金融・経済

中小店舗が抱えるキャッシュレス決済の「手数料問題」という課題

2024/06/09Iolite 編集部
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中小店舗が抱えるキャッシュレス決済の「手数料問題」という課題

キャッシュレス決済導入の一方で経営を圧迫する手数料

政府主導により今やキャッシュレス決済は現代の飲食業界において不可欠な存在となっているが、その一方で多くの飲食店経営者が直面する「手数料の負担」という大きな課題がある。この課題はキャッシュレス決済が導入され始めた当初より指摘されていたものだ。

サービスによって異なるが、一般的に決済サービス提供者は取引金額の約3%を手数料として請求する。つまり、店の売上が一旦カード会社に行き、手数料を引かれて入金されるため、月間の売上が高いほど手数料の絶対額も増加していく。

たとえば、月の売上が500万円の店舗だと、手数料は15万円、年間でいうと180万円という金額になる。利益率が低い飲食店だと、この手数料が確実に重荷となってくるだろう。

昨今の円安による物価上昇で仕入れ値が上がるなか、クレジット客の比率が高まると、その分利益を圧迫すると指摘するアナリストもいるが、実際問題としてその通りであろう。

現実にPayPayの例でいうと、導入当初は手数料を取っていなかったPayPayだが、現在では2%近くの手数料を取っている。この手数料の呪縛から解放されたい飲食店の一部では一旦は導入したキャッシュレス決済をやめてしまった店舗もあるという。

どうしてこのようなことが起こるのだろうか。その理由の1つに以前から日本の手数料は欧米や豪州と比べて高いという指摘がある。また、業種業態や規模ごとに決済手数料が異なるという不透明な面もあるという点も指摘されている。こうした指摘は確かに手数料問題のポイントだ。

しかし、こうしたポイントの前にそもそもキャッシュレス決済の手数料はなぜ発生するのかを理解しないと問題の解決に至らないのではないだろうか。

ITジャーナリストの三上洋氏の解説によると、キャッシュレス決済に手数料がかかるのは複数事業者が入っているからだという。たとえば、決済端末を入れて回線接続する決済代行業者。続いてチャージ手数料、銀行やクレジットカードなど手数料といったようにこれだけでも複数の事業者が入っているため、その分経費がかかるのはやむを得ないと同氏は指摘している。

政府方針としては今後もキャッシュレス決済を誘導していく方針だが、そのしわ寄せで手数料問題で潰れる店が出てきてもおかしくない状況になっているということは実に由々しき事態である。

POINT①

2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%

2025年までに4割程度にするという政府目標の達成に向けてキャッシュレス決済の推進に取り組んでいる経済産業省ならびに日本クレジット協会によると、2023年のキャッシュレス決済比率は堅調に上昇し、39.3%(126.7兆円)となっている。その内訳はクレジットカードが83.5%(105.7兆円)、デビットカードが2.9%(3.7兆円)、電子マネーが5.1%(6.4兆円)、コード決済が8.6%(10.9兆円)。

POINT②

タイプ別キャッシュレス決済手数料の相場

キャッシュレス決済にかかる主な手数料はクレジットカードが2.7~3.25%、汎用型QRコードが1.6~2.5%、電子マネーが2~3%となっており、そのほか、独自Pay(ハウス電子マネー)の場合は汎用型電子マネーより手数料が安いとされている。

日本クレジット協会が2024年3月29日に発表した統計によると、決済額が消費全体に占めるキャッシュレス決済比率は2023年に39.3%と過去最高を更新していることを踏まえると、今後もキャッシュレス決済の波は上昇傾向にあるのは間違いない。

しかし、そうした事実は利益率1~2%で回っている店にとって価格を変えないと、手数料が増えた分だけ赤字になる可能性を秘めているといっていい。

政府主導で始めたキャッシュレス決済導入によって経営が圧迫される経営者が増えるのであれば、やはり政府主導によって手数料の是正などを行う必要があるのではないだろうか。


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