ARやVR、そしてAIやブロックチェーンの進化・普及でこれまでにないゲーム体験が実現。
技術の進展に伴うあらたな体験
現在のゲーム業界は、先述したARやVRの普及、そしてブロックチェーンゲームの台頭によりあらたなフェーズに差し掛かろうとしている。
たとえば、VRであれば映像のクオリティや没入感などといった性能向上、そしてコンテンツの充実により、ゲーム体験の幅が広がった。また、視覚だけでなく、触覚や嗅覚をも再現するデバイスが登場したことで、プレイヤーは仮想空間内でよりリアルな体験を楽しむことが可能となっている。
ARではスマートフォンを通じてプレイするゲームが増加しているほか、ARグラスやスマートグラスなどを通じて現実世界とデジタル情報が融合したようなあらたなゲームプレイスタイルが生まれつつある。街中を歩きながらクエストを進めるゲームや、室内で仮想空間のキャラクターと交流するゲームなど、その種類も豊富だ。
さらに、現在「クラウドゲーミング」も普及の兆しをみせている。クラウドゲーミングは、インターネットを通じて高品質なゲームをストリーミングする技術で、プレイヤーは高性能なハードウェアを必要とせず、さまざまなデバイスでゲームを楽しむことができる。
近年、5Gの普及とともにクラウドゲーミングに関連するサービスが進化しており、高速かつ高画質なゲーム体験ができるようになっている。開発者目線でも、プラットフォームに依存することなくゲームを提供できるようになるほか、プレイヤーも場所を問わずゲームがプレイできるようになったため、双方にとって幅が広がるものであるといえるだろう。
また、サブスクリプション型のクラウドゲーミングサービスも増えつつあり、定額で多くのゲームを楽しむことができるため、プレイヤーにとっても経済的なメリットがある。
ブロックチェーンゲームの存在
ブロックチェーンの技術的な進展により、ゲーム業界にもあらたな可能性を開こうとしている。
ブロックチェーンゲームはNFTを活用したアイテムやキャラクターを用いてゲームをプレイし、ゲーム内で取得したアイテムを売買したり、ほかのタイトルでそれらを使用したりすることも可能だ。これにより、ゲーム内アイテムがリアルな経済と密接に結びつくようになり、プレイヤーの活動やゲームそのものの価値がこれまでにないあらたな境地に向かっている。
これらのゲームは別名「P2E(Play to Earn)」とも呼ばれ、「遊びながら稼ぐ」というあらたな概念を生み出した。娯楽の延長としてブロックチェーンゲームをするプレイヤーもいれば、副業、そして本業としてプレイするプレイヤーもいる。
特にP2Eがブームとなった時には、東南アジアを中心に大きな盛り上がりをみせた。これは従来の仕事よりも、ブロックチェーンゲームに多くの時間を費やした方が稼げる環境下にあったからだ。
近年はさまざまなブロックチェーンゲームが登場してきており、日本においても注目タイトルが登場し始めている。特に日本はIPやゲームコンテンツなどが非常に豊富であるという強みを活かし、今後ますますブロックチェーンゲーム領域で存在感を示していく可能性がある。
現時点では暗号資産税制などで不利な点があるものの、ゲームをしながら資産を生み出すことができるという概念を楽しむことができるタイトルを作り出すポテンシャルが日本企業にはあるはずだ。
また、今後は「メタバースとブロックチェーンゲームの融合」も加速する可能性がある。メタバース上の土地や建物などをNFT化し、それらを取引するといった動きが近年増加傾向にある。
デジタル上で作られた世界であるメタバースとブロックチェーンの相性は非常に良い。先述の通り、今後ますますメタバースでのイベントや交流の場が増えることで、ブロックチェーンゲームと同様、これまでにない経済活動という面で発展をみせる可能性がある。
AIを活用したあらたなゲーム体験
加速度的に注目度が高まっているAIを活用したあらたなゲーム体験も今後増加していきそうだ。たとえば、AI技術を活用してゲーム内のキャラクターを進化させることにより、個々のプレイスタイルにあわせた唯一無二のキャラクターを生み出すことも可能だ。パーソナライズされたゲームが増えることで、プレイヤーとしてもゲーム体験の幅が広がる。
さらに、SNSやソーシャルゲームの進化により、プレイヤー同士の交流や協力が一層強化されている。オンラインマルチプレイヤーゲームでは、世界中のプレイヤーとリアルタイムで協力しあうことで、単独ではクリアすることが難しいミッションを達成することなども従来と比べて容易になった側面もあるだろう。
今後も進化の可能性を秘めたゲーム業界
ここまで触れてきたように、現在のゲーム業界は技術革新とあらたな取り組みにより、プレイヤーにこれまでにないあたらしい体験を提供することが可能となった。
VRやAR、クラウドゲーミング、ブロックチェーンの活用により、ゲームの楽しみ方は多様化し、没入感も増してきている。これからも技術の進化とともに、ゲーム業界はさらなる成長と革新を遂げていくこと可能性を秘めている。
また、プレイヤーとしてもあらたなゲームが次々に登場してきていることから、より自由度の高いゲームを好む傾向が強まることも考えられる。
ゲーム業界はこれまでも技術の発展や消費者のニーズにあわせて進化してきた。今後もその流れ自体は変わらないだろう。現時点では、ARやVRの進化に加え、メタバースのさらなる機能向上、ブロックチェーンの導入、そしてAIの活用がカギを握ることになると考えられる。
ARとVRでは、よりリアルな没入体験を提供できるかどうかが重要になる。また、没入感の進化の先には、ゲームに限らず教育や医療などの分野での応用も進むことだろう。先述したクラウドゲームも5Gなどによるインターネットの高速化によりさらなる発展をみせるかもしれない。
特にブロックチェーンゲームの発展ではプレイヤー環境の整備が重要となる。具体的には税制改正もそうだが、ウォレットの普及やゲームそのもののクオリティアップが強く求められる。
これまでのブロックチェーンゲームは、稼げるけれども面白くないといったものが多かった。そのため、ゲーム内資産や暗号資産の価格が下落すればプレイヤーがいなくなるといったことも少なくない。
ゲームの面白さ、緻密に設計されたトークノミクス、そしてプレイヤーの参入障壁を引き下げるアプローチを施すことで、ブロックチェーンゲームは飛躍的な成長をみせ、急速に普及する可能性があるだろう。
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