2022年に設立されたNTTドコモのweb3を推進する子会社「NTT Digital」
web3領域の入り口となるデジタルウォレット「scramberry WALLET(スクランベリーウォレット)」のリリースを皮切りに今年いよいよ本格始動。NTT Digitalの取締役でありサービス開発に携わっている遠藤英輔氏に、web3に対する想いや、次なるサービス展望などについて語ってもらった。
プラスアルファのあたらしい価値提供を目指す
——2022年に親会社のNTTドコモがweb3領域に6,000億円を投じると発表しましたが、あらためてなぜNTTグループとしてweb3領域に注力することにしたかお聞かせください。

遠藤英輔(以下、遠藤):これまでNTTグループとして、通信インフラを支えてきたという自負がありますが、通信技術にweb3技術を絡めることで、プラスアルファのあたらしい価値を提供できるのではないかと思いました。
また、web2とweb3のような区切りでブロックチェーン技術について語られることがありますが、我々としては連続性のある技術であり、従来の技術ではできなかったことをさらに加速し、進めていくための手段だと捉えています。
ブロックチェーン技術を中心に価値の可視化、そして価値の移転でインフラを支えるだけでなく、プラスアルファの事業を創出できるはずだというのが最初の着眼点でした。
6,000億円という数字が注目されがちですが、安定したインフラ基盤を作っていくとなると、自然と規模が大きくなります。6,000億円という数字に意味を持たせたかったのではなく、腰を据えてweb3を絡めたインフラを作っていきたいという意思表示の発表でした。
皆様の生活に溶け込む生活インフラになるようなサービスを作るために長期的に取り組んでいきたいと思っています。
——今後も投資の可能性はあるのでしょうか?
遠藤:我々はトークナイゼーションやトークンの力に価値を感じていますので、それに資する投資は今後検討していきたいと思っています。
また、ブロックチェーンに縛られる必要もないと考えており、たとえばトークナイゼーションやトークン化を進めていくためにAI技術が有効であれば、そこに対してアプローチを検討する可能性も十分あります。
——web3領域の現状の課題についてはどのように捉えていますか?
遠藤:日本においてweb3は、まだまだ懐疑的な意見を持たれる方が多いのが現状です。実際、一部の技術者にしか理解できない技術であり、「web3=暗号資産」という考え方から、危険なイメージを持たれている方も多いというのが実態でしょう。
我々はそのイメージも含め払拭していきたいです。何より暗号資産以外にもweb3の思想であるトークナイゼーションだけでなく、ファンコミュニティの活性化といった情緒的な観点でも意義のあるユースケースを生み出すことが大切であると思っています。
我々は、web3の技術が「知らないうちに使われていること」が理想の形であると思っています。日常生活のなかで強く意識することなく、当たり前のように我々のサービスを使っていただく状態を作っていきたいです。
——通信インフラという部分ではNTTドコモというブランドが強い武器になるかと思いますが、NTT Digitalとしてどのように活動をしていこうと考えていますか?
遠藤:NTTグループとしてこれまでに培ってきた技術と知見を持ち合わせ、秩序ある環境作りに貢献したいと考えています。
現状、web3の技術が先行し、法整備等が追い付いていないなかで、我々が目指す安心・安全なweb3体験を実現することは難しいと考えています。我々がトラストアンカーとしての役割を担い、ルール整備だけでなく、少しでもweb3に対する懐疑的な認識を変えていけたらと考えています。
我々自身、インフラとして皆様が使うサービスの裏側にいる存在であり、そのスタンスはweb3になっても変わらないです。web3においても、すでにあるアプリやサービスの裏側で「実はNTT Digitalのインフラが使われている」状況が望ましいと考えています。
また、現在我々はNTTグループとして9,800万(2023年12月末時点)にのぼる『dアカウント』ユーザーを抱えています。このユーザーの方々に対して、NTTグループのサービスとも連携し、我々のサービスを将来的に提供していきたいと思っています。
——web3領域に取り組まれている他企業もありますが、NTT Digitalとしてはどういったアプローチをしていくのでしょうか?
遠藤:現状、このビジネスが抱えている状況が1995年頃のインターネットに近い状態ですので、競合という考えを持つよりもお互いが盛り上げていく方が意義のあることだと考えています。何よりグローバルにチャンスのある領域なので切磋琢磨しながら取り組んでいきたいと考えています。