NFTにはブームと成長の過程で「インセンティブ」という概念が根付いた。これは従来の株主優待と同様、保有することによりユーザーが享受できるメリットを意味する。
まさに「優待≒インセンティブ」を実現したのだ。では、具体的にNFTを保有することで得られるインセンティブとしてはどのようなものがあるのだろうか?
本特集では、ユニークなインセンティブを得られるNFTを8種類紹介する。
時代を占う得する新常識「株優待≒NFT」
近頃「優待のあらたな形」ともいえる存在が台頭してきている。それは「NFT」だ。かつてブームが訪れた時にはアート系NFTなどに注目が集まったが、熱狂が落ち着き始めると、多くのプロジェクトや発行者がNFTを保有することの“メリット”を設計し、それを前面に押し出すようになった。
NFTを保有することで得られるメリット、いわばインセンティブも千差万別だ。
NFTの保有者に対して限定イベントへの参加権を付与することや、あたらしいNFTを得る権利、また実世界において何らかのサービスを受けることを可能とする権利や、食品及び衣類・宝飾品等と取得・交換・購入する権利など、さまざまな形がある。
こうした「優待」「インセンティブ」にフォーカスし、株及びNFTを保有するメリットになるような取り組みとしてどのようなものがあるのか解説していく。
NFT8選
編集部が独自の視点で厳選!魅力的な「NFTインセンティブ」を紹介
●NOT A HOTEL
ハウス宿泊権利をNFT化、割安で宿泊できるシステムが人気
長期間宿泊権利をメンバーシップNFT化。NFTを利用した初の試みが人気を呼び、販売されるや即完売で人気NFTになった。
NOT A HOTEL MEMBERSIP NFTは物件を購入せずに、より安い金額で「メンバーシップNFT」を購入してメンバーシップ会員になることにより、1日単位でNOT A HOTELの物件を利用することができる。
NFTはS(1泊185万円)、Y(2泊355万円)、X(3泊580万円)の3種類が用意されている。有効期間はどれも47年間と長期にわたる。
メリットは一泊数十万円かかる高級ハウスに3万円~4万円という安い価格で宿泊できること。さらにNFTマーケットプレイスで売却もでき、OpenSeaなどで取引されている。また、メンバーシップNFTの保有者限定イベントに参加できる。NFTは発売後即売の状態が続いている。
▶権利の利用方法と将来的な展開
超高級宿泊施設の数が今後、増加していくことで人気がさらに高まる。また今後不動産の価格が高騰すれば、NFTの価値も上がる。
●メディアドゥ
世界初、NFT電子書籍がセットで付いたNFT電子書籍付き新書を発売。
電子書籍付き新書の発売で2次流通においても著作者に利益が配分される。さらに独自マーケットプレイス「FanTop」で2次販売も可能に。
メディアドゥは、株式会社早川書房と共同で、早川書房が2023年6月に創刊する新レーベル「ハヤカワ新書」創刊ラインナップ全6作品について、新書と同じ内容が収録された「NFT電子書籍」がセットで付いてくるNFT電子書籍付き新書を発行した。世界初の事例となった。
電子書籍ファイル(EPUB)を活用しており、スマートフォンやパソコンのビューアで読むことが可能。また2次販売の環境整備のため、メディアドゥは独自開発したNFTマーケットプレイス「FanTop(ファントップ)」のサービス提供を開始した。
▶権利の利用方法と将来的な展開
購入者はファントップやその他のNFTマーケットプレイスで販売可能だ。今までの古本と異なり、権利の一部は著作者へも利益が分配される。今後主流になっていく。
●BONSAI NFT CLUB
盆栽を買えばNFTもついてくる。盆栽をあらたなステージへ
現物の盆栽園を設立、経営することであらたなBONSAIコミュニティ事業を展開、盆栽のデザインやルールも投票で決定。
BONSAI NFT CLUBは「盆栽を世界中のアート好きが熱狂するコンテンツへ」を目標に掲げ、活動するNFTプロジェクト。
NFT販売における収益を活用し、本物の盆栽園を設立・経営し、BONSAI NFT CLUBのオリジナルブランドBONSAIを作り上げる取り組みとなる。NFT購入者の投票でオリジナル盆栽のデザインの決定や、出張などで家を空ける際に盆栽所有者の盆栽を預かってくれるなど盆栽園を通じたあらたな盆栽コミュニティ事業も展開する。
盆栽園におけるルールや追加機能などもNFT購入者が投票で決める。
▶権利の利用方法と将来的な展開
人気盆栽になればNFTの価値よりも高い、プレミア盆栽が誕生する。現在は8,031点のNFT、今後はおにぎりまん、ビットコヌシなど著名NFTアーティストとのコラボも。
●Beeslow
環境保全持続化のコミュニティ形成にNFTを活用
初の環境NFTであるミツバチNFTを発売。コミュニティに還元された資金は環境保全のためのプロジェクトに投資される。
ミツバチの視点から得たアイデアを用いて、地球温暖化抑制のための緑化や生物多様性を促進する活動を行うBeeslow。
ミツバチと都市緑化を行うためNFTコレクションを発売。NFTコレクションはミツバチの群に見立てた1万数千ピースで構成され、働き蜂、オス蜂、嬢王蜂などのタイプに応じて価格やレアリティが異なる。制作は現代アーティストの團上祐志が指揮し、アートピースとしても注目度が高いものとなっている。
NFTの販売代金は都市のビルの屋上をミツバチの蜜源となる植物で緑化し、生物多様性の促進と不動産価値の向上を図るプロジェクト「Beeslow Garden」のハーブ苗や土などの購入にあてられるほか、Discordコミュニティ「Eusocial DAO」にも還元される。
▶権利の利用方法と将来的な展開
環境保全は人類が早急に対処すべき課題であり、コミュニティの拡大は環境を守ることにつながる。さらに土地の値段が上がるという付加価値もある。
●トーハン
NFTデジタル特典が付いた出版物は世界初の試み
出版物にNFTデジタル特典を付与。株式会社トーハンがさまざまな出版社との協力で開発した出版物に付属するNFTデジタル特典。
トーハンはメディアドゥと提携し「NFTデジタル特典付き出版物」をさまざまな出版社と開発している。
購入した出版物などの特典として入手できる、NFTを活用した資産的価値を持つデジタルコンテンツを総称して「NFTデジタル特典」と呼ぶ。
2021年10月、第1弾は扶桑社・主婦の友社の雑誌と写真集を発売した。デジタル特典を入手するには、出版物に添付されたカード上の16桁のギフトコードを自分のデバイスで読む。これによりNFTが直接Webサイト上で発行され、自身が保有していることが証明可能なデジタルコンテンツを取得できる。
2023年には是枝裕和監督と提携「特装版怪物NFTデジタル特典付き」販売し反響を呼んだ。
▶権利の利用方法と将来的な展開
NFTデジタルコンテンツ特典はいずれNFTマーケットプレイスでも2次流通が可能となっていく。そうすれば著作者にも利益が配分される。
●CHIMNEY TOWN Poubelle
タレント西野亮廣氏の作品「えんとつ町のプペル」に登場するゴミ人間のNFT
タレント西野亮廣氏が初監修のNFTコレクション。西野氏のコミュニティもあり結果は大成功。
CHIMNEY TOWNが運営協力しているDAOコミュニティ「CHIMNEY TOWN DAO」がNFTコレクション「Halloween Poupelle」を2022年10月31日のハロウィンの夜に販売した。
一般販売前のプライベートセール開始後47秒で10,000点すべてが完売となり、OpenSeaでの取引量で世界1位、トレンドランキングでも1位となった。同コレクションは、西野亮廣氏の作品「えんとつ町のプペル」に登場するゴミ人間プペルのパッチワークをイメージし、デザインされたNFTコレクション。
販売した1万点はすべて、パッチワークの色や柄の組み合わせが異なり、ゴミNFTコレクション「Poupelle」と同じような「目」が特徴となっている。西野氏が監修し、かんかんがイラスト・デザインを担当した。
▶権利の利用方法と将来的な展開
NFT画像1つにつきオークション期間は24時間で、価格は0.01ETH(当時2,300円)からスタートし、2カ月間続いたオークションの合計落札価格は220ETH(当時約5,060万円)と大成功した。
●新星ギャルバース(Shinsei Galverse)
ギャル文化をNFT化して世界に向け販売、即完売に。
ギャル×メタバース×ユニバースをコンセプトに、1980年代の少女アニメの感性を取り入れた新感覚NFTコレクション。
草野絵美と大平彩華による、日本発のコレクタブルNFTコレクション。「ギャル×メタバース×ユニバース」をコンセプトに、1980年代の少女アニメの感性を取り入れた作風で、ランダムに生成されるジェネラティブNFT。
草野氏はミュージシャンとしてライブパフォーマンスをしたり、インスタレーションの展示を発表してきたが、コロナ禍で発表の場を失い、2021年に自分の音楽をNFT化してきた。その後大平氏と知り合い、NFT発のIP展開に希望を持って起業。
強いギャルたちが主役のSFアニメ制作を目標にした、新星ギャルバースプロジェクトを始動させた。2022年に8,888体を販売するや即完売となった。
▶権利の利用方法と将来的な展開
NFTマーケットプレイスで現在も取引が可能となっている。今後の展開として、メタバースの領域に進出、世界にも進出していく。
●Jリーグ
スポーツブロックチェーンゲームで選手カードをNFT化
Jリーグの選手をNFTカードに変換。ブロックチェーンゲームだけでなくNFTマーケットプレイスを通じて売買も可能へ。
2023年2月、株式会社OneSports(ワンスポーツ)は日本初のJリーグオフィシャルライセンスが許諾されたブロックチェーンゲーム「Jリーグ トレーディングサッカー(J.LEAGUE Trading Soccer=略称トレサカ)」にNFT化機能を付けた。
それまでゲーム内で「Free to Play and Earn(無料で始めて楽しみながら稼ぐ)」を提供していたが、ゲーム内の経済圏の形成に成果が出たため、最大の特徴であるNFT化機能を実装。ゲーム外の経済圏への拡張を目指した。
NFT化機能では育成したLIMITED選手をNFT選手カードに変換、外部マーケットで売買することが可能。
▶権利の利用方法と将来的な展開
NFT化機能実装で早くもLINE NFTのゲームカテゴリで取引量がNo.1になるなど人気NFTとなった。今後はほかのスポーツ界にも進出。
関連記事
インセンティブで得する株&NFT徹底解説 魅力的な株主優待16選
NFT History and Today——歴史から学ぶNFTの現在地 前編 監修:仮想NISHI