ビットコインなど暗号資産との関係性が強い米国企業は数多くある。なかでも、TeslaやMicroStrategyはビットコインを購入し今もなお保有するなど、暗号資産の未来に対して比較的明るい立場にいる。
また、世界最大の資産運用会社であるBlackRockはビットコイン現物ETFの申請を行っており、承認の可否に注目が集まっている。
かねてより関心が高いビットコイン現物ETFが承認されると暗号資産市場にポジティブな影響がみられるとの声もあり、同時にBlackRockなど関連する企業の株価にも好影響がみられそうだ。
●Tesla(TSLA)
カテゴリ:自動車
ビットコインで損失を生んだが本業は絶好調
ビットコインで2億400万ドルの損失を計上したTeslaの主力はやはりEV自動車と自動運転技術
EV自動車で世界を牽引するまでに成長したイーロン・マスク氏率いるTeslaは、2021年にビットコインを15億ドル(当時約1,580億円)分購入し大きな話題を呼んだ。
マスク氏はビットコインの支持者の1人としても知られており、2022年には太陽光発電用いたマイニングを行うべく、大手企業らと連携した。しかし、ビットコインの価格が下がると損失も膨らみ、2023年2月にはビットコインの保有によって2億400万ドル(約3億円)の総減価償却費を計上したことを明らかにしている。
かつて話題を呼んだビットコイン決済復活までの道のりも未知数であり、Web3.0関連事業が株価に好影響を与える可能性は低そうだ。Tesla本体としてはやはり主力のEV自動車関連の動きで値動きが変化するとみていい。
ロシアによるウクライナ侵攻で原油価格が高騰したことによりEV自動車の市場規模はさらに大きくなると予想され、新モデルを続々登場させれば、さらなる株価の上昇が期待できるだろう。
▶▶︎今後の見通し
Web3.0関連の動きより、本業であるEV自動車の動向や自動運転関連のトピックに注力するのがセオリーか
●BlackRock(BLK)
カテゴリ:金融
申請中のビットコイン現物ETFの動向に注目集まる
世界最大の資産運用会社であるBlackRockは、ビットコイン現物ETFの承認を目指して米SECに申請中
BlackRockといえば、現在Web3.0領域で最も話題のトレンドの1つであるビットコイン現物ETFの承認に最も近いとされる資産運用会社だ。
米SEC(証券取引委員会)へビットコイン現物ETFの申請を行っているのはBlackRockを始め、ValkyrieやVaneckといった企業。SECは2021年にビットコイン先物ETFこそ承認したものの、現物ベースのビットコインETFについては承認を拒み続けてきた。
しかし、米暗号資産運用会社Grayscaleが提出したビットコイン現物ETFの申請をSECが却下したことについて、米連邦控訴裁判所が見直すよう命じたことから、状況は大きく変わりつつある。ビットコイン現物ETFが承認されることで、米国の幅広い投資家たちが資産としてのビットコインへのエクスポージャーを手にすることができるため、多額の資金流入が見込まれている。
SECは2023年10月16日まで承認判断を延期するとアナウンスをしており、その判断の行方が注目されている。その結果次第でBlackRockの見通しも変わっていくだろう。
▶▶︎今後の見通し
ビットコイン現物ETFが米SECより承認されるかどうかが現状の大きな株価変動要因に
●Coinbase(COIN)
カテゴリ:金融
レイヤー2ブロックチェーン「Base」が注目を集める
Coinbaseは公開した「Base」は、Web3.0領域の勢力図を変える存在となるか
Coinbaseは暗号資産取引サービスを主力事業とする企業として初めてナスダックへ上場したことで知られる。いわゆる「暗号資産の冬」と呼ばれる市況の悪化により業績は落ち込んでいたが、第2四半期の決算では売上高が7億790万ドルで金利収入急増により市場予想を上回る数字を発表した。
売買高は920億ドルで前年同期の2,170億ドルから減少したものの、金利収入は前年同期の3,250万ドルから2億140万ドルに膨らみ、純赤字は前年同期の10億9,000万ドルから9,700万ドルに縮小した。
また、BlackRockらが申請中のビットコイン現物ETFが承認されると、Coinbaseにも好影響を与えると予想されている。さらに、2023年8月に公開したレイヤー2ブロックチェーン「Base」も大きな注目を集めており、すでに多くのdAppsが構築されている。
Baseを活用する動きが業界を中心に強まれば、Coinabaseの存在感は一層強まる。そのため、必然的にCoinbaseの株価にも何らかの影響がみられる可能性が高いといえるだろう。
▶▶︎今後の見通し
ビットコイン現物ETFの承認や「Base」などが追い風要因となり、今後の見通しは比較的明るい
●Block(SQ)
カテゴリ:金融
利用者が増え続ける「Cash App」は今後も安泰
キャッシュレス決済の増加とビットコイン取引の増加にわわせて成長している
Blockの主力サービスである「Cash App」は、PayPalの「Venmo」とあわせて、既存の大型銀行における新規口座開設者をはるかに凌駕するペースで利用者が増え続けている。
単純なユーザー数ではPayPalに軍配が上がるものの、新規月間アクティブユーザー数の増加率ではBlockのCash Appが大きく差を付けている状況だ。また、個人間の送金や株式取引、ビットコインの売買ができることも強みとなっており、今後のさらなる成長が期待されている。
Cash Appではキャッシュレス決済の増加とビットコイン取引が今後も増加する見通しで、クレジットカード入金やキャッシュカードの決済手数料、ビットコインの売買手数料など収益ポイントが数多くあり、今後どれだけアクティブユーザーを増やせるかで将来が変わっていくことだろう。
ただし、ビットコインの値動きやWeb3,0領域の動向に影響を受ける可能性もあるため、注意が必要であることも事実だ。
▶▶︎今後の見通し
Cash Appと共に成長していく可能性もあるがビットコインと一蓮托生する可能性もあり
●NVIDIA(NVDA)
カテゴリ:電子機器
AI領域で各業界を牽引する存在になる可能性も
自動運転やAIなどの分野でも、NVIDIAの需要は高まりつつあり、各業界をけん引する存在にもなり得る
現在、世界的に半導体の需要は高まりをみせており、半導体大手企業のNVIDIAは注目株の筆頭だ。NVIDIAの事業の柱は現在、ゲームとデータセンター向け半導体の2つだが、今後は自動運転やAIなどの領域の需要が高まることも予想されるため、それらに置き換わる可能性が非常に高いといえる。
第2四半期の決算では同社過去最高となる135億ドル超の売上高を記録したが、これもやはりAI領域での需要が非常に大きい。株価も2023年に入り高騰したが、背景には生成AIの過熱感があった。依然としてAIは最も注目すべき領域の1つであり、その勢いが増せば増すほど、NVIDIAの株価が上昇していく可能性も高まっていく。
NIVIDIAの製品はAI市場においてすでに「なくてはならない」存在になっており、先述した生成AIに加え、自動車業界、ヘルスケア業界などといった領域での影響力は日を追うごとに強まっていきそうだ。世界中でAI需要が加速するなかで、今後も世界中の投資家から注視されることだろう。
▶︎▶今後の見通し
従来の事業の柱に加えて、あらたな事業の柱を獲得する可能性があるため優良銘柄になる可能性が高い
●MicroStrategy(MSTR)
カテゴリ:ソフトウェア開発
大胆なビットコイン戦略で株価にも影響
業界内外から注目されるビットコイン戦略で、株価を急騰させたMicroStrategyは今後もビットコインに注視していく
MicroStrategyは2020年にビットコインを初めて購入し、以降は継続的に買い増しを行っている。2023年8月時点でのビットコイン保有量は上場企業としては最大の15万BTC超。これによりMicroStrategyの株価はビットコインの価格変動に伴って動く傾向が強まっている。
実際にビットコインの価格が60%以上下落した際には、株価も約35%下落した。このように、大胆なビットコイン戦略により株価の乱高下がみられるMicroStrategyだが、一部の投資家からはMicroStrategyの株を保有することで間接的にビットコインへのエクスポージャーを得ることができるとして注目されている。
BlackRockやMorgan Stanleyなどの金融大手もMicroStrategyの動向を注視しているとの声もある。今後もMicroStrategyは事業の1つとしてビットコインへの投資を継続し、さらには関連サービスを提供することも計画していることから、現在の状況はしばらく続くものとみていいだろう。
▶▶︎今後の見通し
ビットコインの価格が大きく上がった際には、MicroStrategyの株価も大きく押し上げられる可能性あり
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