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「INTMAX(イントマックス)」Co-Founder藤本真衣独占インタビュー

2024/03/21Iolite 編集部
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「INTMAX(イントマックス)」Co-Founder藤本真衣独占インタビュー

INTMAX(イントマックス)でブロックチェーンの分散性を維持しつつ、手数料を低く抑える

「ミスビットコイン」の愛称で知られる藤本真衣氏。イーサリアムの分散性や安全性をそのままに、手数料を安くするということをミッションにした「INTMAX(イントマックス)」を通して、世界の人々に財産権を与えることをミッションとした、彼女のあたらしい挑戦に独占取材を通して迫った——

社会課題の解決を目指したきっかけ


——藤本真衣さんの現在の活動をお訊かせください。

藤本真衣(以下、藤本):現在「INTMAX(イントマックス)」というイーサリアムのレイヤー2プロジェクトに注力しています。

イーサリアムは、多くのユーザーが利用する際に限られたリソースを共有するため、手数料(ガス代)が高騰するという問題があります。これはイーサリアムの経済圏の拡大(スケーラビリティ)にも影響しています。

なかにはブロックチェーンは分散性を犠牲にして手数料を安くする戦略を取っているチェーンもあります。しかし、本来のブロックチェーンの良さを維持する為に分散性を維持しつつ、手数料を低く抑えるべきだと思っています。

イーサリアムの分散性や安全性をそのままに、手数料を安くするということをミッションにしたのが「INTMAX(イントマックス)」です。

——現在に至るまでの経歴についてお聞かせください。

藤本:大学時代には教育関連の仕事をしていました。学校に行けないお子さんや勉強が苦手な子供達を対象とする家庭教師の会社でしたので、さまざまな悩みを持つ方々と接しました。

この仕事を通じて、勉強ができるようになり学校に行くきっかけになったという方々を間近でみて、非常にやりがいを感じました。

その経験がきっかけで、19歳の時に大学を中退し、その後約7年間家庭教師の仕事に従事することになります。

ありがたいことに家庭教師のお仕事は、自分のなかでも納得のいく結果を出せました。26歳になった頃、もっと大きな社会の課題を解決する仕事につきたいと思いました。

もちろんそれまで関わってきた勉強で悩んでいる子供達の悩みが小さいとはいいません。

しかし、毎日生きていくということ自体に問題を抱えている子供達が世界にたくさんいることを知り、「自分が何かできないかな?」と思い始めたのです。

そこで「キッズ時計」を運営するアイキッズ株式会社にお世話になることになりました。

その会社では子供の笑顔を軸に世界をつなぐウェブコンテンツを提供していたのですが、ちょうどその頃に東日本大震災が起こった事がきっかけで、支援を求めている世界中の子供達を支援する寄付プラットフォームを立ち上げていたのです。

プロジェクトを進めるなかで、寄付を集めたり送ったりする際に、団体のみに寄付するのではなく個々人への支援を目指しましたが、送金手数料の高さが課題となっていました。

海外の送金手数料は1回送るのに約7,000円。時間も手間もかかります。そんな時にビットコインと出会い、圧倒的に低い手数料(10円前後)と手軽さに感動しました。

この出会いがきっかけで、起業の準備を進め、株式会社グラコネを設立し、東京に拠点を移しました。その後、暗号資産寄付プラットフォーム「KIZUNA」を設立することになります。

INTMAX創業の経緯

——そのようなご経歴から、INTMAX(イントマックス)社の目指す方向へどのように派生したのですか?

藤本:先程お伝えした通り、国境を跨いでも格段に安い手数料で送金できる事が魅力ですが、ここ数年暗号資産の送金手数料があがっています。

その課題を解決できないかと考え始めたのがきっかけです。私はブロックチェーンが世界中の人々に平等に使えるようにあるべきだと考えていますが、手数料が高くなってしまうと、結果的には先進国の富裕層しか利用できなくなります。

そのため、新興国を含む世界中のどこに住んでいる人でも平等に使えるブロックチェーンを目指すようになりました。私たちのミッションは「世界の人々に財産権を与える」ことです。

ビットコインでは、既にライトニングネットワークという素晴らしいレイヤー2技術により安い手数料を実現しています。私たちはイーサリアムのレイヤー2で拡張性を実現します。

——プロジェクトを進めるうえで、藤本真衣さんの役割はどのようなものですか?

藤本:私はCOOとして事業全体に必要なことを全般的に担当しています。昨年、シードラウンドを閉じた際は、まだ無名の小さなプロジェクトだったので、これまでの12年間の業界へのコミットメントと信頼、つながりを活かして助けてもらいながら資金調達を行い、プロジェクトを遂行してきました。

——イーサリアム財団からも構想を認められて、助成金が交付されたというのも拝見しました。

藤本:INTMAXは、2017年にスケーラビリティの問題を解決するための技術として、話題となったPlasma(プラズマ)という技術から多くのヒントを得ています。

共同創業者である日置は、以前からPlasmaの研究に携わり暗号的な議論に加わっていました。その活動も認められ、今回の助成金交付につながったのだと思います。

実はPlasma自体は、2017時点ではいくつかの課題が残っていました。しかし、2023年11月にVitalik Buterin氏が 「Return of Plasma」の記事を書きました。

そのなかでINTMAXについても触れられています。再度この技術が注目されていることを嬉しく思います。

2月25日に私たちは、メインネットローンチα版であるPlasma Nextをローンチ予定ですが、このバージョンでは、Plasmaでは不可能といわれていたことを可能にします。ぜひ注目していただけると嬉しいです。

——現在、Web3.0の関連技術が社会実装に向けて進んでいます。近い将来に読者の皆さんが触れる機会がありそうな領域やプロダクトについて、藤本さんの見解を教えてください。

藤本:実は私はまだ「Web3.0」という言葉に慣れていないんです(笑)どちらかといえば“仮想通貨”やブロックチェーンという言葉に馴染みがあります。一方で、Web3.0という言葉は多くの人を巻き込むことができたと思います。暗号資産は少し怖い印象を持たれがちですし、ブロックチェーンは技術的で難しく感じられるかもしれませんが、Web3.0はWeb2.0からの進化として捉えやすいキャッチーな言葉ですよね。

もう1つ大きく業界の発展に貢献したと思うのはNFTの流行です。NFTの登場により、多くのファンを抱えるアーティスト、エンタメ業界、音楽業界が暗号資産に触れる機会を得ました。そしてこれからは実社会での利活用がさらに増えると思います。たとえば、チケットをNFTで発行したり、不動産取引に利用するなど、リアルワールドとの接点が生まれるような形でのNFTの活用は進み、ブロックチェーンのより自然な使われ方が広がると考えています。

あたらしい時代にチャレンジする人が増えるように

——一方で、マスアダプションというには時期尚早であるようにも思います。藤本さんはどのように考えていますか?

藤本:Web3.0関連技術の普及には大きく2つの障壁があります。まず1つ目は、正しい知識を身につけることです。

暗号資産ウォレットのUI/UXは近年かなり向上しましたが、それでも正しい知識がなければ思わぬところで自分の資産を失ってしまうことがあります。

また、安全な保管方法があるのに、そのやり方を知らないで放置する人が多々います。なので、正しい知識を広めていくのがこれからは特に重要になると考えています。

もう1つの問題は、詐欺の横行です。特にバブル期には詐欺が多く、実際に被害に遭う人がいたり、噂を聞いて怖くなって離れてしまう人もいます。

私自身もフェイクアカウントの問題に直面しており、フェイクアカウントがお金を集め、実際に私が詐欺をしていると誤解されることもあります。

上記の2つには共通して「怖い」と感じる点があります。NFTや暗号資産を安全に保存できるかどうか、騙されるリスクがあることがマスアダプションに至らない大きな原因だと思います。

しかし、世界的にみれば暗号資産ユーザーは常に増え続けています。この大きな時代の変化に取り残されることの方が、本当のリスクです。

正しい知識を身につけていくことであたらしい時代にチャレンジしていく人が増えるよう、私達は事業を通じてお手伝いしていければと思っています。

世界の人々に財産権を与える

——1月11日、INTMAX社が手掛けるINTMAX Wallet公式から、ウォレットアドレス不要でリンクを送るだけで暗号資産を送れる、という機能がアップデートされたと拝見しました。詳細を説明いただけますか?

藤本:今までの流れだと、受取人のウォレットアドレスを教えてもらうことから始まると思うのですが、今回リリースされた「Link送金機能」では、まず送金者がリンクを生成します。

そのリンクを受取人に共有し、受取人はリンクをクリックして、電話番号やメールアドレス、Discord、Twitter(現X)等のSNSを使って認証を行って、認証が完了すると、自動的にトークンが入ったウォレットが受取人のために生成されるという仕組みです。

すでに「INTMAX Wallet」を持っている方は、あたらしくウォレットが生成されるのではなく、持っているウォレットに入金されます。

たとえば、今日のスタッフの皆さんに私から「今日ありがとうございました」とリンクを送って、認証してもらうと生成されたINTMAX Walletのなかに1,000円分のイーサリアムが入っているみたいに、サプライズでプレゼントするのもいいですよね。

——事業者目線でも画期的だなと思いました。INTMAX Walletのそのほかの特徴はありますか?

藤本:私たちのウォレットはFHE(完全同形暗号)というあたらしい暗号技術を使用しています。

一般的なウォレットはバックエンドでシングルシグネチャ(単一署名)を使用していますが、私たちのウォレットはマルチシグネチャ(複数署名)を活用しています。

これにより、セキュリティが大幅に向上しています。Link送金という便利な機能と安全性が強みなので、世界中の人に使ってもらいたいですね。

現在、私達はナイジェリアのマーケットにも力を入れているのですが、暗号資産の管理でセキュアなハードウェアウォレットは、ナイジェリアの平均月収と同じくらいの高価な値段で販売されなかなか手が届きません。

そんな方々の為に、INTMAXウォレットが、より手頃でセキュアな選択肢を提供したいと考えています。

INTMAXウォレットとINTMAXプロトコルは将来的に統合

——セキュリティの観点でもう1つ気になったのが、INTMAXプロトコルでは個人情報の一部を隠せるそうですね。プロトコルについてもお訊かせください。

藤本:INTMAXプロトコルは、オンチェーンプライバシー機能があるので、取引情報を隠しプライバシーを守ることが可能です。なので、日常的な支払い手段として使うのに必要な要件を満たしています。

ブロックチェーンの履歴は誰でもみることができますが、プライバシーやセキュリティの観点でいうと、全部みえることが問題になることもあります。

たとえば治安の悪い地域だと、オンチェーンの取引情報がわかるとその人の資産が推測できてしまうので、犯罪に巻き込まれることもあります。

プライバシーというとAML(アンチ・マネーロンダリング)の観点を心配される方もいるかもしれません。

INTMAXは万が一、政府等から要求があった場合、バリデータはトランザクションを提示できるので、AMLに対しても規制に準拠して運用する事が可能です。

INTMAXウォレットとINTMAXプロトコルは将来的に統合される予定で、現在INTMAXウォレットはポリゴン、アービトラム、イーサリアムメインネット、オプティミズムに対応していますが、INTMAXプロトコルもこれらのプラットフォームに組み込む予定です。

最新の暗号技術で実現したより安全性の高いウォレットと、世界一といっても過言ではない安い手数料の分散プロトコルがあわさり、所得に関係なくあらゆる世界の人の日常使いの決済に適したプロダクトになりました。

INTMAXによって「世界の人々に財産権を与える」というミッションの実現に向けて着々と進んでいる実感があります。

——ビットコイン現物ETFが米国で承認されました。藤本真衣さんは、「ミスビットコイン」という愛称もお持ちだと思うので、親和性が高い話題だと思います。承認した時にはどのような心境でしたか?

藤本:2011年の12月15日に初めてビットコインを手にして、それからもう13年ぐらい経ちますが、ETFが承認されたことは時代の大きな節目だと感じています。初期の頃はリバタリアン的な発想の人々も多く、サトシのホワイトペーパーのことを熱く語ったり、紙幣を破り「これはただの紙だ」といって既存の金融システムの問題点を問いただすパフォーマンスをする人がいたりと、いろいろと熱い動きがありました。あ、紙幣を故意に破るのは犯罪なので破かないでくださいね(笑)

ETFが通った直後は実をいうと、ビットコインが革命を起こすのではなく、既存の金融システムの一部になってしまい、ビットコインの持っていた革命性が失われてしまった気がして寂しさを感じました。でもよく考えると、ビットコインは取り込まれたのではなく、ビットコインが既存の金融システムを取り込んだのだと気付きました。

ビットコインはETFになってもコントロールできるものではないので、ビットコイン自体が変わることはない。ETFが承認されたことで、ビットコインがより広く認められ、多くの人々に受け入れられるようになって、影響力を持つと考え、今はポジティブに捉えています。

世界中の人々に決済の利便性と安全性を提供

——最後にINTMAX社、そして藤本真衣さんの今後の目標を教えてください。

藤本:ビットコインが生まれた頃に感じた、海外送金の手数料の安さや世界中に平等な財産権を届けられるという素晴らしさをINTMAXは引き継いでいるところがあります。

サトシナカモトのホワイトペーパーが出てから15年以上も経つのに、その根幹でもある決済の部分に依然として課題がある。このままで終わりたくなくて事業としてのチャレンジを始めました。

INTMAXとしては、世界中の人々に決済の利便性と安全性を提供し続けることが目標です。

個人的な目標としては、長年続けている「Japan Blockchain Week」の開催を継続し、日本と世界の橋渡しを行いながら業界の健全な発展に貢献したいと考えています。

今年のJapan Blockchain Weekのメインカンファレンスである、「Japan Blockchain Week Summit」は、7月4日から7月6日に京都で開催されます、現地でお会いしましょう!


Profile

◉藤本真衣(Mai Fujimoto)
Co-Founder
2011年にビットコインと出会い、国内外で暗号資産・ブロックチェーンの普及に尽力。ミスビットコインというニックネームで親しまれてきた。日本最大級のブロックチェーンカンファレンスであるJapan Blockchain Weekの立ち上げや、Japan Block chain Associationの顧問を務めるなど、業界の発展に寄与。日本初の暗号資産による寄付サイト「KIZUNA」や、ブロックチェーン領域に特化した就職・転職支援会社「withB」、ブロックチェーン領域に特化したコンサルティング会社「グラコネ(Gracone)」を創業。現在はスイスを拠点に、イーサリアムのレイヤー2であるINTMAXを共同創業し、あらたなイノべーションに取り組む。


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