現在、地方自治体においてNFTの活用が広がっている。特にふるさと納税と掛け合わせた取り組みは注目を集めており、今後もますます事例は増えていきそうだ。また、海外においてもNFTにインセンティブを有した取り組みがいくつか見受けられる。
そこで今回、こうしたNFTの活用事例や今後の展望等についてまとめた。
急速に広がる地方自治体によるNFT活用
新潟県長岡市の山古志地域におけるNFTプロジェクト「Nishikigoi NFT」を皮切りに、地方自治体によるNFT活用が加速している。
「Nishikigoi NFT」は山古志の“デジタル村民”であることを示すNFTとして機能し、今やWeb3.0要素を活用した地方創生事例として著名な「山古志 DAO」を通じてさまざまな取り組みが進められている。
地方創生というと、近年注目度が高まり利用者も増加し続けている“ふるさと納税”を想起する人も少なくないだろう。ふるさと納税は生まれ故郷や自らが応援したい自治体への寄付を行える制度で、2008年より開始された。
寄付を行うことで自治体から返礼品として特産物を受け取ることができ、さらには寄付金のうち自己負担額の2,000円を超える金額については全額が控除の対象となるため、非常にお得な制度として活用されている。
そんなふるさと納税の返礼品として、現在NFTを用意する自治体が増えている。各自治体の名産品や観光地等とコラボしたデジタルアート、ゆかりのあるイラストレーターらによるオリジナルデザインのNFTなど、さまざまなものがある。
新潟県ふるさと納税NFT
特に、「Nishikigoi NFT」発祥の地でもある新潟県は、自治体によるNFT活用が非常に活発だ。新潟県三条市では、燕市との共通返礼品としてふるさと納税にNFTトレーディングカード「燕三条NFT 匠の守護者」を採用した。複数自治体が採用するNFTの共通返礼品は、この取り組みが全国初となった。
「燕三条NFT 匠の守護者」は燕三条にある工場を中心としたものづくり関連企業や団体を擬人化したもので、所有者には同地域で使用可能なイベント参加券や飲食店クーポンなどの特典を用意する。発表では、地方活性化に向け「燕三条DAO」とも連携すると表明していた。
また、新潟県粟島の粟島浦村ではふるさと納税を通じて「デジタル島民」になることができる「島民証明証NFT」を発行した。デジタル島民に対するインセンティブとしては、粟島におけるイベントの参加権や名産品である魚類及び酒、そして同地での取り組みを決めるための投票権などが付与される。
従来のように名産品を受け取れるだけでなく、自らが応援する自治体の未来を近い距離感で考えることができるというのは、ふるさと納税を利用する意味をさらに高める取り組みになるといえそうだ。なお、こうしたデジタル上の住民として権利を付与する取り組みは新潟県以外でも見受けられる。