昨今、VR技術の進歩によりさまざまな分野でVR技術が活用されている。
たとえば、医療の現場では外科手術のシミュレート、教育の現場では職業訓練のシミュレートなどに活用されるなど、すでに実用されている技術としてVRは存在している。
それとともにVR 市場の規模も年々拡大しており、2024年現在において国内市場規模で約1,454億円と推計、さらに今後5年間で48.32%の成長を見込んでおり、2,156億円に達すると予測されている。
そんななか、米ウォルト・ディズニー・イマジニアリング社が2024年1月に現在開発中として発表したのがVR歩行デバイス「Holo Tile(ホロタイル)」だ。
ウォルト・ディズニー・イマジニアリング社とは
ウォルト・ディズニー・イマジニアリング社とは1955年にオープンした米アナハイムのディズニーランドのため、ウォルト・ディズニー氏が設立した会社が祖となった会社で、イラストレーター、建築家、技術者などの多彩な才能が集まっていることで知られている。
現在に至るまで70年の間に「イッツ・ア・スモールワールド」の人形たちが着る世界の民族衣装、「カリブの海賊」の愛嬌あふれる海賊たち、SF 世界を形にした「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」や「アベンジャーズ・キャンパス」まで、世界のディズニー・パークにおけるテクノロジー開発・アトラクション設計などを行っている。
Holo Tile(ホロタイル)
そんな世界においても有数なクリエイティブ集団が発表した最新VR技術が「Holo Tile(ホロタイル)」だ。
ホロタイルは世界初の多人数対応で全方向対応の拡張可能な動く床、つまり、仮想空間において多人数でVR空間を共有でき、なおかつ、各人が任意の方向に自由に歩くことが可能になる床だ。
臨調感溢れる仮想現実と拡張現実の体験を実現するものとして注目されている。開発したのはウォルト・ディズニー・イマジニアリング・リサーチ&ディべロップメントのラニー・スムート氏。
米国内において現在に至るまで100を超える特許を取得しており、米国史上最も多作な発明家のひとりとして著名な人物で、1999 年頃よりディズニー社に在籍、スムート氏の特許のうち74件はディズニー社での25年間に取得している。
スムート氏が携わったもので著名なとこ ろをあげると、スターウォーズのドロイドBB-8の駆動システムやスター・ウォーズホテルの体験用ライトセーバー、アニマトロニクス用の動く目玉、なども開発しており、また、アトラクションでは東京ディズニーシーの要塞探検などの開発にも携わっている。
このような実績からディズニー社からウォルト・ディズニーに続き、全米発明家の殿堂入りも果たしている2人目の人物でもある。
ホロタイルについてYouTube で公開されたスムート氏自身の解説によると、ホロタイルは位置的には移動しないが、体感的にはどこかに向かって歩いたり走ったりしている状態になるため、VRと組み合わせると一定の位置に居ながら仮想空間を歩き回ることが可能になるという。
また、世界初の多人数対応となり、全方向移動可能、モジュラーで拡張可能なトレッドミルフロアとしている。各人の位置が固定されるため、それぞれ別の動きをしても隣の人と衝突しないようになっており、さらにプログラミング次第では人を乗せた台をホロタイル上で遠隔操作することも可能で、1つの立ち位置でできる人間の動きに自由度が加わるため、ダンサーやパフォーマーが使えば可能性は無限に広がるとしている。
Holo Tile(ホロタイル)上での遠隔操作も可能に
まだ研究段階のなかでもホロタイルは注目されている技術ではあるが、実際にこの技術が実用段階となった時にどのような用途が考えられるだろうか。
まず考えられるのはディズニーランドのアトラクションに革新をもたらす可能性だ。ディズニーランドでは常に最新技術を取り入れたアトラクションを運営している。
多人数対応で全方向移動可能なホロタイルをアトラクションに導入することでユーザーが物理的に動きながらVR 空間を探索することができるといった没入感のあるアトラクション、たとえば、アラジンの魔法の絨毯に乗って自在にアラジンの世界感をVR体験できるといったものが誕生するかもしれない。
また、ディズニーランド内のショーやパレードなどでダンサーやパフォーマー、ディズニーキャラクターがホロタイルを活用したパフォーマンスを展開したりするなど、ショーやパレードをさらにアップグレードする演出に活用されることも予想される。
さらに展示スペースや体験エリアなどに活用することでユーザーのディズニー世界におけるインタラクティブな体験を実感することに一役買うことも考えられるだろう。
ホロタイルはディズニー社で開発・研究されている技術だけに実用段階になった時、まずはディズニーランドにおけるアトラクションで登用されることが予想されるが、その一方でそのほかの分野においてもホロタイルはさまざまな可能性を含んでいる。
たとえば、ビジネスにおいては、企業がホロタイルを利用したプレゼンテーションやミーティングを行うことでよりエンゲージメントの高い会議やプレゼンが実現できるようになるだろうし、実際のビジネスの現場においてはホロタイルを利用して製品やサービスを展示することで、顧客がVRで製品体験できるなど、販売促進に貢献できると考えられる。
また、教育分野でも同様だ。ホロタイルを導入した学習環境を構築することで学生の興味を促すことができるほか、これまで見学学習だった社会見学などは実際にVR空間における体験学習となる可能性もあり、運動や部活動においてもより健康でより安全な運動環境の構築にも役立つ可能性を秘めている。
そのほか、日常生活においては、もしフィットネスやエクササイズ機器として実用の目途が立てば、生活環境を選ばずに効果的な運動が可能になるし、エンターテイメントの分野ではアーティストのライブや映画やゲームなどをよりリアルに体験できるプラットフォームとしての活用も期待できる。
現段階ではまだ研究段階で実用段階に至るまでにまだ時間がかかるかもしれない。
また、実用段階になってもおそらく一般的に当たり前の技術になるまでにはコスト面でも負担がかかることが予想される。
しかし、ホロタイルは実にさまざまな可能性を含んでいる技術だけではなく、VR体験の可能性をワンランクもツーランクも引き上げる革新性を秘めた技術だ。
日々進化し、あらたな分野を開拓していく技術として今後注目していくに値する技術なのは確かである。
VR関連のガジェットは日々進化
VR空間に広がる音楽制作スタジオ 「KORG Gadget VR」
これまでiOS版から始まり、Mac版、Plugin版、Nintendo Switch版とさまざまな環境に対応してきた音楽制作ソフトウェア「KORG Gadget」がVR空間にも対応。目線を動かすだけで各トラックが見渡せるように3Dガジェットとシーケンスモニターを360°囲むように配置。直接触れているかのような感覚のまま、シームレスに曲作りが行えるVR空間が広がっている。KORG Gadget VRに対応したVRヘッドセットを装着するだけで目の前が自分専用の音楽スタジオになる。
スマートフォン接続だけで使えるスマートグラス 「au Smart Glasses」
KDDIではこれまで博物館や展示会において展示作品を視覚的に解説する「auビジュアルガイド」の提供や中国Nreal社と提携して「Nreal Air」といったスマートグラス を販売するなどVR/XR事業を推進してきたが、同社が2024年3月15 日に発売した最新ウェアラブルデバイスが「au Smart Glasses」だ。
専用アプリのダウンロードやインストール不要でパソコンやタブレット、さらにiPhoneやXperiaなど30機種以上のスマートフォンに接続するだけ利用できる。
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