックチェーンゲーム領域へ進出
2017年頃から下落傾向にあるコロプラだが、経営基盤の強化を目的にBrilliantcrypto(ブリリアンクリプト)への総額25億円に及ぶ増資計画を発表した。Brilliantcryptoは2022年11月に設立されたGameFi開発を手がけるコロプラの100%子会社だ。同社はWeb3.0がテーマのグローバルカンファレンス「WebX」にて、社名と同名のブロックチェーンゲーム「Brilliantcrypto」プロジェクトを発表した。
「Brilliantcrypto」は「Proof of Gaming」というあたらしいモデルを導入したブロックチェーンゲームで、世界的サッカークラブ・パリ・サンジェルマンFCとグローバルパートナー契約を結んでいる大型プロジェクトだ。
また、OLA GG、Indi GG、GuildQB、Samurai Guild Games、Avocado DAO、PathDAO、Ninja Game Guildといった全世界7ゲームギルド及びDAOとのパートナーシップを同時締結している。こうしたブロックチェーンゲーム領域への進出がコロプラにとって起死回生の一手となる可能性もあり、動向には注目が集まる。
▶▶︎今後の見通し
「Brilliantcrypto」プロジェクトが起死回生の一手となればV字回復する可能性も
●KLab(3656)
カテゴリ:ゲーム
コストコントロールで利益体質への転換がカギに
BLOCKSMITH&Co.を設立するなど、ブロックチェーン関連事業への積極参入で黒字転換なるか
携帯電話向けゲーム事業を中核としていたKLabは2022年よりブロックチェーン関連事業立ち上げると発表し、Web3.0関連事業を管轄する子会社・BLOCKSMITH&Co.を設立した。
BLOCKSMITH&Co.は同年にThirdverseグループとWeb3.0及びブロックチェーンゲームの開発・運営に関する基本合意契約を締結している。2023年4月にはWeb3.0関連の知識を必要とすることなく楽しめる「クイズでためる『QAQA』」を開発。
同年6月にエアトリなど企業8社がクイズ出題者として加わりα版を公開した。また、AI技術をより多くの人々にアクセス可能にすることを目指す「BLOCKSMITH AI Lab」を設立し、「クイズでためる『QAQA』」に研究成果を導入する予定だと発表している。
2022年12月期の連結決算において前々期比で大幅な減収となったKLabだが、打開策としてWeb3.0事業に活路を見出し、積極的に運営している。利益体質への転換を図るべくコストコントロールに努めた結果、営業損失の赤字幅が前期から縮小したことから、Web3.0事業が軌道に乗れば黒字転換する可能性もあるだろう。
▶▶︎今後の見通し
業績不振タイトル多発で現状は苦しい状況だが、Web3.0事業が軌道に乗れば黒字転換する可能性も
●ドリコム(3793)
カテゴリ:ゲーム
Web3.0×アーティストプロジェクト「Sports3」を開始
エンターテイメント領域とWeb3.0領域の重なる部分をターゲットに「Sports3」を発足
近年の業績が堅調なバンダイナムコ傘下のドリコムは2022年よりWeb3.0事業へ参入。Thirdverseグループとブロックチェーンゲームの企画・開発・運営に関する基本合意契約を締結し、エンターテイメント領域とWeb3.0領域の“重なる部分”をターゲットとしている。
また、WIN3社と「Web3.0×アーティスト」によってスポーツ業界の持続可能性を高めることを目指すプロジェクト「Sports3(スポーツスリー)」を共同で開始しており、6月下旬に初めて一般向けに販売するデジタルコレクションをポリゴンチェーン上でリリースした。
さらに、ドリコムが保有する「Wizardry(ウィザードリィ)」の IPを活用し、チューリンガムと共同で開発中のブロックチェーンゲーム「EternalCrypt - Wizardry BC -」における初のNFTコレクションが暗号資産取引所コインチェックによって提供されている「Coincheck INO」の第1号案件として取り扱われるなど、着実にWeb3.0領域で成果を残しつつある。
主力のゲーム事業が堅調であることから、Web3.0事業がさらに軌道に乗ることで今後も安泰な銘柄になりそうだ。
▶▶︎今後の見通し
主力のゲーム事業の堅調さに加えて、Web3.0事業が軌道に乗るかどうかが株価の動向を大きく左右する
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