Web3.0

世界基準のサービスでまだ見ぬ価値を提供—— HashPort 吉田世博

2024/03/31Iolite 編集部
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世界基準のサービスでまだ見ぬ価値を提供—— HashPort 吉田世博

Web3.0が作り出す価値にすべての人がアクセスできる世界へ

Web3.0技術の普及と発展に注力する日本企業であり、IEOでは国内第1号案件となったパレットトークン(PLT)が大きな注目を集めた。

BtoB及びBtoCにおいてブロックチェーンを活用したソリューション・サービスを提供する。大手金融機関との連携も強みの1つで、高品質なサービス提供を目指す。


——HashPort創業の背景をお聞かせください。

吉田世博氏(以下、吉田):起業する前2016年から2017年にかけて、ボストン・コンサルティンググループで働いていました。

その時期にブロックチェーン技術に魅力を感じ、この技術を活用して日本の社会を変革できるような事業を立ち上げることを考え始めました。

2018年にコインチェックの事件が発生し、ブロックチェーンを用いた活動が一時的に沈静化しましたが、私はこの分野が再び盛り上がることを信じていました。

ちょうどその頃、、クオンタムリープ株式会社の出井伸之さんとの会話のなかで、ブロックチェーンを通じて社会を改善したいという想いを伝えたところ、若いうちに挑戦するべきだと助言を受けます。

この助言を受けて、2018年7月に起業。最初の半年間は案件がなく、個人でコンサルティング業務を行うなど苦労もしましたが、2019年1月、ビットポイント社からの依頼で新規の暗号資産に関する仕事を始め、日本の取引所に上場する暗号資産の調査業務を行うようになりました。

ありがたいことにこの出来事をきっかけとして、当時の日本で上場予定の通貨調査の大部分をHashPortが手掛けることになりました。

一方で、私が起業した当初の目的、ブロックチェーンを使って社会システムを変革することからは離れているとも感じていました。

これが2020年に、より使いやすく安全なブロックチェーンネットワークを日本に提供するためにHashPaletteを設立した理由にもなっています。

現在、HashPortはコンサルティングとソリューションを提供し、HashPaletteではPLTトークンの発行や自社で企画したコンテンツの提供、自社スタジオという形で自社のチェーンに紐づいたゲームを制作しています。

大阪・関西万博への「EXPO 2025 デジタルウォレット」の協賛

——2025年に開催される大阪・関西万博に独自の電子マネーやポイントを保管・管理できる「EXPO 2025 デジタルウォレット」の協賛が決まり、2023年終わり頃からJR西日本と連携してNFTスタンプラリーを企画するなどユニークなプロモーションをされています。Web3.0領域におけるウォレットの意義について、吉田さんの考えをお聞かせください。

吉田:ウォレットというのは、ユーザーにとってWeb3.0体験のために必要なものだと考えています。同時にボトルネックにもなり得ます。このボトルネックをいかにクリアできるかどうかが重要です。

多くのユーザーがウォレットを使うようになれば、同時にWeb3.0のコンテンツも増えていきます。コンテンツの活性化には多くのウォレットユーザーが必要なのです。

今回大阪・関西万博の決済アプリの「EXPO2025デジタルウォレット」はHashPortの基盤が使われているのですが、大阪・関西万博を通して、約1,000万アカウントが作られる見込みです。

メタマスクが3,000万アカウントであることを考えると、世界でもトップクラスのウォレットとなる可能性を秘めていると思います。

大阪府様やJR西日本様と提携して、今後もさまざまなサービスを提供予定であるほか、SBTデジタルパスポートといったデジタルアイデンティティとトークンの統合により、さまざまなサービスへのアクセスが可能になるといった多彩なサービスが展開される予定です。

ウォレットの更なる普及により、Web3.0体験が日常生活に根ざしていくことを期待しています。

従来の交換業と異なる特定のサービスに限定した、より多様化され簡素化されたライセンス制度の設立が求められる

——吉田さんは日本暗号資産ビジネス協会の理事もされていますね。現在の暗号資産業界が直面している最大の課題は何だと思いますか?また、これらの課題にどのように取り組まれていますか?

吉田:事業の多様性に合わせた規制の整備があげられると考えています。現在、日本におけるWeb3.0の事業は主に暗号資産交換業に集中していますが、実際にはより幅広い種類のサービスがあって良いはずです。

しかし、日本ではトークンを扱う場合、暗号資産交換業者のライセンスが必要となることが多く、サービスにトークンが含まれる場合には、それが交換業に該当するか、トークンの取引にあたるかという議論が生まれます。

Web3.0スタートアップが安全に事業を展開できる環境が整っていなければ、ベンチャーキャピタルからの資金提供も期待できないでしょう。

そのため、従来の交換業とは異なる特定サービスに限定した、より多様化され簡素化されたライセンス制度の設立が求められます。

スタートアップでも取得しやすいような、サービス内容に合わせたライセンスの確立が必要だと思います。

HashPortの競争優位性

——2018年、HashPort創業から長きに渡ってWeb3.0領域での事業を行われていますが、HashPortならではの強みや競争優位性は何ですか?

吉田:最大の競争力は、既存の金融機関やインフラ事業者ともコラボレーションが可能なサービスを提供できる運営基盤にあると思います。

たとえば、大阪・関西万博で我々が提供するウォレットサービスは、りそなホールディングス様からのポイントサービス提供や、SBIホールディングス様による運営といった形で、既存の金融機関との連携も実現しています。

決済管理面では、当社は1社当たり1,500のセキュリティ項目をチェックしており、これにはWeb3.0特有のあたらしいカテゴリーも含まれています。

どのようにして既存システムと連携し、Web3.0を社会に実装していくかが、私たちにとって重要なポイントだと思っているので、安全性の確認はWeb3.0を既存のシステムに統合し、社会に浸透させるために必要なプロセスです。

また、2021年1月には、日本で最も長い歴史を持つウォレットベンダーの1つであるフレセッツ社を買収しました。

セキュリティに関する深い専門知識、そして金融開発に長けたエンジニアの存在は、Web2.0からWeb3.0への架け橋を作ることができる大きな強みとなっています。

世界基準のサービスで「まだ見ぬ価値」を提供する

——完全子会社のHashPaletteにて発行される、エルフトークン(ELF Token)のIEOが「bitFlyer IEO」にて行われました。IEOに至るまで大変なご苦労があったかと思いますが、今回のIEOに至るまでの経緯とエピソードをお聞かせください。

吉田:前提としてWeb3.0サービスの普及には、高品質なサービス提供が欠かせないと考えます。これには、トークンやNFTだけに焦点を当てるのではなく、Web3.0に限らず領域外からみても優れたサービスが求められると思います。

また、より多くのユーザーを獲得することが必要です。世界的に見ても、ブロックチェーンゲームの領域では、トップクラスのプロジェクトでさえユーザー数は10万人程度であり、この数字は通常ゲームサービスが成立するための最低限の基準に過ぎません。

私たちは、安定して数十万人のユーザーを持つサービスを目指し構築をしています。

さらに、サービスはグローバルに展開する必要があります。これらの目標を達成するには、外部に依存せず、自社の専門家が内製で取り組むべきであり、資金調達も自社で行う必要があります。

トークンを使う以上、流動性というのは非常に大切なことであるため、流動性の確保においては大きな暗号資産取引所と組むことが重要であったということです。

また、グローバルな市場において、初めてWeb3.0サービスを利用する人々やトークンに初めて触れる人々にとって、信頼性が問われるため、日本最大の取引所との連携が不可欠であると考えてbitFlyer社との連携に至っています。

——会社のミッションとして「まだ見ぬ価値を暮らしの中へ」を掲げていますが、吉田さんの考える「まだ見ぬ価値」の定義とHashPortはどのような役割果たしていきたいかをお聞かせください。

吉田:「まだ見ぬ価値」というのは、我々がまだ発見できていない価値と考えています。そのうえで、Web3.0が作り出す価値にすべての人がアクセスできる世界にすることがビジョンです。

我々はWeb3.0にフォーカスを当てていますが、今後フィンテックに限らず、より広いテクノロジーに取り組んでいくことも考えています。

世の中には技術をゼロから生み出していくことが得意な人もいれば、1を100にすることが得意な人もいます。

我々は後者であると位置づけしていて、ゼロから生まれた技術のなかで人々の暮らしの中に入ることのできないものを生活に取り入れることが得意な会社だと思っています。

これからも、まだ概念上の技術だったり、世間に広がる前の技術を現在の社会システムにどのように融合させることができるのか、より多くの人が価値ある技術にアクセスできるようにするのかを考えることに注力していきたいです。


Profile

吉田世博 | Seihaku Yoshida
株式会社HashPort 代表取締役CEO
2016年、ボストンコンサルティンググループに入社。同社のデジタル事業開発部門であるBCG Digital Venturesにて、東京オフィス最年少のVenture Architect(投資・事業開発担当者)として日本および中国でのプロジェクトに従事。2018年に株式会社HashPortを創業。


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