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セキュリティトークン領域の今後の展望、そして将来的な在り方とは? 大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)朏仁雄氏に独占インタビュー

2024/07/28 12:15 (2025/04/09 11:58 更新)
Iolite 編集部
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セキュリティトークン領域の今後の展望、そして将来的な在り方とは? 大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)朏仁雄氏に独占インタビュー

パブリックブロックチェーンでST(セキュリティトークン)が発行される未来を見据えて

不動産受益権を始めとする有価証券をトークン化し、小口で投資可能なセキュリティトークン(ST)が、本格的な普及に向け市場を拡大させている。

昨年12月には、SBIグループや三井住友フィナンシャルグループらによって創設された大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)においてSTの二次流通市場サービス「START」の運営が開始され、機運は一層高まった。

そんなODXを率いる代表取締役社長の朏仁雄氏に、ODXの今後やSTのさらなる普及に向けどのような起爆剤が必要かうかがった。


暗号資産が広めた、既存金融とは異なる概念

——ODXでは昨年12月に国内初となるSTの二次流通市場サービスとして「START」を開設しましたが、リリースから現在に至るまでを振り返りいかがですか?

朏仁雄(以下、朏):立ち上げはSTの流通について先がみえていなかったなかでの取り組みとなりました。

たとえば不動産小口化商品であれば、組成するアセットマネジメント会社や信託銀行、募集・販売をする証券会社、STが記録されるブロックチェーンを用いたシステム基盤を提供するプラットーフォーマーなど、さまざまな関係者との連携が必要になります。

それらの関係企業を念頭に商品の規格を標準化しないといけません。これが最大のネックだったのですが、標準化するために私どもが業界関係者の方々に声をおかけして協議の場をもたせていただきました。

しかしながら、各社の持つシステムや業務フローが異なり、それに応じて案件により契約などの決め事も異なります。たとえば、ある案件での信託銀行と証券会社の取り決めが、別の案件を扱う信託銀行と証券会社のそれとは違うということもあるでしょう。

そうした事情を吸い上げることに時間がかかりまして、1年半ほどをかけて商品と業務プロセスの標準化を行いました。関係者の皆様には、マーケットができたことで何ができるのかということがクリアに見通せない段階で多大なるご協力をいただきました。本当に深く感謝しております。

——STには発行や管理などにかかるコストの抑制や、トークン化に伴う小口化により幅広い投資家が投資を行いやすいなどのメリットがありますが、朏さんが思うSTの最大のメリット、そして期待することはなんでしょうか?

朏:トークン化することの意味合いを語る上で、たとえば暗号資産というのは当然のことながらブロックチェーン上のデータで誰もがみることができます。

ウォレットは基本的に個人でも所有することができます。ウォレットに暗号資産を入れた瞬間、交換業者から離れて個人の管理下に移ります。これは既存の金融機関が管理する各種商品からすれば画期的なことで、まさに暗号資産が広めた概念であると認識しています。

またブロックチェーンの原理原則論からすると、トークンというのは極めて小さい単位まで小口化することができます。手数料自体はかかるかもしれませんが、限界的なコスト増に直面することも考えにくいでしょう。

あと、ブロックチェーンの場合は分散型台帳を通じて皆が同じデータを共有できますので、銀行の重厚長大なシステムなど、既存金融のシステムとは発想が真逆です。こうした発想は価値を移転させる上で大きなメリットにもなり、STにも良い効果をもたらすのではないかと考えています。

STに関して法整備がされると聞いた時、すぐに二次流通市場の創設を考えました。しかし、現在もまだ規制や税制面で課題があるように、整理しなければならないことが多々あります。

たとえば、パーミッションド/プライベートブロックチェーン上でしかSTを動かせない点もそうです。ブロックチェーンの良さを活かすのであれば、パーミッションレス/パブリックブロックチェーンを活用することでしょうが、そのためには現状とても高度な次元の話となっていて、解決しなければならない課題がいくつもあります。

ただし、私自身はいつか時代が証明してくれるというか、いつかパブリックブロックチェーンでSTが発行される未来もあると考えています。そのために担保しなければならないのは、詐欺・盗難や不公正な取引が生まれないようにする投資家保護や、マネーロンダリング対策などがあげられます。

しかしここが非常に難しいところで、規制しすぎたら面白味のないものになってしまうし、自由度を高くすれば悪用されるリスクが高まる。このバランスをいかにとるかが今後の焦点になるでしょう

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