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国内暗号資産のハブを目指すSBI VCトレード 代表取締役社長 近藤智彦独占インタビュー

2024/03/31Iolite 編集部
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国内暗号資産のハブを目指すSBI VCトレード 代表取締役社長 近藤智彦独占インタビュー

運用可能なサービスも多角的に展開するSBI

SBIグループに属する暗号資産交換業者「SBI VCトレード」。金融大手の安定性と革新的なテクノロジーを組み合わせ、ユーザーに安全で使いやすい暗号資産取引環境を提供している。

ビットコインやイーサリアム等、全20銘柄の豊富な暗号資産の取引に対応し、低遅延の取引システムと充実したセキュリティ対策で、初心者から上級者まで幅広いニーズに応え、「SBI Web3ウォレット」の提供やステーブルコイン事業への進出などでWeb3ビジネスの推進を図る。

信頼性の高いサービスの提供とSBIブランドを活かし、「顧客中心主義」を目指す同社の代表取締役社長 の近藤智彦氏に暗号資産の将来性、事業の展望について伺った——


売買だけではなく、運用が可能なサービスを多角的に展開

——代表取締役就任に至るまでの経緯とご経歴をお訊かせください。

近藤智彦氏(以下、近藤):2007年SBIホールディングスに新卒入社して、「SBI VCトレード」には、2019年7月に取締役として加わりました。

それ以前SBI VCトレードは当初「SBIバーチャル・カレンシーズ」という社名で運営しており、設立は2016年です。正式にライセンスを取得し、サービスを開始したのは2018年のこと。

私自身は、長らくSBIグループ内の「SBIリクディティ・マーケット」という会社でFX事業に携わっていた中で、SBI VCトレードの経営体制変更の際に私も参画し、業務メンバーの交代や2020年に同業の「TaoTao(タオタオ)」の買収、2021年12月には同社との合併を経て、2022年6月にはシステムの統合を行いました。

その後、2023年にかけて事業の改善を中心的に進めていき、2023年6月から現職となります。

——暗号資産の魅力とは?

近藤:送金を例にあげると、従来のインフラでは国際送金が遅く、コストも高かったのが実情です。しかし、暗号資産を使えばその速度は圧倒的に速く低コストで送付が可能となります。

実際に私たちも、送金の分野で使いやすい技術を広めるための取り組みを進めてり、現にフィリピン等への国際送金に暗号資産XRPが利用されております。

このような使い勝手の良さが、暗号資産の最大の魅力だと思っています。

暗号資産業界を取り巻く税法制度

——暗号資産を取り巻く国内の環境(税法制度)についてはどのようにお考えですか?

近藤:日本は、世界で先駆けて暗号資産関連の法規制を設けた国になりました。一時期は規制が厳しいとの声もありましたが、暗号資産テラルナショックやFTXの崩壊を経て、国際的にも日本の規制の安全性が再評価されることとなり、特に顧客の資産を保護する規制の重要性が認識されました。

日本の規制は世界的にも評価されているとした上で、個人の暗号資産売買の税制に関して現行の雑所得扱いは、国内個人投資家の拡大の足かせになるものと考えます。

また、私は日本暗号資産ビジネス協会(略称:JCBA)で金融部会長を務めており、その活動の中で国内での適正な取引環境を構築すべくレバレッジ取引のレバレッジ倍率規制緩和の提言をまとめました。

今年はビットコイン現物ETFの上場が承認されるということもありました。このような市場環境の中で、国内での暗号資産を取り巻く環境整備についても並行して注力している状況です。

——暗号資産の直面する課題について教えてください。

近藤:制度的な課題としては、暗号資産が制度上、ETFに含めることができないという点です。暗号資産は、特定資産の範囲に含まれておらず、これは国が暗号資産を国民の資産形成に寄与するものとはみなしていないと考えられることを意味しています。

1年やそこらで制度を変更するのは難しいですが、過去には金(ゴールド)のETFが認められた際、取引量が急増した歴史もありますので、国内では投資制度の改革を推進していくことが求められていると感じています。

——SBI VCトレードの強みを教えてください。

近藤:SBI VCトレードは暗号資産市場の後発でしたが、私たちは単なる売買だけではなく、運用が可能なサービスを目指しているという特長があります。

特にステーキングサービスでは、10銘柄を取り扱っており、国内でNo.1の取り扱い銘柄数です。また、レンディングサービスも展開しているほか、日本円を使わずに暗号資産を担保にレバレッジ取引ができる点も大きな強みで、これは国内で2社しか提供していないサービスです。

さらに、私たちはFXのスワップポイントのように、レバレッジ手数料ではなくファンディングレートとしてお客様が受け取りとなるサービスも導入しています。

これはSBIグループ独自のサービスで、たとえばイーサリアムの現物購入と同額のレバレッジショートを組み合わせることで、価格変動リスクを回避しつつ利益を得ることが可能です。

現状の市場環境では、現物のステーキングで年率3%弱、レバレッジ取引で年率5%程度の利益を得られるため、年間8%程度のリターンを比較的安定した形で実現でき、資産運用として魅力的であるといえます。

私たちは資産運用というカテゴリで最も強い暗号資産交換業者と自負しています。取引の利用ももちろん歓迎ですが、SBI VCトレードの提供する、安心して投資できる安全な資産運用環境を活用し、預け入れ資産を増やしていただきたいと思います。

第一種金融商品取引業ライセンスも取得済み

——第一種金融商品取引業のライセンスもお持ちだと思うのですが、今後の展開を教えて下さい。

近藤:暗号資産のデリバティブ取引、特に先物取引には、第一種金融商品取引業者のライセンスが必要です。

現時点で、日本国内には32社の暗号資産取引業者が存在しますが、このライセンスを保有している取引業者はごく一部に限られています。

ライセンスの維持には相応の資金が求められるため、多くの業者がこの分野から撤退しているのが実情です。

前述のレバレッジ倍率の規制緩和の取り組みも行いつつ、将来的には暗号資産におけるオプション取引などの発展的なサービスなど、市場のニーズに対応できるように準備しているところです。

——「SBI Web3ウォレット」の具体的な機能について教えてください

近藤:昨年1月にサービスを開始した「SBI Web3ウォレット」では、日本円でのNFT購入が可能であり、ユーザーが利用しやすい設計を心掛けています。

また、2025大阪・関西万博ではSBIホールディングスがスポンサーを務め、来場者へのNFT配布を計画しておりますが、そのウォレット技術にはSBI Web3ウォレットの技術を活用しております。

——SBIホールディングスにはSBINFT社の存在もあります。SBINFTとの連携について、今後展開する可能性があることがあれば教えてください。

近藤:活用しているチェーンはポリゴンから開始し、イーサリアムへの対応ほか、オアシスとも現在連携対応中となり、今後はアバランチについても追加を見込んでおります。このようなチェーン対応とマーケットプレイスとの接続を連携していきたいと考えております。

——今後、ユーティリティを持ったNFTが誕生したり、実用性のあるNFTが使われるようになった場合、課題となるものはありますか?

近藤:Web3ウォレットの特徴として、鍵を持たなくても操作できるよう設計されていますが、その結果、使用できる場所を当方で厳格に制限しています。

事前に徹底した検証を経て使用可能になっているため、若干の不便さは感じられるかもしれませんが、その分、許可された場所では安全にかつ容易に使用できるメリットがあります。このウォレットは、高度なセキュリティを備えており、ユーザーが安心してご利用いただけるように今後も努めて参ります。

トラベルルールソリューション「TRUST」の導入で国内暗号資産のハブを目指す

——現行のトラベルルールについての考えもお聞かせください。

近藤:日本ではトラベルルールが施行され、暗号資産の送受金時に顧客情報を確認し、問題がなければ取引が可能というルールが整備されました。

しかし、国内でトラベルルール対応ソリューションが二極化し、異なるソリューション間でのやり取りが難しくなってしまいました。これにより、暗号資産の本来の自由な送金が制限される状況になってしまいました。

トラベルルールはマネーロンダリング及びテロ資金供与の対策(AML/CFT)を目的としていますが、結果的に不便さも生んでしまっている状況です。

今年は、国内大手暗号資産取引所で使用されている、トラベルルールソリューションの「TRUST」の導入を予定しており、これにより国内での送受金がスムーズになる見込みです。

私たちは、国内暗号資産の大きなハブのような役割を果たすことを目指しています。4月には、二極化による分断を解消するサービスの提供開始を発表できると考えています。

——米サークルとの提携も発表されました。ステーブルコインの取り扱いについても詳しくお聞かせください。

近藤:昨年12月に米サークル社との提携を実現しました。SBI VCトレードとしては、電子決済手段等取引業のライセンス取得を目指し、これを暗号資産交換業のライセンスと併せ持つことで、USDCの取引や保管、さらには相互送受金を可能にするサービスを開始する計画です。

サービスの提供開始は早ければ今年の夏頃を見込んでおります。USDCの最大の利点は、グローバルでの価値の移転の容易さにあります。

国内での送金は銀行振込や〇〇Payなどを通じて手軽に行えますが、海外送金には依然として銀行が必要です。

こうした背景からステーブルコインの需要が増していると考えており、USDCとの提携により、送受金サービスの構築を進めています。

この点、国産ステーブルコインの利用範囲は現時点では限定的で、今後海外での使用範囲がどこまで広がるのかが課題となると考えております。

一方、USDCは現時点でグローバルで幅広く利用可能な点が魅力なので、国内でUSDCを使える環境を整えることが、私たちの戦略的な目標です。

金融大手グループの強みを活かして国内暗号資産領域において、中心的な存在に

——今後の展望を教えてください。

近藤:SBI VCトレードは、特に昨年からサービス向上・改善のスピードを早め、国内で初めて提供されるサービスも出てきました。

FX市場での事業からの学びも活用して、長期的な投資を考える方や初心者にもご利用いただけるサービスを提供していきたいと考えております。

国内暗号資産領域において、中心的な存在となれるようサービスやビジネスを急速に拡大していきます。


Profile

近藤 智彦 | Tomohiko Kondo
SBI VCトレード株式会社 代表取締役社長
2007年SBIホールディングスに新卒入社、 SBIグループの情報システムを担当。その後、同グループの電子決済事業を経て、 外国為替関連事業を営むSBIリクイディティ・ マーケットにおいてシステム担当役員を務める。2019年SBI VCトレード取締役就任以降、暗号資産・ Web3関連事業を中心に従事し現職。 SBI大学院大学経営管理研究科を2016年修了。


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