千葉県では、富士通と千葉銀行の協賛でブロックチェーンを活用した地域スタンプラリーの実証実験を2017年3月に行ったのを皮切りに、地方生成プロジェクトの一環としてほかの地方自治体に比べて比較的早い段階でWeb3.0関連の取り組みを始めている。
千葉県 日本初の試み
千葉県や千葉県の各企業が取り組んだWeb3.0事業になかには日本初の試みもあり、業界の内外で注目を集めている。
たとえば、千葉工業大学のNFT学位証明書だ。千葉工業大学ではNFT学位証明書の発行に先立って、2022年に株式会社PitPatと共同で千葉工業大学変革センターにてNFTによる学修歴証明の発行も開始している。NFT学位証明書は同大学の学生3名が証明書のデザインを考案し、令和4年度の卒業生の希望者1,100名に発行された。
学修証明書と学位証明書の2つのNFTは、オンチェーンで一般公開されるNFTと学生側で公開/非公開の設 定が可能なVCの2つの技術が掛け合わされたもので、学生のプライバシーを保護し、同大学の卒業生であることをオンライン上でグローバルに証明できるようになるほか、学生は大学の学修の履歴や学びの成果を就職活動のみならず海外留学などの際に幅広くアピールすることができるようになるとしている。
この千葉工業大学によるNFT学位証明書の発行は国内初の取り組みとなった。
同大学では今後も学内プロジェクトとして学生と共に作り上げていくとし、また、Web人材輩出を目指す実践に即した教育プログラムを開発・提供してWeb3.0におけるエンジニアやビジネスリーダーを育成することでイノベーティブな人材輩出を目指し、他大学や企業に展開を進めることで社会全体のDX推進に貢献していくとしている。
世界初、検見川神社のお守りNFT
千葉県における世界初のWeb3.0事業に関する試みとして注目されたのは縁結びの社として著名な千葉市の検見川神社のお守りNFTだ。検見川神社のお守りNFTは2022年に古事記projectとの共同で発売されている。古事記projectとは日本最古の歴史書である古事記や日本神話をもとにエンターテイメントコンテンツを提供している会社だ。
このお守りNFTはNFTやメタバースを活用したあらたな収益源を両者共同で模索するNFTプロジェクトの一環で、実際にご祈祷した上で、神社の授与品である「お守り」をNFTにして頒布しているものだ。
もともと検見川神社では、遠方者や直接お参りできない人のためにお守りなどの授与品をオンラインで購入できる環境を整備していたが、同社はこのNFTプロジェクトについて、環境整備をさらに推し進めたものとしている。
授与品は「検見川神社お守りNFT」で購入でき、「メタマスク」のウォレット及び、暗号資産イーサリアムが必要となる。ラインナップはウォレット安全守や詐欺除御守など10種類。それぞれ0.005ETHで販売するが、相場に寄って変動する可能性があるとしている。
本お守りには有効期限があり、1年でご利益が切れてしまうものだ。通常、1年経過したお守りは授かった寺社に返納してお焚き上げをするが、このお守りNFTも授かってから1年経つと自動的にお焚き上げ(バーン)されるように設計されている。
永続的に残すことができるデジタルデータにあえて時限機能を設計することによって、より現実のお守りに近いものとしているのがこのお守りNFTの面白いところだ。また、お焚き上げされた後のお守りNFTについて、NFT自体はなくなるが、あたらしいNFTに変化するように設計しているため、お焚き上げ後も楽しめるようになっている。
同社はこのプロジェクトを通じて「あらたな神社の収益源を模索していくとともに、NFTを活用することで、海外にいらっしゃる日本人の方、まだ神社のことを何も知らない海外の方など、世界中のみなさまに神社、ひいては日本の魅力を感じてほしい」としている。
積極的にWeb3.0事業に取り組む千葉銀行
地方銀行として積極的にWeb3.0事業に取り組んでいるのが千葉銀行だ。千葉銀行は米国発メタバースプラットフォーム「Virbela(バーベラ)」の日本公式販売代理店であるガイアリンクがVirbela内に構築して運営している日本向けメタバース空間「GAIA TOWN」を活用した実証実験を2022年9月に行っている。
これは千葉銀行が株式会社チェンジとの間で締結したDX推進に関わる業務提携契約に基づく具体的な取り組みの一環として実施され、メタバースが次世代チャネルとしてどう活用できるかを多面的から検証するものとして、就活生向けの座談会イベントや千葉銀行Twitterフォロワー向けのトークイベントなどが行われた。
そして、このGAIA TOWNを活用して行われたイベントのなかでも同県のあらたな試みとして行われたのが「かずさメタ婚」だ。
かずさメタ婚は木更津・君津・富津・袖ケ浦のかずさ4市の市役所の若手職員らからなる「かずさ4市メタバース婚活実行委員会」が婚活事業者の一般社団法人NAーCord協会の協力のもと主催したイベントで、これに先立って2022年11月にかずさ4市のあらたな取り組みとして、かずさ4市の市役所職員を対象に婚活イベントを開催し、女性のマッチング率100%と成功を収めている。
この結果をもって、今度はかずさ4市住民を対象としたメタバース婚活イベント「かずさメタ婚?メタバースでホンキの出逢い!」を2023年3月11日に開催した。同イベントはコロナ禍におけるあらたな出会いの場の創出による「かずさ4市の活性化」及び「少子化対策」を目的としている。また、同年9月には「きさらづメタ婚」として同様のイベントを開催している。
中小規模の企業によるWeb3.0事業
さらに、千葉県では中小規模の企業による取り組みも盛んだ。
千葉県いすみ市にあるつるかめ農園はレヴィアス株式会社が開発したブロックチェーン「アニカナ(ANICANA)」のコンサルタントを務めるアニメートアークより技術支援を受けて農業体験をNFT化する「Farm to Earn」を提供している。
つるかめ農園は農薬や肥料に頼らず自然栽培にこだわった米づくりのコミュニティを運営しており、都心に住んでいる人が農作業を通じて里山の環境づくりに携わり、その自然を共通の財産として育んでいくことが持続可能な社会づくりや再生産可能な農業につながるとして、そのような仕組みづくりを模索してきた。
今後は農業体験を資産に変える「Farm to Earn」を通して、あらたな農業の担い手が増えていく事を目指したいとしている。
千葉県夷隅郡のローカル線いすみ鉄道はJR東日本企画が東日本エリアに展開する駅スタンプアプリ「エキタグ」の「EKITAG Collection」として、いすみ鉄道の車両「いすみ350形」のデジタルフィギュアのNFTを販売開始している。
EKITAG Collectionは日本各地の鉄道に関連するコンテンツを3D化したエキタグオリジナルのデジタルフィギュアで、アプリ内で手に入れたフィギュアの拡大や縮小はもちろん、360度細部まで自由自在にみることができるというものだ。
今回のいすみ350形は千葉県優良県産品にも選定されたオリジナル商品「い鐵揚げ」とともにその第1弾としてNFTマーケットプレイス「SNFT」にて購入できる。
そのほか、千葉県船橋市の株式会社農情人が運営する農業Web3.0コミュニティ「Metagri 研究所」はスタディメーター株式会社の技術支援を受け、NFTと農産物のあらたな交換システムを開始しており、農業とブロックチェーンを組み合わせたあたらしいビジネスモデルの提供を目標としている。
千葉のWeb3.0事業
▶NFT学位証明書
令和4年度の卒業生の希望者1,100名
千葉工業大学はメディア事業を行うPitPaの支援でNFT学位証明書を発行している。大学が学位証明書をNFT化するのは国内初の試みで、このNFT学位証明書は、ブロックチェーン上で一般公開されるNFTとVCの2つの技術を掛け合わせることで、学生のプライバシーを保護し、同大学の卒業生であることをオンライン上でグローバルに証明できるようになる。
導入している企業・団体
『千葉工業大学』
▶お守りNFT
世界初の自動お焚き上げ機能付きお守りNFT
検見川神社は2022年7月に古事記projectの支援でお守りNFTを発売している。これは世界初の試みで、NFTやメタバースを活用したあらたな収益源を両者共同で模索した形だ。お守りNFTを授かってから1年経つと自動的にお焚き上げ(=バーン)されるように設計され、より現実のお守りに近いものとなっている。
導入している企業・団体
『検見川神社』 『古事記project』
▶GAIA TOWN
かずさメタ婚などのイベントを開催
千葉銀行が実証実験を行った米国発メタバースプラットフォーム「Virbela(バーベラ)」内にある日本向けメタバース空間で、メタバースが次世代チャネルとしてどう活用できるかを多面的から検証するものとして、就活生向けの座談会イベントや千葉銀行Twitterフォロワー向けのトークイベント、かずさメタ婚などが行われた。
導入している企業・団体
『下鴨神社』
▶かずさメタ婚
女性参加者のマッチング率100%
かずさ4市メタバース婚活実行委員会はあらたな取り組みとして、かずさ4市(木更津・君津・富津・袖ケ浦)役所職員を対象に行われたメタバースを活用したコンパを開催。女性のマッチング率100%と成功を収めた。この結果をもって、かずさ4市住民を対象としたメタバースで行う婚活イベント「かずさメタ婚」を2023年3月11日に開催している。
導入している企業・団体
『NA-Cord協会』
▶EKITAG Collection
販売収益の一部を自治体に寄附
鉄道駅などにあるNFCタグにスマートフォンをかざして、デジタルスタンプを収集できるアプリサービス「エキタグ」はEKITAG Collection第1弾として、NFTマーケットプレイス「SNFT」にて、いすみ鉄道の車両「いすみ350形」や千葉県優良県産品にも選定されたオリジナル商品「い鐵揚げ」を3Dモデル化してNFTとして販売を開始している。
導入している企業・団体
『ジェイアール東日本企画』
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