米国で初となるビットコイン現物ETFが承認されたことで、ビットコイン価格は記録的な上昇をみせている。
年初は42,000ドルでスタートしたが、現物ETF承認からわずか2ヵ月ほどとなる3月14日には73,500ドルまで上昇した。
円安との兼ね合いもあり、日本円でも1,000万円の節目も超えている。2021年のバブル時に記録したドル建て最高値である69,000ドルを突破したことは、極めて重要な1ページとして暗号資産の歴史に刻まれることとなった。
ビットコインの現況
ビットコイン現物ETFの状況は好調で、3月12日には1日あたりの資金流入額が10億ドルを超えた。これはETFの歴史でもみても記録的なスピードであり、今後も加速度的に増加していく可能性がある。
ビットコイン現物ETFを牽引するのは大手資産運用会社のBlackRockだ。同社が提供するビットコイン現物ETF「iShares Bitcoin Trust(IBIT)」への資金流入額は日を追うごとに増え、保有ビットコインもついに20万BTCを超えた。
これは単一企業として最もビットコインを保有する米MicroStrategyを上回る規模だ。現時点で最もビットコインを保有するのはGrayscaleが提供する「Grayscale Bitcoin Trust(GBTC)」だが、同ETFはほかと比べて管理手数料が高いこともあり売り込まれている。
そのため、今後BlackRockがGrayscaleを上回り最もビットコインを保有するETFとなるのも時間の問題といえる。
機関投資家の動向として、今後カギを握るのは米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ動向だろう。
当初、2024年3月にも利下げに転じるとの見方が有力視されていたが、直近で公開された2月の消費者物価指数(CPI)が市場予測を上回る数値となるなど、依然としてインフレの根強さが顕著だ。
こうした状況を踏まえ、利下げ開始時期は見通しがみえていない。
米金融大手JPMorgan ChaseのCEOであるジェイミー・ダイモン氏は「少なくとも今年6月までは待つべきだ」と指摘する。
状況によっては利下げがさらに後ろ倒しになる可能性もあり、アナリストらのなかには11月に行われる米大統領選後になるとみる声もある。
利下げ時期が遅れることで投資家によるポジションを手仕舞いする動きも活発になると考えられ、そうなると現在株高を支えているAI関連株などが値崩れを起こす可能性もある。
ビットコインはこうしたハイテク株に連動することがあるため、特にNVIDIAやGoogle等の株価を注意深くみておいた方がいいかもしれない。
半減期
また、ビットコインに関する2024年最大のイベントの1つとしては、半減期があげられる。約4年に1度訪れるビットコインの半減期は、マイニングに伴う新規発行量が半減し、市場への供給量が減少することから、ビットコインの希少性が高まり価格面に影響するイベントとして注目されている。
過去を振り返ると、ビットコインは半減期が訪れるごとに前半減期比で価格を大きく伸ばしてきた。半減期ごとにみる価格の上昇率自体は時価総額の拡大に伴い年々落ち着いてきている。
それでも、これまでにドルベースで数百〜数千規模の上昇率を記録してきたことから、今後も価格面で重要視されるイベントになることは間違いない。
今回4度目の半減期を迎えることとなるが、現時点で前回時を上回ることは濃厚ともいえる状況だ。
ビットコインの値動きとして、半減期の翌年に価格を大きく伸ばす傾向が顕著にあらわれている。
ビットコインが2021年に当時過去最高値となる69,000ドルまで高騰したことを覚えている人は少なくないはずだ。3回目となる前回の半減期は2020年に訪れており、まさにこの傾向に当てはまる。
一方、半減期前後では価格が少々乱高下するケースもみられる。既述の通り、半減期はマイニングに伴うビットコインの新規発行量が半分に減るものだ。
これはマイニングを行うマイナーの報酬が半分になることを意味する。そのため、マシン代や電気代など、必要経費を含めた際、短期的にマイナーの採算があわなくなってしまう恐れが生じる。
実際、半減期が訪れるごとにビットコインのハッシュレートも上昇し、マイニングの難易度は高まっている。
マイナーによっては現状のマシンでは効率よくマイニングが行えないという状況に陥り、あらたなマシンを用意することが迫られる場合もあるだろう。
こうした状況を鑑みて、ビットコイン価格がある程度高騰した時点で事前に売却する、あるいは半減期を迎えた後に採算があわなくなり資金補填の兼ね合いで売るといった動きが強まる傾向がある。
そのため、現時点で半減期が訪れるとされる4月中旬頃にかけては特に価格の乱高下に注意した方が良さそうだ。
ビットコイン現物ETF
ビットコインの直近の値動きとして最も影響を与える要因としては、やはりビットコイン現物ETFの存在があげられる。
今後も引き続き投資家からの需要が高まれば、さらなる価格上昇も可能だろう。その反面、そのほかの金融商品も取引する機関投資家の動向次第では状況が変わる可能性ももちろんある。
特にビットコインは急激に価格が高騰したため、利確の動きが強まるタイミングがいずれ訪れるものと考えられる。
先日、イーサリアムにおいて大型アップグレード「デンクン」が実装された後に事実売りがみられたが、ビットコインにおいても半減期が訪れた後に同様の動きが起こる可能性はある。
あるいは、半減期前後の傾向も踏まえ早い段階で調整局面を迎えることも考えられるだろう。
さらに、先述した利下げに関する動きも今後大きく影響してくるものとみられ、材料が出尽くした後のビットコインの動向はしばらく注意深くみていく必要があるといえる。
Column
Noriaki Yagi Editor-in-Chief
想定外のことは起こるものとして長期目線で向き合うが吉
日本時間の1月11日、ビットコイン現物ETFは承認。当日承認前後には、SEC(米国証券取引委員会)の公式X(旧Twitter)アカウントの乗っ取りから誤報に市場は翻弄されたものの、終わってみればほとんど押し目を作らずに3月初旬まで上昇した。
現物ETFの影響を受けて、予想を遥かに凌駕する資金流入があったビットコインだが、史上最高値を更新してから押し目を作り始めた。
まもなく半減期を迎えるビットコインがさらなる押し目を作るとすれば、このタイミングが最も自然だとは考えているものの、現物ETF承認後、思いもよらない速度でビットコインに資金が流入して価格が上昇したことを踏まえれば、半減期を物ともせずに上昇を続ける可能性も否定しきれない。
Column
Shogo Kurobe Duputy editor
マイナー事情や利下げ動向も重なりこの春で過熱感は解消か
2024年はビットコインにといって4回目の半減期が訪れることとなるが、これを境として価格面ではしばらく調整局面を迎えるのではないかと個人的には予想している。
それは過去の歴史をみてもあきらかで、ビットコインは半減期以降、マイナーの売り圧などが重なり軟調な動きとなる傾向が強まるからだ。
そのため、個人的には米大統領選を強く意識し始める秋頃まで3月14日に記録した73,500ドルの最高値を大きく超えることはなく、一旦この春で過熱感は解消されるものと考えている。
こうした考えに拍車をかけているのは、FRBによる利下げ開始時期が遅れる見込みであることだ。
株式市場などでもFRBによる利下げを巡り楽観論が強く、株価を押し上げているものとみているが、これがネガティブな方向へと向かった際には、ハイテク株などと一緒にビットコインにも売り圧がかかってくる可能性が高い。
いずれにしても半減期後に目立ったイベントもないため、しばらく様子見の状況が続くだろう。
まとめ
今後価格に影響を与える3つの要因
1.ビットコイン現物ETFは承認以降、日に日に資金流入額が大きくなってきている。今後も一定の需要を集めると考えられるが、売りが重なった場合には注意が必要。
2.ビットコインの半減期は中長期的にみると価格に大きな影響を与えるとして注目されているが、マイナーによる資金補填のための売りや機関投資家らの動きに注意。
3.FRBによる利下げ開始時期を巡りネガティブな動きがみられた際には、ハイテク株などと同様に価格が大きく乱高下する可能性があるため動向を注視する必要あり。
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