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楽天ウォレット・シニアアナリストの松田康生が語る2025年までの「ビットコインのシナリオ」

2024/05/29Iolite 編集部
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楽天ウォレット・シニアアナリストの松田康生が語る2025年までの「ビットコインのシナリオ」

今後の相場動向と重要指標

ビットコインの価格は需給のバランスと法定通貨不安で左右される——

これまでにビットコインの価格予想を幾度となく的中させてきた“ビットコイン相場のプロ”が本誌独占インタビューで2025年までの暗号資産市場の動向と価格予想を語った。

——現在、暗号資産市場はビットコインを筆頭に盛り上がりをみせていますが、今後どのような推移をたどっていくとお考えでしょうか?

松田康生(以下、松田):今年に入りビットコイン現物ETFのローンチによってビットコインの価格も大きく上昇してきましたが、今後さらに機関投資家らの参入、そして地域的にも取り扱いが広がっていくのではないかとみています。

今のところ、今年のマーケットというのはビットコイン現物ETFの動きに左右されています。この3ヵ月ほどでETFを通じて購入されたビットコインは約220,000BTC(取材時点)。

それに対して発行されたビットコインは80,000BTCです。この差140,000BTC、およそ1.4兆円分、需要が供給を上回ったことからビットコインは大きく値上がりをしているわけです。

そして注目すべきは、このビットコイン現物ETFを誰が購入していたのかということです。ETFの登場で機関投資家の参入が増えると予想されていたのですが、ふたを開けてみると当初3ヵ月の買いは主に個人投資家だったわけですね。

この個人投資家というのも、いわゆる“ベビーブーマー世代”と呼ばれる層が中心とされています。法定通貨の価値が不安定な時代に突入したことで、あたらしい技術に寛容な若い層だけでなく、これまで懐疑的であった層にもビットコインがデジタルゴールドとして認識され始めているのです。

機関投資家もこれまでの伝統的な資産で形成されていたポートフォリオの一部をアロケートし始めていますが、彼らの動きはこれからが本番だと考えています。機関投資家というのは、資産を購入するのと同じくらい、いかにスムーズに売り抜けるかという出口戦略もよく考えた上で投資を判断します。

ですので、ビットコイン現物ETFのようなあたらしい商品が出た際には、すぐに飛びつかずトラックレコードをよく確認してから参入する傾向があります。

その期間を経て、ビットコイン現物ETFの登場からおよそ半年となる今年後半にかけて、機関投資家の参入が増えてくるのではないかといわれています。

米国でのビットコイン現物ETFのヒットをみて、各国もただ黙っているわけではありません。4月には香港でも暗号資産の現物ETFが承認されましたが、今後この動きは広がっていきます。

このように若者からベビーブーマーへと、世代間でも、個人から法人へと投資主体の面でも、米国からアジア・欧州など地域間でもビットコイン投資家のすそ野が広がりをみせていくことでしょう。

——このタイミングでビットコイン現物ETFが需要を集める要因としてはどのようなことが考えられるでしょうか?

松田:ビットコインの半減期に伴う需給のバランスもあるでしょうが、足元の法定通貨不信に伴うドル離れが要因になっていると考えています。

振り返ってみると、日経平均やビットコイン、そして金(ゴールド)が史上最高値を記録したタイミングはほぼ同じだったんですね。不動産価格の上昇をみてもわかるように、法定通貨の価値が相対的に下がることを懸念して多くの人がリスクヘッジに動いた結果だと思います。

2020年から2021年にかけて世界的な金融緩和をきっかけとしてビットコインが最高値を記録したのもまだ記憶にあたらしいですね。金融緩和に伴い法定通貨の価値が不安定になったあの頃と実質的に状況は似ているといえます。

——相場動向をみていく上で今後ポジティブに働く可能性のある要因があれば教えてください。

松田:まずポジティブに働く可能性があるのは、米国の景気後退と利下げですね。これらはビットコインの購入動機の1つでもある法定通貨の減価との関係にもつながります。

利下げをすることで米ドルを持っているインセンティブが下がりますから、大きな買い材料になるのではないかとみています。ただ一点、利下げを巡る思惑では多くの人が勘違いをしていますので、そこは注意が必要です。

——勘違いというのはどのようなことでしょうか?

松田:よく雇用統計や景気の動向を利下げの判断材料として議論する方々がいますが、FRB(米連邦準備制度理事会)はそれらを今年利下げする理由にはしていません。

たとえばGDPの話をする際、多くの人は名目GDPではなく、物価変動の影響を取り除いた実質GDPの話をしますよね。

それは政策金利に置き換えても本来同じ話になるはずなのですが、なぜか多くの人は名目金利にだけ注目するのです。FRBが現在みているのは実質金利です。

インフレ率が下がると実質金利が上がってしまい景気や雇用にマイナスになるので、FRBはそういった状況にならないようにタイミングをみつつ利下げを行うことを考えているのです。

——利下げの開始時期を巡っては、6月頃であったり、米国の大統領選挙後だと予想する声もあるなど意見がさまざまですが、松田さんの見解ではいつ頃になりそうでしょうか?

松田:政治的背景を踏まえると大統領選後という可能性は低そうです。

トランプ大統領はパウエル議長の解任を公言していますから、議長の立場を考えれば大統領選前には利下げを開始するインセンティブが働きます。

政治的な側面だけに着目するならば、遅くとも9月に行われている可能性が高いでしょう。

——逆にネガティブに働く可能性のある要因はありますか?

松田:現時点ですと中東情勢ですね。ビットコインとゴールドは似ているとよくいわれますが、その性質は若干異なります。

ゴールドは有事の際のヘッジとしてみられますが、ビットコインはあくまでもリスク資産です。近年、ビットコインはポートフォリオに組み込まれるようになってきましたが、これをきっかけとしてリスク資産としての性格が強くなりました。

そのため、特に戦争・紛争に弱いという特徴が強まりつつあります。

投資家は、戦争などの武力衝突が起きた時、自らの資産を守ろうとします。その時に何をするかというと、リスク量を減らそうとするわけです。

そうした時に手っ取り早いのはボラティリティの高い資産を売ることですので、ビットコインは真っ先にその対象となるわけです。

ですので、現在の最悪なシナリオは現在局地的に起きている紛争が世界的に広がることで、その可能性が高まると「少しリスクを減らしておこう」という心理が働き、ビットコインが売られるという動きが出がちです。

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