Web3.0

世界最速で少子高齢化が進む秋田を“秋田犬” で世界一豊かな街に変える|Meta Akita インタビュー

2023/12/14Iolite 編集部
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世界最速で少子高齢化が進む秋田を“秋田犬” で世界一豊かな街に変える|Meta Akita インタビュー

「少子高齢化」「人口減少率」「経済縮小」等、日本の課題の縮図となっている秋田を救うWeb3.0

人口減少率や経済縮小などが深刻な秋田を“秋田犬”と“Web3.0”で変革する「Web3村」などユニークな構想を描くプロジェクトの取り組みに迫る。


秋田が抱える課題を解決する上でもWeb3.0は有効なツールに

——秋田県を拠点としてMeta Akitaを立ち上げた背景を教えてください。

TASUKOF:Meta Akitaを秋田で立ち上げた理由は、メンバーの大半が秋田出身の有志である点に加え、長年秋田を取り巻くネガティブな現状を何とかしなければならないと考えたためです。

秋田県の人口は年間1万人以上減少しており、人口減少率は日本一です。東日本で最も女性の県外流出率が高い県でもあり、平均年齢をみても50歳超と日本で最も少子高齢化が進んでいます。それに伴い経済縮小のスピードも日本トップであり、非常に深刻な状況です。

我々はこの状況を変えるために、最初に秋田で事業を創発しようと考えたわけですが、仮に飲食や小売などの事業をあらたに始めても、県内需要自体が小さいため成功する可能性は低いと考えました。さらに、秋田は「陸の孤島」であり、大都市圏からのアクセスも悪く、県外から人を呼び込むことも容易ではありません。

その上で、秋田で何を起点にどのようなビジネスをするかを考えて出た条件が、1つは「少数精鋭でスモールスタートができる」点、そしてもう1つが「秋田の地理的条件と経済に捉われない」点です。

それらを考慮の上、まずはITビジネスを起点とすることにしました。私自身、2016年頃から大手企業でブロックチェーン事業のコンサルティングに携わってきたこともあり、インターネットの次世代型モデルの1つであるWeb3.0が、秋田が抱える課題解決に使えるかもしれないと考え、Web3.0をMeta Akitaのソリューションの1つに据えました。

——なぜ、Web3.0がITビジネスの次世代型と思われるのでしょうか?

TASUKOF:まず前提として、インフラとしてのインターネットというのは、本来中央集権的ではないと考えています。しかし結果的に現在のインターネット/ITビジネスはGAFAMを代表とする大企業に牛耳られています。

Web3.0についても根本には非中央集権という概念がありますが、実際のところは一部のノードがマイニングを占有していたり、大企業も多額の投資をしてWeb3.0すらも中央集権化(Web3へのゲートウェイを占有)しようとしています。我々としてはこの動きに対して一種の危機感を抱いています。

一方で、Web3.0は個人の貢献に対する透明性のあるインセンティブが実装しやすいので、分散化が進むことで、世界中の個人レベルであたらしいビジネスや技術革新が生まれる可能性を秘めていると考えています。私たちはこの点がITビジネスの未来のあるべき姿と考えており、Meta Akitaとしては地方から「ITビジネスの理想的進化」を推進していきたいと考えています。

——事業を立ち上げる上で「秋田だからこそ成功するだろう」と考えた部分をお聞かせください。

TASUKOF:まず、地方を世界にPRするためには、世界の人にとってわかりやすいものをビジネスのコアに選択する必要があります。秋田において最も世界的なIP(ブランド)といえばやはり秋田犬です。我々は秋田犬に焦点をあて、IT/Web3.0と組み合わせることで、秋田犬のブランドをうまく活用したビジネスを創出することにしました。

白幡雄大(以下、白幡):IPの活用は地方創生のカギだと考えています。秋田には秋田犬のほかにも、日本酒やなまはげなどといった知名度の高いIPがあり、それらを活用したビジネスにも可能性を感じています。また、IPをビジネスの中心に据えつつ、DAO的に個人が主導権を持ってその活動を牽引するというのは、Web3.0に適したモデルです。

私たちはWeb3.0の考え方・技術を活用したビジネスを展開しながら、秋田のIPを応援してくださる日本中・世界中の方々がその場にいながら秋田を盛り上げる活動に参加し、さらにファンが増えていくような未来をイメージしています。

TASUKOF:IPを活用したビジネスとあたらしい組織の形としてのDAOがうまく機能すれば、デジタル上ないしは物理的に、自然と人が秋田に集まってくる状態を作れると考えています。

世界中の秋田犬ファンもそうですし、一度県外に出た秋田県出身のスキル人材が秋田に戻ってくるかもしれません。そのような人とお金の流れを作ることができれば、まだ眠っているさまざまなIPを掘り起こすことができ、相乗効果も生まれると考えています。

私たちはこの状況を生み出すべく「世界最速で少子高齢化が進む街を世界一豊かさを誇れる街に」というビジョンを掲げて活動しています。

秋田犬NFTシリーズ

——Meta Akitaでは具体的にどのような事業を行っていますか?

TASUKOF:大きく4つの事業を行っています。

まず1つ目はブロックチェーン事業です。ブロックチェーンや関連する先端技術の社会実装を進めるべく、秋田の自治体と協業しています。

2つ目は地方自治体や県内企業へのDX戦略立案を含むコンサルティング事業です。3つ目は地元企業の海外展開支援です。グローバルなビジネス経験を持つメンバーが主導し、直近では秋田の歴史ある酒蔵の商品を秋田犬と掛け合わせてブランディングし、海外に販売するプロジェクトを進めています。

4つ目は秋田犬に関連した事業です。我々は秋田犬保存会の公認企業でもあるのですが、犬に優しい世界の実現のためにドッグフード開発などのさまざまな検討を行っています。

▶︎秋田犬保存会とは:秋田犬の保護や展覧会の開催、血統書発行等の活動を行う団体。発足から100年近い歴史を持ち、秋田犬による文化の発展への寄与等を掲げる。

私たちはこの4事業を中心に活動しており、2022年8月に会社を立ち上げてから1年でいくつかの実績を作ってきました。具体的には、まず「秋田犬NFTシリーズ」の販売があります。地元のテレビや新聞だけでなく、全国区のメディアからも取材いただき、私たちの活動を知っていただく良い機会になったと思います。

また、地元企業にユーティリティ(保有特典)を提供いただく形で参加いただき、秋田を盛り上げる活動としては好スタートを切れたと思います。その後、大館市のふるさと納税の返礼品として秋田犬NFTとオリジナル日本酒のセットを提供したり、プロ卓球チームの琉球アスティーダとコラボしてチケットNFTを販売するなど、活動の幅を広げてきました。

直近では、今年秋田で発生した大規模水害に際して、NFTを活用し世界各国から募金を集めました。集まった募金は秋田県の副知事に直接お渡しさせていただいています。また、インバウンド施策として開催された大館市と小坂町との「秋田犬NFTスタンプラリー」についても、NFTの活用の面で技術支援を行いました。

白幡:私たちがこの1年でこれらの活動をしてきたのは、事業を創出するという面に加え、より多くの個人・企業に秋田を盛り上げる活動・議論に参加してもらう機会を作りたかったという意図もあります。

繰り返しになりますが、私たちはIPをビジネスの中心に据えつつ、DAO的に個人が主導権を持ってその活動を牽引する状態が理想だと考えています。そのためには、まず我々の活動に賛同してくれる方を増やしていく必要があるので、地元の有志に活動に入っていただいたり、地元企業とパートナーシップを組んで、どうしたら秋田を良くしていけるかといったことを日々話し合っています。

▶︎Meta Akitaが手がける「秋田犬NFTシリーズ」

▶︎秋田県大館市のふるさと納税返礼品として提供されたオリジナル日本酒。返礼品にはハチ公生誕100年を記念した限定NFTも付属。2023年12月31日までに大館市へ寄付することで受け取れる。

——着々とマイルストーンを進められていますが、フェーズの後半にある「Web3村構想」や「秋田犬コイン」などのユニークかつ話題性のある取り組みに関してはどのようなビジョンを描いていますか?

白幡:「Web3村構想」や「秋田犬コイン」は、世界中の優秀な人材が主導権を持って活動に関われる状態(DAO)を形成する際に、それを下支えするインセンティブ設計や仕組みのアイデアとして検討しています。

TASUKOF:DAOを有機的に動かすためにはトークンエコノミーが重要だと思います。特に、これまで価値があったけれども数値化されてこなかった人の気持ちや意識、思いやりなどの部分を可視化できると面白いと思います。

金額換算されにくい親切な行為や社会貢献などをトークンで可視化することで、現金支払いなどの従来の価値交換手段以外の選択肢を人々に与えることができます。こうすることで人同士の交流も増えていくのではないでしょうか。

——Web3.0プロジェクトでは最初にトークンを発行し、それを用いて資金調達を行う形が多いかと思います。Meta Akitaではプロジェクトの最終フェーズにトークン発行が組み込まれていますが、これも今お話しいただいた内容を踏まえての戦略でしょうか?

白幡:そうですね。いきなりトークンを発行しても経済やインセンティブ設計がなければ意味がないと考えています。

TASUKOF:加えて、規制の影響も理由の1つです。我々の最大の目標は秋田に人と富を誘致することですが、そのためにも日本の法律にしっかり準拠しなければなりません。今後の規制動向次第で多少変化は出てくるかと思います。

白幡:世の中の動向という点では、技術のマスアダプションの状況をみていく必要もあり、それに影響を受ける項目についてはフェーズの後半に組み込んでいます。Web3.0はあくまでツールですので、ほかに適切な技術や概念が勃興してくればそちらに移行する可能性もあると思います。

世界初となるブロックチェーンを用いた犬の血統書を開発

——今後の展開や目標、意気込みをお聞かせください。

TASUKOF:2023年内には、おそらく世界初となるブロックチェーンを用いた犬の血統書発行サービスをローンチする予定です。具体的には、シリコンバレーの企業との協業で、DID/VC(証明書/分散型ID)を用いた血統書を開発しています。まずは最初に秋田犬保存会に適用し、随時ほかの犬系団体にも広げていければと考えています。

2024年には現在開発中の「秋田犬メタバース」上で「秋田犬展覧会」の開催を予定しています。秋田犬展覧会は秋田犬保存会が毎年行なっているイベントで、秋田犬を全国から集めて品評・表彰するという取り組みです。これまで現地でしか楽しめなかった本イベントをメタバース上で行い、より多くの方に秋田犬ブランドを楽しんでいただけるようにできればと思います。

白幡:我々の目標は、多くの人が秋田を盛り上げてくれるということです。加えて、ほかの都道府県でも同じソリューションが展開されていき、日本全体を盛り上げていければと考えています。

今後も革新的な取り組みを実施していきますので、ご興味がありましたらぜひお問い合わせください。パートナーシップに関しては秋田県の内外を問いませんので、お気軽にご連絡をいただければと思います。

▶︎秋田犬をモチーフに現在開発中のメタバース「秋田犬メタバース」。2024年には秋田犬保存会が毎年行なっているイベント「秋田犬展覧会」をメタバース上で開催する予定。




Profile

◉TASUKOF
2010年頃から外国証券決済や日銀国債決済を始めとした金融システムの開発/運用に従事。2016年頃から国内外で暗号資産取引所を立ち上げ、2021年に米国アイビーリーグ初のMBADAOを設立。以降、国内外で大手企業のWeb3コンサルティングやDAO設立に携わる。2022年に株式会社Meta Akitaを設立。

◉白幡 雄大
2013年頃から大手出版社でゲームメディア事業に従事し、日系の大手ゲーム会社へのプロモーションサポートなどを提供。2020年からは香港にわたり、香港大学MBAで学ぶ。卒業後はテックアクセサリーブランドのプロジェクトマネージャー職を経て、2021年にビジネスサポート会社を香港で起業。2022年からは株式会社Meta Akitaの経営に参画。

◉Meta Akita
【HP】https://akitainu-hozonkai.com/metaakita/




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