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バーチャルワールドと現実世界が溶け合う未来が近付きつつある

2024/06/02Iolite 編集部
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バーチャルワールドと現実世界が溶け合う未来が近付きつつある

日本でも拡大しつつあるAR/VR需要

ARとVRのそれぞれの違いや現在の状況、そしてどのような領域で活用されていくのか解説していく。

技術の進化に伴い、人類は現実世界の先に手を伸ばし始めている。

ARやVRと呼ばれる領域は、人間を視覚的に別世界へと誘うツールとして、年々その存在感が増してきている。それぞれ活用領域も多岐にわたり、医療や製造業、また物流や小売など、あげれば枚挙にいとまがない。そしてこれらを融合させた存在としてMRなども登場している。

こうした分野は現在、どのような立ち位置にあり、今後どのような発展をみせて人々の生活に溶け込んでいくのだろうか?

ARとVRの違い

ARとVRという言葉自体は聞いたことがあるものの、その違いや利活用などについてはまだ不明な点を抱えている人もいるはずだ。これらの将来性について触れる前に、まずはそれぞれの違いについて簡単に説明していく。

まず、ARは「Augmented Reality」の略称で、「拡張現実」という意味を持つ。一方、VRは「Virtual Reality」、「仮想現実」を指す。どちらも似たような言葉を用いており、現時点では違いもわかりにくい部分もあるが、大きな違いは「現実世界」を主とするか「仮想空間」を主とするかにある。

ARは拡張現実という言葉にもあるように、デバイスを用いて現実世界にデジタル上の情報を映し出すものだ。たとえば、人気ゲームである「Pokémon GO」ではスマートフォンを通じてまるで現実世界にポケモンがいるかのような体験をすることができる。

このように、現実世界にバーチャル上のアイテムなどを映し出し、視覚的な拡張性をもたらす技術がARだ。

VRは仮想現実とあるが、仮想空間を舞台として、さまざまな世界観を体験できる技術だ。近年、仮想空間のクオリティが上がってきていることもあり、ゲームを中心にVR関連製品が登場している。仮想空間というとメタバースを連想する人も少なくないだろうが、VRはそのメタバースの世界でより没入感のある体験をするためのツールであるという認識で問題ないだろう。

このように、ARとVRは似たような存在でありながら、実は明確な違いがある。ここからは具体的にそれぞれの注目トピックなどを紹介していく。

ARの普及に向け注目のスマートグラス

ARを普及させる上で、その一助になる存在として注目を集めるのがスマートグラスだ。スマートグラスはARグラスと混同されることもあるが、厳密にいえば異なる存在である。

ARグラスはスマートグラスと同様、メガネ型のデバイスではあるが、現実世界を認識してリアルタイムでデジタル上のアイテムなどを映し出すことができる。

一方、スマートグラス自体は基本的に現実世界を認識する機能を併せ持っておらず、あくまでもメガネやサングラスをより多機能化した“次世代のスマートフォン”のような存在である。

そのため、リアルタイムで情報を表示する機能は基本的には搭載しておらず、ARという技術単体でみればARグラスの方がより現実世界を拡張させるツールであるといえる。

では、なぜスマートグラスがARの普及につながるかというと、それは多機能化が進んでいることや、コスト面の違いがある。

スマートグラス及びARグラスともにそれぞれ商品によって価格差が存在することはもちろんだが、ARグラスはARを投影するためのカメラが付くため、スマートグラスと比べても購入コストが高くなる傾向にある。そのため、用途にもよるだろうが、いきなりARグラスを購入するハードルは非常に高い。

その反面、スマートグラスはARグラスと比べてコスト的にも触れやすく、近年はAR機能が搭載されたものも増えてきている。また先述したように、スマートグラスは次世代のスマートフォンとも呼べる機能を併せ持っておりAR体験だけを目的とすることなく使用することができる。

具体的には、映画などの映像作品をみることや、ゲームをプレイすることも可能だ。また、メガネのように装着していることから、カメラ搭載型のスマートグラスであれば目線にあわせた写真や動画を撮影することもできる。

このほか、より多機能なデバイスであれば電話をかけることなどもでき、現在多くの人々が利用しているスマートフォンと遜色のない機能を兼ね揃えつつあるといえる。

何事においても、まずは参入障壁を引き下げ、体験しやすい環境を整えることが重要だ。その点、さまざまな機能を持ち、AR体験以外の使い方もできるスマートグラスの普及というのは、将来的なARの普及及び成長に大きなきっかけをもたらす可能性がある。

また、ARをビジネスに活用しようという動きも近年増えてきている。その主な目的は業務の効率化であり、スマートグラスなどを使用してシミュレーションをすることや、データを共有しながら作業を進めることなどがあげられる。

たとえば、建設業界においては設計のシミュレーションを行い、早期のレビューを行うことで業務効率をあげることや、顧客に対して建造物のイメージなどを説明する際に使用するケースが出てきている。

また、物流業界においてもピッキング作業を効率化する際にスマートグラスを使用する事例が出てきており、家具業界でも自分の部屋にあわせて家具を選べるサービスが提供されるなど、さまざまな場面でARが使われつつある。

スマートグラス3選

1.XREAL Air 2 Pro

スマートグラスにおいてトップシェアを誇る中国のXREALが手がけるAir 2 Pro。2023年11月に発売され、没入感や画面表示などでも高い評価。

2.Rokid Max

XREAL同様、中国発のスマートグラス。視力補正が可能であるほか、専用アプリを通じてRokidやサードパーティー製のARコンテンツを体験できる。

3.MOVERIO BT-40

エプソンが手がけるスマートグラスで、120インチ相当の大画面が目の前に現れる。Android OSを搭載した「MOVERIO BT-40S」も販売されている。

進みつつあるVRの大衆化

技術の進歩にあわせ、VRの活用も増えてきている。また、従来より課題となっていた映像や没入感のクオリティアップ、デバイス及びUXの性能向上なども進みつつあり、今後ますます大衆化が進む兆しがみえ始めてきた。

VRは2016年に「VR 元年」とも呼ばれるほどの話題を生んだが、その歴史は意外にも古い。始まりは1968年に開発された「The Sword of Damocles」と呼ばれるヘッドセットで、その後1990年代に世界的なブームが訪れた。

ブーム時には、セガ・エンタープライゼス(現セガホールディングス)や松下電工(現パナソニック)などといった日本企業もVR事業に乗り出しており、次世代の映像体験として認知向上・普及の一助を担った。

現在は米Metaがメタバース開発とあわせてVRヘッドセットの開発に注力しており、昨年10月には「Meta Quest 3」も発売開始。そして今年4月にはMeta Questシリーズにも搭載されているOSを「Meta Horizon OS」としてサードパーティに向けて提供することを発表した。これにより、VRヘッドセット開発は今後さらに加速していく可能性がある。

クオリティも上がりつつあり、関連製品なども年々増えてきているVR領域だが、VRヘッドセットだけでいえば使用機会が現時点で限定的である点は考えものだろう。現状、VRヘッドセットはパソコンやゲーム機器などに接続して使う機会が多いものといえる。

また、VRヘッドセットは非常に高価であり、コスト面でなかなか手が届かない現状も普及に向けた弊害となっている。それでも、スマートフォンとの接続で簡単にVR体験をすることができるVRゴーグルの登場により、普及に向けた参入障壁が下がりつつあるといえる。近年急速に種類が増加しつつあり、価格も数千円で済むものが多いことから、VRの大衆化に向けた大きな武器になる可能性を秘めている。

しかし、当然映像のクオリティや没入感はVRヘッドセットに劣るため、使用機会としては簡易的なVR体験に限られるだろう。それでも、手頃な価格でVR体験ができるため、初めて触れる人にとってはより身近な存在として手に取りやすいといえる。

VRといえば、ゴーグルをかけゲームをするイメージが強いかもしれないが、ビジネスにおいても活用が期待されている。特にエンタメ業界や不動産業界、製造業界などでの使用が有力視されており、実際に活用されるケースも増えてきている。今後、教育や各企業での研修等での使用も増加していく可能性があるだろう。

VRゴーグル・VRヘッドセット3選

1.Meta Quest 3

米Metaが手がける最新VRゴーグル。解像度やグラフィック性能などがグレードアップし、MR機能も使えるようになった。

2.Apple Vision Pro

Appleが開発したVRヘッドセットで、3Dカメラが搭載されたことでより立体感のある映像体験をすることが可能に。

3.PlayStation VR2

ソニーが手がける没入感や高画質な映像体験が可能なVRヘッドセット。初代と比較してもより高い解像度の映像を表示できる。

日本の強みを活かすことで成長産業に

ここまでARとVRの現状や比較、活用されている業界等について触れてきた。まだ日本では馴染みが薄い存在かもしれないが、需要は急激に伸び始めている。

IDC Japanの調査によれば、日本における2023年のAR/VRヘッドセットの出荷台数は前年比67%増の56万6,000台にのぼった。詳細な内訳としては、ARヘッドセットが前年比32.3%増の48,000台、VRヘッドセットが前年比71.6%増の51万7,000台となっている。

これは主にゲームタイトルの増加に伴う個人による利用が牽引したものと考えられるが、今後は業務効率化の観点で企業による購入・採用が増加する可能性も秘めている。

▶︎国内のAR/VRヘッドセットの出荷台数:IDC Japanより引用

また、日本にはIPやゲームなどといった国際的な武器となるコンテンツが多数存在する。そのため、日本においては当面、こうしたIPコンテンツがAR/VR分野を牽引していく可能性が考えられる。

さらに、AR/VRの発展の先にはMRの普及もある。MRとは「Mixed Reality」、日本語で「複合現実」という意味で、ARとVRの技術を融合させたような技術を指す。これは現実世界の空間に仮想空間を合成させ、投影されたホログラムを通じて物体の認証や立体的にデザインの確認などを行うことができる。

こうした技術があわさっていくことで、将来的にさまざまな領域の業務効率化が図られる可能性があるほか、人々の暮らしにも大きな変化が生まれていく。当然、新興分野ということもあり課題は山積みではあるが、発展の先にはまるで漫画のなかで描かれていたバーチャルワールドと現実世界が溶け合うような未来が訪れるかもしれない。


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