——UEを使って一儲けしようと思ってるんだけど、そもそもUEを使って何ができるの?メタバースみたいなのも作れる?
佐竹:作れるかどうかでいえばイエスだけど、それを素人が1人で作るのはかなり無茶な話じゃないかな。たとえば、『超最先端の3Dデジタル美麗グラフィック!』みたいなゲームを想像してみて。ああいうゲームを作る場合、予算数十億、メンバー数百人みたいな世界だよ?個人が作れるようなものではないよね。
——うっ。たしかにおっしゃる通り。
佐竹:あと、UEでゴリゴリ開発をするのであれば、かなりハイスペックなパソコンが必要になるよ。色々ハードウェアの要件があるけど、だいたい25万円くらいのパソコンじゃないと、すぐに動作が重くなってまともに動作しなくなっちゃうから。
——最新のパソコンゲームをプレイできるようなハイスペックマシンが必須なのね。そう聞くと、個人が手を出せるようなものじゃない気がしてきたな。「UEを使えば簡単に3Dデジタルのモノが作れて稼げる」って聞いたんだけど、もしかして現実的ではない?
佐竹:人によると思うけど、これまで一切そういうことをしていない人がすぐにできるというものではないよ。まともに機能を使えるようになるまで半年、ゲーム開発の一部を担当するくらいの実力になるまでに数年はかかるんじゃないかな。
UEやUnityが使えるエンジニアの需要増
——ということは、個人でサクッとゲームを開発してリリースするのは不可能かな?
佐竹:個人や少人数で開発してゲームをリリースしている人たちはいるけど、ちょっとしたアルバイト感覚でできるようなものではないね。それにUEを使う場合というのは、かなりグラフィックに力を入れるようなゲームだから、あまり個人開発で使うことはないんじゃないかな。
比較的ライトなゲームを作るならUnityとか、ほかのゲームエンジンを使うのが一般的だよ。仮に作ったとしても、そのゲームが売れるかどうかは別問題だし。3Dモデルを作れたとしても、面白いゲームを作れるわけじゃないのはわかるよね。
——じゃあそういう個人開発をしている人たちはあまり儲かっていないの?
佐竹:副業とかでやるのでなければ、ゲームの売上だけが収入になるわけだから決して楽ではないよ。今も世界中でヒットしている『マインクラフト』はインディーゲーム出身だけど、これは例外中の例外。
大半のインディーゲームは数百本売れればヒットみたいなレベルで、仮に1,000円のゲームを100本売ったとしても10万円の売上にしかならない。さらにそこからSteamやAppleとかのプラットフォーム手数料がだいたい30%引かれるわけだし。
実際、個人開発に憧れてゲーム会社から独立する人はいるけど、数年間収入なしで開発を続けて、リリースしたとしても売れるかどうかわからないという世界だから、ほとんどの人は断念しているね。
——たまにネットで個人開発のゲームがバズってるけど、その裏に大量の売れていないゲームがあるってことか。じゃあ、やっぱりUEを使いこなして個人が稼ぐというのは不可能かな?
佐竹:1番の王道ルートはネットとかのいろいろなサイトを参考にして、ある程度UEを使えるようになって、3Dモデル制作の求人に応募することだけど、そういうこと以外で稼ぎたいんだよね。
たとえば、YouTubeとかを検索すると『Unityで制作したショートアニメ』とかもあるから、そういう方向性はあるかもしれないね。UEでも動画を作れるから、何かリアルっぽい3D動画を作るのであれば選択肢としてはありえるけど、UEを習得する労力に見合わないとは思うね。
——たしかにその通り。
佐竹:あと、UEやUnityには3Dモデルを販売するストアがあるから、自分が作った3Dモデルを売って稼ぐという方法はあるかもね。ただし、UEもUnityも無料でも優秀なアセットが大量に使えるから、よほど魅力的なものでない限りは売れないと思うよ。
残念だけど、これも素人が数日で作って稼ぐというのは現実的ではないかな。むしろそれくらいの実力がある人なら、個人のエンジニアとして企業から依頼を受けて働いた方がはるかに稼げるはず。
フォートナイトで数千万、数億円の収益を獲得?
——話を聞いていると、個人で3Dモデルを作って稼ぐというのは、かなり厳しい世界だとわかってきたよ。
佐竹:一応、せっかくだから少し夢がある話をしておくね。最近、『フォートナイト』でプレイヤーがカスタムコンテンツを作れる機能が盛り上がっていて、けっこうな数のクリエイターが数千万、数億円の収益を獲得しているみたいだよ。
このコンテンツ制作に使えるUEFN(Unreal Editor for Fortnite)というツールではUEの機能が大量に使えるから、UEでコンテンツを作れるならこれを狙うのもありかも。
——数億円!これは調べてみるしかない。
というわけで、さっそくUEFNについて調べてみた。
UEFNは2023年3月に『フォートナイト』やUEを運営しているEpic Gamesがリリースしたゲーム制作ツール。これを使えば、フォートナイトをベースにしたゲームを誰でも作れるというものだ。
制作できるのはフォートナイトの世界観の範囲ではあるが、独自のマップや独自のルールのゲームを制作可能。UEのさまざまな機能を使えるため、UEを使う能力があるほど、UEFNも自由自在に使えるというわけだ。
そして、ユーザーが作成したコンテンツへのアクセスや人気度に応じて、Epic Gamesが収益を分配する仕組みになっているという。なんと、フォートナイトの売上の40%がクリエイターに分配されるようになっているのだ。
Epic Gamesが今年5月に発表した概算によると、1年間で10万ドル(約1,400万円)以上を受け取るクリエイターが約400人。そのなかには、100万ドル以上を受け取るクリエイターも61人いるとか。企業や複数人のグループも多いようだが、かなり夢がある話ではないか。
3Dモデルの制作で稼ぐのは簡単ではないとわかったが、ゲームをプレイしつつそのゲームを応用して何かを開発するのであれば、趣味と仕事が同時にできるということになる。いちから3Dモデル制作を学ぶよりも、可能性がありそうだ。
しかし、筆者はフォートナイトを数回しかプレイしたことがない。というわけで、しばらくフォートナイトをプレイするため、自室に籠らせていただきます。
▶フォートナイト
Epic Gamesが2017年にリリースしたオンラインゲームで、クラフト要素のあるサードパーソン・シューティングゲーム。
Profile
◉赤川マコト
36歳、フリーランスのライター。とにかく小金を稼ぐことが好きで、本業以外にもYouTuber、Uber配達員、治験、潜入調査など、さまざまな仕事に手を出している。稼げるという情報を聞けばすぐに取り組むフットワークの軽さがウリ。
関連記事
“MMORPG”をメタバース化してみる
【HeyGen(ヘイジェン)を徹底解説】機能や料金、使用時の注意点など AIによる多言語同時通訳もまもなくか——